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人気のVストロームシリーズ最軽量!「Vストローム250SX」は軽快で俊足なスポーツ・ツーリングバイクだ

※記事内容は全て執筆時点の情報です。

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2002年に初代Vストローム1000が登場し、Vストローム650、Vストローム250、Vストローム800などラインナップを増やしていったVストロームシリーズ。現在国内では8機種のラインナップを揃え、スズキの大人気アドベンチャーモデルとなっている。そのVストロームシリーズで唯一、油冷単気筒エンジンを搭載しているのがVストローム250SXだ。

シリーズ最軽量でもあるVストローム250SXでツーリングに出かけ、その使い勝手のよさや特長をインプレッションしよう。

photo:関野 温

目次

独自の装備でアドベンチャーモデルとして最適化

Vストローム250SXは、オンロードスポーツモデル「ジクサー250」をベースに開発されているが、ツーリング先のワインディングやラフロードなどを楽しめるアドベンチャーモデルとして最適化され、Vストローム250SX独自の機構を装備している。

後輪はジクサー250と同じ17インチだが、前輪はラフロードでの走破性を高めるために17→19インチへと大径化している。ブレーキディスク径もフロントφ300→φ310mm、リヤφ220→φ240mmと、それぞれジクサー250から大径化しつつ、ABSの介入度をラフロード走行に対応したVストローム250SX専用セッティングに変更している。
フロントサスは正立タイプでストローク量は120mm。キャスター角を24°20′→27°00′へ変更し、トレール量は96→97mmとなっている(それぞれジクサー250比)。
7段階のプリロード調整が可能なリヤサスはストローク量が132→143.7mmへと延ばされている。
スイングアームも延長した独自のもので、ホイールベースは1345→1440mm、最低地上高は165→205mmとなっていて(それぞれジクサー250比)、ラフロードでの走破性や安定性を高めつつ、舗装路での軽快なハンドリングも両立している。
ハンドルグリップ/シート座面/フットレストの位置関係にこだわり、リラックスした快適なライディングポジションを実現。そのライポジに貢献しているアップハンドル。軽快なハンドリング操作も可能としている。
油冷単気筒エンジンのコンパクトさを活かし、スリムな車体幅を実現しているVストローム250SX。ヘッドランプとリヤコンビネーションランプはLED、ウインカーはバルブだが、被視認性は良好だ。ヘッドランプはフレームマウントで軽快なハンドリングに貢献している。

Vストローム250SXの足着き性

ラフロード走行に対応するため最低地上高が高められたVストローム250SXは、シート高も800→835mmへと高くなっている。ライダーは身長172cm、体重62kgで、片足を着いた時も両足を着いた時も、カカトが少し浮いた状態となる。けれど、車体の重心位置が低く、停止時に安定感があるので、片足つま先立ちでも不安を感じることはなかった。むしろ、ヒザの曲がりに窮屈さがなく、リラックスした姿勢でライディングできるポジションが自然と決まるメリットのほうが大きいと感じた。

シート前方をジクサー250よりもスリム化することで足を着きやすくしている。その一方でシート後方の座面は広く、クッション素材のボリュームもあるので、ツーリング時の疲労を軽減する。今回は丸一日ライディングしたが、お尻の痛みは驚くほど少なかった。
足着き性を考慮したシート形状のおかげで、お尻を少しズラすだけで、片足をベッタリ着けるようになる。重心位置が低く、車体を直立させても安定感があるので、お尻をズラしてもバランスが崩れにくい。それでも足着き性に不安を感じるなら、着座面が25mm低くなる「ローシート」が純正アクセサリーとして用意されている。

操作系が軽く、市街地での走りは軽快

エンジンを始動するにはクラッチレバーを握ってスターターボタンを押すのだが、そのクラッチレバーの軽い操作性がまず好印象だった。そしてスターターボタンをワンプッシュすれば一定時間スターターモーターが回転し、エンジンは始動する(エンジンが始動するとスターターモーターは止まるスズキイージースタートシステム)。ギヤを1速に入れて、アイドリングから少しスロットルを開けてクラッチをつないでいくと、スルスルと前進していく。スロットル操作も軽く、エンジン回転の上昇に合わせて車体も加速していくが、そのスロットル操作と加速がスムーズなので、車重を感じず、車体の挙動が軽快に感じられるのだ。

Vストローム250SXの油冷エンジンはジクサー250をベースとしているが、エアクリーナーを見直すことで低中速トルクが向上している。実際に市街地を走行してみると、トルクは太いというより粘るように感じた。スロットルを大きく開けても押し出されるような加速力は感じないものの、スロットルを閉じてエンジン回転が下がった時でもパスンと急にエンストするような兆候は皆無だった。ゴー&ストップの多い市街地走行では低回転域を多用するが、そうした際にVストローム250SXは不意にエンストしにくく、バランスを崩す不安も少ない。

