1980年代からレーシングマシンに普及したドライカーボンパーツは、現在もF1やMotoGPマシン、スーパーカーに多用されており、高性能マシンの代名詞と言っても良いだろう。
驚くほどの軽さと、高強度、高剛性を同時に有するドライカーボンだが、生産工程で余分な樹脂を除去する真空圧縮(バキュームパッキング)の設備や高温高圧で焼くための窯(オートクレーブ)が必要不可欠になるため、生産には多大な手間や設備、コストが掛かる。
そこで、代用として広く浸透しているのがウェットカーボンパーツだ。多くはFRPのガラス繊維の積層の一部にカーボン繊維を使うことで、見た目はレーシーなテイストを持っているが、強度や軽さはあくまでFRPと同一。あくまで雰囲気重視のドレスアップ品となる。
現在「カーボン製」として販売されているパーツはこの「ウェットカーボン」であることが多い。
ドライカーボンにこだわるSSKの製品創り
そんな中、ウェットカーボンパーツ並みの価格で本物の「ドライカーボン」パーツを生み出したのがSSKだ。
同社のブランド「SPEEDRA(スピードラ)」の製品は、レーシングマシンと同じリアルなドライカーボンパーツを一般ユーザーに広めるために、デジタル最先端技術を導入した工程の短縮化を実践。それにより驚くべきコストパフォーマンスを実現している。
最先端の機器を多用したSPEEDRAの開発工程を解説!
製品開発のスタートとなるのが3Dスキャナーによる実車の採寸だ。そこからパソコン上でCADによる設計を行いデータを作成、3Dプリンターで試作を出力すれば、すぐに実車に仮装着が可能だ。
従来の量産開発に比べると驚異的なスピードで製品版データが出来上がり、協力工場にデータが送信される。
生産を担当するのはカーボン素材を知り抜き、充実の生産設備を誇るカーボン製品専門の工場だ。そこで腕利きの職人が造ったドライカーボンパーツは、検品を行った末に我々ユーザーの手元に届くことになる。
3Dスキャナーによる計測からスタートする製品開発
スキャナーが正確に計測できるように反射を抑えるスプレーを吹き付ける。まるで細かな雪がついたように白くなるが、これは一定時間で自然に消えてしまうので、車体に傷つける心配が無い。
PCに繋いだ3Dスキャナーでフロントブレーキ周辺を計測していく。
3Dスキャナーで周辺をゆっくりとなぞっていくと、PC画面に3D像が出来上がっていく。まるで魔法のようである……。
計測が終わったら、性能とデザインを両立する造形を綿密に検討しつつそのデータを基にCADでパーツの設計を行う。
キャリパーだけでなくローターまで走行風で冷却できるクーリングダクトの元データが完成。これを3Dプリンターで出力し、試作第一弾が完成する。
3Dプリンターで出力した試作品を車両にフィッティング確認する。
形状やデザインだけでなく、車体との干渉など安全面も加味して、CADデータの修正を行いつつ、ブラッシュアップを重ねていく。
製品版データが完成したら生産工場にデータを送信。工場では製品のメス型となる金型を制作する。この金型を使ったカーボン製の試作品の実物をSSKに発送し、SSKでは実物を装着してさらに様々なテストを実施する。問題がなければ量産に入る。
こうした工程を経てSPEEDRAの製品は生み出されている。現代の技術があってこその、実にスピーディかつ効率的な生産手法だ。
間もなく登場するNEWアイテム!「キャリパークーリングダクト」の取り付け手順解説
ドライカーボン製「キャリパークーリングダクト」取り付け手順
クーリングダクトは付属のL字ステーをキャリパーボルトと共締めして取り付けを行う。キャリパーボルトを外して付属ステーを挟んで仮締めする。工具は12mmのソケットレンチを使用した。
上下のL字ステーに渡して、製品付属の位置決めを行う治具を取り付ける。これでL字ステーの向きが変わることがない。
治具を取り付けたまま、トルクレンチを使用してキャリパーボルトをメーカー規定の35Nmで締め付けた。締め付け後、治具を外しておく。
SPEEDRAのカーボンパーツは高精度な仕上がりだが、ボルト穴の小修正が必要な場合がある。穴位置が大きく合わないということは無いので、ほとんどの場合、棒ヤスリで少しネジ穴を削る程度で済む。
L字ステーにダクトを取り付ける。2本のボルトを均等に何回かに分けて締め付ける。4mmのヘックスレンチを使用した。
装着完了後は最後に車体との干渉などが無いかどうか確認する。
プロに取り付けを依頼すれば間違いないかもしれないが、基本的な工具さえあれば自分でも作業できるだろう。こうした非常にシンプルな構造かつ取り付けに際し車体に加工が必要がないという点はSPEEDRAのパーツに通底するコンセプトとなっている。
豊富なバリエーションと高機能かつスタイリッシュなSPEEDRAのカーボンパーツ
SPEEDRAのカーボンパーツは様々な仕様の中から好みに応じて選ぶことができる。
カーボンの紋様は平織り、綾織りの2つから。表面の仕上げは艶あり、艶無しから。基本的に合計4種が各商品ごとにラインナップされる。
カーボンは紫外線に弱いので、製品には必ずUVカットのクリア塗装が施されているのも特徴だ。
カーボンの新たな魅力を見せる「チョップドカーボン」
SSKでは二輪のアフターパーツとしてはおそらく業界初となるチョップドカーボン製品の販売スタートを予定している。
従来のカーボンとは一線を画す独特の紋様で愛車のスタイリングをさらに引き立たせてくれる。
シンプル簡単な取り付けでルックスを一新!
