オイル交換時、店員にオイル添加剤を勧められたことはないだろうか?
一本買いきりではなく、量り売りで手軽に試すことができる店舗も存在する。
筆者も幾度となく添加剤を試したことがある。ただ正直に言えば「なんとなく良くなった気がする」程度で確実にエンジンに良いか?と問われれば自信がない。
実は先日取材を通して「チムケン試験機」の存在を知った。まさにエンジンオイルや添加剤の効果を見える化するための試験機なのだ。
今回は特別に、国内の老舗添加剤ブランド、スーパーゾイルを販売する、株式会社パパコーポレーションより機材を借りて実験してみた。
まずは実験の結果をお知らせする前に、エンジンオイルや添加剤の役割を説明したい。
エンジンオイルの5つの役割
エンジンオイルは人間にとって血液のようなもの。このように言われることが多い。
実際の役割に関して大きく分ければ5つに分かれる。
1:潤滑作用
エンジン内は金属パーツの集合体。金属パーツ同士が接触することで発生する摩擦を低減する。
2:冷却
エンジン内の爆発や金属同士の摩擦で発生した熱をオイルが循環することで冷却する。
3:防錆
数百度を超えるエンジン内と外気温の差によってエンジン内には水分が発生しやすい。この水分が原因で錆が発生してしまうことがあるが、オイルの油膜を張ることでパーツ表面をコーティング。錆の発生を抑える。
4:洗浄
ガソリンやオイルの燃え残り、細かい金属片などを吸着回収する。
5:密閉
ピストンとシリンダーの間には動きを滑らかに保つために隙間が存在する。ガソリンの燃焼ガスを圧縮する際には気密性が求められるが、隙間にオイルが入ることで維持している。
オイル添加剤の役割
多くの役割を果たしているエンジンオイル。それをサポートするのがオイル添加剤の役割となる。
機能を単純に表せば密閉性と潤滑作用の向上といったところだ。
圧縮漏れによる燃焼ロスの低減、エンジン内での金属パーツの摩擦を減らすことで、滑らかにエンジンが回るようになり燃費や性能がアップするのだ。
今回使用するスーパーゾイルに限って言えば、金属の表面を綺麗に再生し、摩擦を軽減するメカニズムとなる。
肉眼では見えなくても、ミクロン単位でみれば金属の表面は凸凹している。それを整えてフラットにするのだ。
オイル添加剤の効果を見える化するチムケン試験機とは?
チムケン試験機はオイルの潤滑性能を図るためのものだ。
潤滑が維持されていれば耐摩耗・焼き付きからエンジンを守ることができる。
金属同士を接触させ、どこまで力を入れればオイルが切れて金属同士が接触してしまうかを測定する装置だ。
チムケン試験機はJIS規格の試験などにも使われている。
今回はまず一般的なエンジンオイルのみでテストした後、スーパーゾイル(オイル添加剤)を追加して性能の差を試験してみた。
テストの手順
では早速チムケン試験機でテストを実施していく。
手順としては、
- チムケン試験機にテストピースを装着する。
- オイルパンにエンジンオイルを入れる
- スイッチオンしてチムケン試験機のシャフトを回転させる
- テストピースとシャフトを接触させ、どの程度力を加えたら油膜が切れるかテスト
- スーパーゾイル(オイル添加剤)を追加
- どの程度力を加えたら油膜が切れるかを再テスト
それでは実際にやってみる
1:チムケン試験機にテストピースを装着する
テストピースは金属製の丸い塊だ。
これをチムケン試験機に装着する。シャフトと接触する部分なので摩耗してきた場合には交換が必要になる。
装着は手回しできるボルト一本で可能。
2:オイルパンにエンジンオイルを入れる
今回は多くのバイクで採用される10W-40のオイルを用意してみた。
オイルパンは脱着式なので、シャフトがエンジンオイルにつかるように位置を合わせる。
3:スイッチオンしてチムケン試験機のシャフトを回転させる
オイルパンに入ったエンジンオイルがシャフトの周りに油膜を張っているのが確認できた。
ここからテストピースをシャフトに押し付けていく。
4:テストピースとシャフトを接触させ、どの程度力を加えたら塗膜が切れるかテスト
15N・mを超えたあたりから嫌な金属音が鳴り響き始める。力を入れるのを遠慮してしまうぐらいだ。
スイッチを切り状態を確認する。
オイルパンを見ると黄金色のオイルが黒く変色してしまっている。
テストピースの一部が削れているのも確認できた。
15N・mぐらいから発生した嫌な金属音は油膜がきれて発生した金属同士の摩擦音だったようだ。
長年バイクに乗っていると、徐々にエンジンから異音が聞こえてくることがあるが、金属同士の摩擦音が理由の一つと言えるだろう。
5:スーパーゾイル(オイル添加剤)を追加
今回はスーパーゾイルECOを使ってみた。
本来はオイルの量に対して5%という少量でOKなのだが、オイルパンのオイル量がごく少量なので、通常よりは割合は大きくなる。
スーパーゾイルECOは金属表面再生効果があるので、金属同士の摩擦で削れてしまった細かい傷をミクロン単位で生成して整えてくれる
6:どの程度力を加えたら塗膜が切れるかを再テスト
先ほどは15N・mぐらいから大きな金属音が部屋中に響いていたが、倍の30N・mの力をかけても金属音はしない。
成人男性でも頑張らないと30N・mの力をかけることはできない。瞬間的に両手で力を入れて40N・mの力をかけてみたが金属音がなることはなかった。
嘘だと思う方は動画でもご確認を
写真と文章での解説だと偽造できるだろ?という読者の声が聞こえてくる。
安心してほしい。今回は動画でも撮影しているので、気になる方は動画でもチェックしてみてほしい。
理屈がわからないけど、スゴイことが起こった
スーパーゾイルECOをオイルに入れることで、通常よりも潤滑性能がアップすることがわかった。
ただ株式会社パパコーポレーションの担当によると、テストピースをパーツクリーナーで脱脂しても潤滑がきれないという。
オイルパンに入っているオイルを廃棄し、テストピースをパーツクリーナーで脱脂。再度チムケン試験機のスイッチを入れてみた。
先ほどと同じように30N・mの力を入れても金属音が鳴り響くことがない。
オイルパンにはオイルが入っていないし、見た目にもオイルは潤滑していない。だが金属同士は接触することがないのだ。
万が一オイルが切れてしまったとしても、エンジンの焼き付き防止に効果があるのではないかと思う。
再び同じテストピースを試験機で使うためにはサンドペーパーでスーパーゾイルECOの成分を完全に除去するしかないのだとか。
愛車と長く過ごしたいならオイル添加剤は有効
チムケン試験機でオイルや添加剤の性能全てを測れるわけではないが、少なくとも添加剤を入れる事で変化が起こることはわかっていただけたと思う。
また個人的な感想としては添加剤などの類は長期的に使うことで効果を感じることができるものだと思っていた。例えるならサプリメントのようなものだ。
筆者も健康を気にしなければいけない年齢になってきたので、サプリメントなど摂取することがあるが、効果があるかわからず続かない。
新車の頃は添加剤を入れていたが、効果がイマイチわからずやめてしまったという人もいるだろう。
今回の実験では削れてしまったテストピース表面にスーパーゾイルを添加したところ、摩擦による金属音が鳴らなくなった事が確認できた。
摩擦により金属表面にダメージを受けた状態で使ってもスーパーゾイルは効果があることがわかる。
「エンジンをオーバーホールするほどではないが少し音が出てきた」という方にもお勧めできるので試して頂きたい。
写真&文:相京 雅行