押し出されるような加速力は感じなかったものの、250らしい加速力を発揮し、交通の流れをリードすることも充分可能だ。さらに前後ディスクブレーキはジクサー250より大径化され、制動力も不満のない仕上がりとなっている。また、大径化された前輪と延長されたホイールベースもあって、ハンドルは振られにくく、高い直進安定性も発揮。アップライトなライディングポジションは見晴らしもよく、市街地ではストレスのない軽快な走りだった。

大径ホイールは直進安定性に貢献しているが、押し引きの際や左折など徐行時のハンドル操作には粘りがあり、立ち(直立性)の強さも感じた。大径ホイールを装着しているオフロードバイクでの走行経験のあるライダーなら、この立ちの強さも予想できるだろうが、17インチホイールのシャープなハンドリングに慣れたライダーには、少しダルく感じるかもしれない。ただし、ハンドリングの粘りは極低速時だけで、小走り程度のスピードが出ていれば軽快でスムーズな操作性となる。

燃焼室回りに潤滑とは独立した回路(オイルジャケット)を設け、オイルクーラーで冷やしたオイルを直接オイルジャケットに速い速度で通すSOCS(Suzuki Oil Cooling System)を採用した、スズキ独自の油冷SEPエンジン。SEPはSUZUKI ECO PERFORMANCEの略称で、パワフルな走りと環境性能を両立したエンジンの総称。高い冷却効果を発揮するので、冷却フィンは装備されない。スチール製エンジンアンダーカウルを標準装備。
オイルクーラーには電動ファンを搭載。渋滞時などの無風状態で放熱性をサポートし、油温を適切にコントロールする。エンジンオイルが冷却液の役目も兼ねるので、ラジエターと冷却液が不要となる。
ハンドル左側のスイッチはヘッドランプのハイ/ロー切り替え、ウインカー、ホーン。奥に見える黄色いパーツはパッシング。
ハンドル右側はキルスイッチと、スズキイージースタートシステムを装備したスタータースイッチ。

疲れにくい乗り味で高速巡航も快適

直進安定性は高速道路でも発揮される。6速で100km/h巡航すると、エンジン回転数はタコメーター目視でおよそ6500rpm。エンジンからの振動は多少増えてくるが、手足がしびれるほどではない。

また、走行テストを重ねて開発されたウインドスクリーンは、コンパクトながら防風性を発揮し、身体に当たる走行風を低減している。ただし、走行風は多少ウインドスクリーンを巻き込むように流れ込んできて、胸に当たるのを感じる。と言っても、ネイキッドやオフロードモデルのように走行風が胸にダイレクトに当たるわけではなく、前後サスもフラットな乗り心地を提供してくれるので、高速道路での100km/h巡航は心地よい風を感じながら淡々と走り続けていける快適さがある。リラックスしたライディングポジションを取りつつ、シートのクッション性もいいのでお尻が痛くなりにくく、単気筒エンジンでもロングツーリングに向いた乗り味となっているのがVストローム250SXの特長だ。

固定式で高さ調整はできないが、コンパクトで高い防風性を発揮するウインドスクリーン。手に当たる走行風を低減するナックルカバーも標準装備する。フロント回りはVストロームシリーズらしい「クチバシ」デザインを採用している。
シート前方をスリム化しつつ、燃料タンクの側面はニーグリップがしやすい表面積を確保。足着き性と操作性の向上を両立した形状の燃料タンクは容量12L。今回はワインディングや林道で高回転を多用したが、燃費は41.3km/Lを記録。エコランを意識せずに、国土交通省届出値44.5km/Lに迫る良好な燃費となり、航続距離は単純計算で495.6km。こうした燃費のよさもVストローム250SXのツーリングでの使い勝手のよさになっている。
サブフレームを専用設計し、シートレールはジクサー250より延長している。パッセンジャーシートからフラットに連なるアルミ製リヤキャリアを標準装備し、キャンプ道具などの積載にも対応している。リヤキャリアには4つの荷掛けフックを装備し、最大積載量は6kg。
インストルメントパネルの左側にはUSBソケットを標準装備。定格5V2Aでスマホなどの充電に便利。イグニッションオンで青く光る導光帯式LEDを採用し、暗い場所でも操作しやすくなっている。
パッセンジャーシート裏側に車載工具が収納され、ヘルメットホルダーが2個装備されている。また、パッセンジャーシート下にはETC車載器を設置できるスペースがある。
単気筒ながら振動が少なく、スムーズな乗り心地で疲れにくいVストローム250SX。どこまでも走っていきたくなる乗り味だ。

車体の挙動がスムーズで、コーナリングが楽しい!