SPEEDRAのカーボンパーツは車体に加工などは一切必要なく装着できるのが特徴の1つで、脱着作業もシンプルだし、いつでも純正ノーマルに戻すことができる。
右が純正の樹脂パーツで左がSPEEDRAのドライカーボンパーツ。持ってみると軽さの違いに驚く!
生産コストや手間を考えると、写真のような外装パーツは両面テープで貼り付けて終了となるケースが多いのだが、SPEEDRAではちゃんと純正と同じ取り付け爪を設けて、純正パーツと同じ様に脱着ができるようになっている(写真下)。
さらに製品によっては、スムーズに装着できるかどうかを製品出荷前に検品テストするために実物の純正カウルを用いているケースもある。
純正を上回る機能を持たせたリアフェンダー
車種によっては、リアフェンダーは純正形状と、より汚れの巻き上げを抑えることができる「ロングタイプ」を同時にラインナップする。写真は現在開発が進むハーレーの「パンアメリカ1250」のリアフェンダーで下側が純正品。
人気機種用のSPEEDRAカーボンパーツを一挙紹介!
Kawasaki ZX-25R
SPEEDRA ダウンフォースウィングは近日発売予定。ノーマルミラーマウント部に装着する。中空構造で非常に軽量だ。
3Dプリンターで出力した試作と製品版。素材は違うが造形としてはすでに開発初期段階で完成していることが理解できる。
チョップドカーボン素材のキャリパークーリングダクトは間もなく登場予定の商品。フロントのアクスルスライダーもSPEEDRAの製品だ。
前後のフェンダーは純正の樹脂製から交換することで、見た目も一新されるし、バネ下重量の軽減を見込むことができる。
レーシーなイメージのレバーガードやタンクキャップパッドもSPEEDRAの製品となる。
車体の要所にドライカーボンパーツを配することで効果的なドレスアップが可能。撮影車両はブラックだが、どんな色にも合うのがカーボンパーツの魅力のひとつだ。
Kawasaki Z900RS
ネオクラシック一番人気のZ900RS。ネイキッドは外装が少ないのでドライカーボンパーツは少ないかと思ったが、決してそんなことは無く、前後フェンダーを筆頭にメーターカバー、フレームカバー、サイドカバー、テールカウルやフェンダーレスキットまで豊富にラインナップ。
リアフェンダーは純正形状タイプとロングタイプがある。写真はタイヤの半分まで多い、砂利やホコリの巻き上げを抑止できるロングタイプ。
しっかりした剛性のグラブバーもSPEEDRAの製品。サイドバッグサポートも装着できる。
BMW S1000RR 2019~
総カーボンの様な姿で生まれ変わったようなS1000RR。まだ商品化されていない製品も含まれているが、純正オプションのような完成度だ。
アンダーカウルはすでに販売されている商品となるが、アッパーカウルはこれから発売予定。カーボンの紋様で凄みを増したルックスだ。
前後フェンダーやテールカウル、ミラーカバーは既存のラインナップとなるが、スクリーン下のカバーやタンクカバーは未発売商品。
一見してカーボンスイングアームかと思ってしまうが、これはスイングアームのカバーとなる。左右セットの商品だ。
Harley-Davidson SPORTSTER S 用製品開発中!
注目のニューモデル、スポーツスターSのパーツを鋭意開発中だ。スポーツスターSの車体にはカーボンバーツが制作できそうな部分が多く、今後、多数の商品ラインナップが期待できるそうだ。
現在はナンバーのサイドマウントやテールライト&ウインカーマウント、さらにアルミビレットのステップなどの試作が進んでいた。
まずは自分の愛車用の適合商品があるかチェック!
ドライカーボンパーツが持つ強靭性と軽さはそのままに、コストパフォーマンスに優れた品質と価格、そして充実のラインナップを実現したSPEEDRAのドライカーボンパーツ。ぜひ、同社ホームページをご覧いただき、自分の愛車のラインナップがあるかどうかご確認いただきたい。