「アドベンチャーバイクってどんなバイク?」
長距離移動で疲れないバイク、オフロード走行を楽しめるバイク、荷物をたくさん積めるバイク…いろいろある。
どれも正解だが、どれも表面的な答えでしかない。
最も大事なことは「冒険心を駆り立ててくれるバイク」だ!
そんな大事なことを教えてくれた最高のバイクが、今回の主役・モンキー(Z50J)。
オフローダーの聖地といわれる徳島県・剣山スーパー林道にモンキーを持ち込んでみた。
モンキーのスペックは?
【出典】本田技研工業 ※数値はAB27型
注目すべきは全長。たった1,365mmしかない。
ほかのバイクと比較すると…
スーパーカブ50
全長:1,860mm
CB400SF
全長:2,080mm
CRL1100L アフリカツイン
全長:2,305mm
これら3車と比べると、小ささがわかるだろう。
続いてホイールサイズ。
17インチホイールが主流のなか8インチという冗談みたいな数値で、運搬用一輪車の13インチよりもはるかに小さい。
つまり走りが不安定。その小さいホイールで路面のギャップに乗ればすぐに挙動が乱れる。
どのバイクと比べても、モンキーの不安定さは次元が違う。
しかしそれが面白い。
暴れる車体に四苦八苦しながら楽しむツーリングこそ「冒険」なのではないだろうか。
冒険開始
長距離移動のテクニック
モンキー最大の利点といえばコレ。クルマに積載できてしまうこと。
いきなりインチキじみたスタートだが、高速道路に乗れない原付バイクを「自走で」四国に渡るにはこの方法が確実だ(しまなみ海道を通るルートもあるが、剣山へは大幅に迂回する必要がある)。
クルマの中にバイクを載せて移動する。
その非日常感がすでに「冒険」なのだ。
ちなみに一般的な原付だと、車載のためにミニバンやワンボックス車を用意しなければならないが、モンキーならコンパクトカー(今回はホンダ・フィットを使用)で十分だ。
高速道路で瀬戸内海を超えろ!
ここは淡路島のサービスエリア・淡路ハイウェイオアシス。
高速道路を走れない原付がこの場所に止まることは通常ありえない。
ちょっと特別感がある1枚だ。
ちなみにフェリーを使えば原付でも兵庫県側から淡路島へ渡ることができる。
…のだが、淡路島から徳島県側へのフェリーは存在しないため、クルマに載せない限り原付で淡路島より南下することは絶対にできないのだ。
徳島に到着。モンキーの出番だ
剣山のふもとにフィットを停めてモンキーを降ろす。
クルマを停める場所を探していると、立ち寄ったガソリンスタンドの店員さんが「クルマ停めてもいいよー」とOKしてくれた。
オフロードバイクをハイエースなどに積んで剣山に向かうライダーは多いそうだ。
クルマ1台くらいなら停めてもいいとのことで、お言葉に甘える。
そもそもモンキーでオフロードを走れるのか?
今さらだがこれが大問題。
まずオフロードを走るバイクには次の要素が不可欠だ。
・大径ホイール
・ストロークの大きいサスペンション
・軽い車体
・高い最低地上高
・ブロックタイヤ
こうしてみると、5つ中3つくらいクリアしている(?)ので、走れるだろうと判断。
で、実際に走ってみた映像がコチラ。
走れなくはないが、相当にスリリングだ。
なおカメラは、360度撮影と強力な手振れ補正で定評のあるInsta360 X4を使ってみた。
Insta360 X4については下記の記事で詳しく紹介しているのでぜひ参考にしてほしい。
走り出してガレ場に絶望
剣山スーパー林道にはいくつかの入口がある。
今回は徳島市内から最も近い旭丸峠からアクセス。
このルートはスーパー林道の中でもガレていて、モンキーが前後左右上下と3次元的に跳ねまくる。
きっとフルサイズのオフ車なら安定して走破できるのだろうが、モンキーではそうはいかない。
「ヤバい場所に来てしまった…」と絶望しながら時速10~15kmでガタガタと進んでいく。
大自然のパノラマ。しかし…
ガレた道を進んでいくと「みんなの広場」という場所(正式名称らしい)に出た。
キツいダートの先にあるその広場は大自然に囲まれた絶景。
気をよくして休憩がてら写真撮影を楽しむ。
その後、先へと進むが…なんと通行止め。
冒険 第2ラウンド
成長する過程も「冒険」の醍醐味
今回の目的地は、通行止め区間の先。
なので引き返して迂回するしかない。
「もう一度あのガレ場を走るのか…」と気落ちしていたが、なぜかスムーズに走れるようになってきた。
体が慣れただけ? でも自分が成長したみたいでメチャクチャうれしい。
限界が低いバイクだから、ライダーのスキルが身につきやすいのかもしれない。
それからは前後に荷重をかけてみたりステップでコントロールしてみたりと、いろんなことをしてみたくなる。
モンキーって楽しい!
ファガスの森
1時間近く迂回して別ルートから再びスーパー林道にアクセス。
道中にある憩いの場「ファガスの森 高城」を目指す。
残念ながら定休日だったが、営業日であれば軽食やお土産の販売、キャンプや宿泊もできる憩いの場となっている。
いつかモンキーでキャンプにもチャレンジしたい。
徳島のへそ
ファガスの森を超えてさらに進むと、今回の目的地「徳島のへそ」が見えてきた。
みんなの広場は、街を見下ろす感じで「あそこから上ってきたんだなぁ」と実感できる場所。
対して徳島のへそは、見渡す限り谷と山。ゴールにふさわしい大自然に囲まれた場所だった。
帰路へ
クルマを停めさせてもらったガソリンスタンドでお礼を言ってフィットにモンキーを積載。
その後は高速道路で淡路島へ渡り、帰路についた。
モンキーで冒険をして感じたこと
今回、林道を走った距離は30km未満。
本格的なオフロードバイクなら短めだが、モンキーなら大冒険に感じる楽しい行程だった。
今回の冒険で気づいたことがひとつ。
近年のバイクは高性能化してロングツーリングをラクにこなせるようになっている。
また道路も整備が進んで走りやすくなっている。
だからこそ近場を走るだけでは物足りなさを感じているライダーもいるのではないだろうか。
モンキーのような小型のバイクなら、距離が短い旅でも大冒険になる。
はじめてバイクに乗ったときのように、近場をちょっと走るだけでワクワクしたあの感覚。
それを何年ぶりかに思い出せた気がした。