車両の押し引きではハンドル操作に粘りを感じたが、微速でも前進していれば、ハンドル操作はスムーズに行なえる。コーナーへの進入時には少し立ちの強さを感じるが、車体の倒し込みとハンドル操作に粘りはなく、Vストローム250SXも狙ったラインでのスムーズなコーナリングが決まる。連続コーナーでの車体の切り返しでも車重を感じず、大径化した前輪のデメリットはほとんど感じなかった。

エンジンの回転上昇もスムーズで、トルクとパワーも必要十分。ブレーキのタッチもよく、制動力のコントロールもしやすい。車体挙動のクイックさ、コーナリングのシャープさは17インチと小径ホイールのジクサー250に一日の長があるが、Vストローム250SXのコーナリングにもダルさはなく、適度にスポーティなワインディング走行が楽しめる。長くとったサスストロークが路面からの衝撃をしっかりと吸収し、低重心の車体が安定性と軽い操作性を両立し、油冷エンジンは扱いやすい出力特性を発揮する。市街地、高速道路、ワインディングとさまざまな状況で軽快な走りを実現しているVストローム250SXは、今回41.3km/Lという燃費のよさを発揮したこともあって、スポーツ・ツーリングバイクとして高い資質を持っている。

速度、タコメーター、ギヤポジション、時計、燃料計、オドメーター、トリップメーター、平均燃費、瞬間燃費、電圧などを表示する液晶インストルメントパネル。ディスプレイの左右にはエンジン警告灯、ウインカーインジケーター、ABS警告灯、エンジン回転インジケーターなどを配置。走行中にも各種情報が目視しやすい。エンジン回転インジケーターは4000~10000rpmの間で500rpm刻みで設定でき、ランプの点灯/点滅でシフトチェンジタイミングを伝えてくれる。

ラフロードでの軽快さはシリーズ中トップレベル

アイドリング付近から粘るトルクは、ラフロードではトラクション性のよさとしても感じられる。低回転でもエンストしにくく、標準装備のマキシス製タイヤはオンロード寄りのパターンながらラフロードでも意外とグリップ力を発揮する。オフロードバイクに近いアップライトなライディングポジションは走行中のバランス修正がしやすく、前後サスの衝撃吸収性もいいので、ラフロードでは予想以上に取り回しやすい。軽快な走りはVストロームシリーズでもトップレベルだと感じた。

と言っても、とくにラフロードの下りでは前輪が振られやすくなる。これはタイヤパターンというより、タイヤ剛性の高さによるものだろう。高速道路やワインディングなどハイスピードでのコーナリングでも確実なグリップ力を発揮するマキシス製タイヤは、オフロードタイヤと比べて剛性が高められていて、ラフロードで受けた衝撃を吸収しきれないように感じる。さらにABSの解除機能がなく、ラフロードではABSの介入も増え、繊細なブレーキ操作もしにくくなるからだ。それでも車体の操作性自体は軽快なので、スピードを控えつつ、急ハンドルや急制動を行なわなければ、キャンプ場などのラフロードはもちろん、林道も走行できる走破性をVストローム250SXは備えている。

舗装路に加えて、ラフロードでも軽快な走りを楽しめるVストローム250SXは、旅の相棒として淡々と走り続けても疲れにくく、旅の途中のワインディングではスポーティな走りも楽しめ、ラフロードにも入っていきやすい軽快さも備えている。ツーリングライダーはもちろん、単気筒らしいスポーティな走りを楽しみたいライダーにもオススメしたい、完成度の高い軽量なアドベンチャーモデルだ。

フットレストの上面にはラバーが装着され、振動を低減。素材もジクサー250のアルミ製からスチール製へと変更されているが、この素材変更も振動低減に貢献しているように感じられた。
湖畔のサンド路面にも入っていく気にさせる軽快な取りまわし性が、Vストローム250SXにはある。ツーリングバッグも積載しやすく、まさにVersatile(多用途)に使える1台だ。

Vストロームオーナーが写真投稿できる
Vストロームロケーションマップが開催中

あつまれ! Vストロームオーナー!投稿すれば愛車の写真がマップに登場するぞ!

Vストローム250SX主要諸元

全長/全幅/全高2180mm/880mm/1355mm
装備重量164kg
ホイールベース1440mm
シート高835mm
エンジン型式油冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒
総排気量249㎤
最高出力19kW(26PS)/9300rpm
最大トルク22N・m(2.2kgf・m)/7300rpm
燃料消費率(WMTCモード値)34.5km/L
燃料タンク容量12L
ブレーキ形式前ディスク/後ディスク
タイヤサイズ(前/後)100/90-19M/C 57S / 140/70-17M/C 66S
ボディカラーパールブレイズオレンジ、チャンピオンイエローNo2、グラススパークルブラック
価格56万9800円

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