タンクバッグの固定はまだまだマグネット式が多いのが現状
バイクにまたがった状態で、すぐに荷物へとアクセスできるタンクバッグは、ツーリング好きなライダーなら愛用している方も多いだろう。停車していれば楽に荷物が取り出せ、ライダーの目の前に荷物がある安心感、また、たとえ走行中に落下したとしても気づかないという事態には陥らないのもポイント。
しかしタンクバッグのネックなところはバイクへの固定方法だ。いまだに多くのモデルが、バッグの底やフラップに仕込まれたマグネットでタンクに貼り付ける方式を採用している。実はこれが問題。旅を続けていると、フラップの裏側やバッグの底に砂埃が溜まり、いつの間にかマグネットの効力が弱くなって高速道路などで風圧により浮き上がったりするのだ。またその砂埃が原因でタンクのクリア塗装が剥げてしまうなんていう悲しい現象も。
さらに最近はアルミ製のタンクや、樹脂のタンクカバーがついたバイクも多く、そういった場合はマグネットそのものが効かないので、ベルトで固定する製品しか装着できないことになる。
そういった理由からタンクバッグはツーリングで非常に便利な一方で、バイクとの相性が微妙な点も多いのが現状なのだが、そんな中、声を大にしておすすめしたいのがこのSHADのクリックシステムを採用した「TERRA(テラ)」シリーズだ。
数多くの完成車OEMの実績のあるグローバルブランド「SHAD」
SHAD(シャッド)は1973年に誕生したスペイン・バルセロナのサプライヤーメーカー。BMWなどのグローバルメーカー向けのデザイン性・機能性にこだわったトップケースの商品開発に特化した同社は、80年代にピアジオエスパーニャ・サプライをスタートさせたことで世界的なプロバイダーとなり、HONDA、YAMAHA、そしてSUZUKIといった日本メーカーへの商品提供を開始。90年代にもPEUGEOT、BMW、MBK(YAMAHAFrance)などビジネスパートナーを次々と増やし、今では80ヵ国以上で愛用されているブランドだ。日本でも「SHAD」のロゴが入ったボックスを目にする機会は少なくない。
日本でこのSHADを総代理輸入元として取り扱っているのはカスタムジャパンで、毎年東京モーターサイクルショーなどでもブースを出展しているので、実際にご覧になったライダーも多いはずだ。
IPX5をクリアする強力な防水、防塵性能
今回テストしたのは「TR10CL」という完全防水仕様のタンクバッグだ。ちなみにTRは「TERRA」の略。テラとはスペイン語で「地球」という意味。母なる大地である地球に敬意を表してこの名が付けられたそうだ。まさにアドベンチャー的なネーミングだ。
バッグの容量は約10Lと大きからず小さからずちょうどいいサイズ感。ターポリン素材という水を一切通さない生地で、しっかりとした造りなので、荷物が入っていなくても荷崩れすることがない。
試しに日帰りツーリングで持っていく財布、シニアグラス、サングラス、タオル、スマホ、モバイルバッテリー、鍵、目薬、ティッシュ、イヤホンなどを入れてみたらまだ余裕があったので、レインウエアも追加。それでもきっちり入ってしまった。
もちろんファスナーは止水タイプを採用しているので、雨や埃などは完全にシャットアウトできる。こういった止水ファスナーは動きが渋いことも多いが、これは比較的スムーズに開閉ができた。またファスナーにはタブが着いているので、冬用のグローブなどを装着していても楽に操作が可能だ。
完全防水バッグのいいところは、雨天など天候を気にしなくていいのはもちろんのこと、林道で水たまりを通過した際のしぶきや、泥、砂埃などもシャットアウトできること。たとえ汚れてしまっても水道でじゃぶじゃぶ洗え、タオルで拭けばすぐに乾燥できるのも利点だ。
ちなみにこのバッグは防水防塵規格のIPX5をクリア。これは毎分12.5Lの水を2.5~3mの距離から3分間以上散水し、浸水がないことが条件で、水中に落ちた場合でもすぐに取り出せば問題ないほどの性能だ。
最近はスマホを始め、モバイルバッテリー、小型タブレット、Wifi機器など電子デバイスを持つことも多いため、水と埃を完全にシャットアウトできるのは非常にありがたい。
着けるのも外すのも1秒以内でしかもがっちりと固定ができる
そして注目すべきなのが、このクリックシステムだ。まずバイクの給油口にフィッティングキットを装着。これは各車種ごとに装着方法が違うのだが、基本的には既存のボルトを抜いて、フィッティングパーツをかみこませ、専用ボルトで留めるだけの単純な作業で取り付けできる。
するとタンク上に馬蹄形のステーが固定され、このステーに向かってタンクバッグを押し付けると「カチッ」という心地いいクリック音と共にバッグが固定される。その固定力はかなり高く、ぐらつきも皆無。また外すのも簡単で、左下部にあるボタンを押すだけ。着けるのも外すのも1秒かからず、それでいてがっちり固定できるのだから、これは便利だ。
これだけ固定力が高ければ、林道ツーリングなどの激しいオフロード走行でも外れる心配はないだろう。
また本体の右下部にはキーシリンダーも装備。付属のキーでロックできるので、サービスエリアやランチなどでバイクを離れるときも安心だ。ロックできるタンクバッグはあまり例がないので、これは画期的である。
一つ欲を言えばファスナーもロックできれば完璧だった。だが、12種類もある同クリックシステムシリーズの中にはダブルファスナーで南京錠がかけられるタイプもあるので、さらなる防犯性を求めるライダーはそちらを選ぶといいだろう。
◆TR10CL
容量:10L
材質:ターポリン(PVCをメインにした3層構造)
付属品:クリックシステム専用樹脂製アタッチメント×1
参考小売価格:29,700円(税込)
クリックシステムフィッティングキット:3300円(税込)~
激しいオフロード走行にも耐える防水サイドバッグ
今、日本のみならず世界中でアドベンチャーモデルが空前のブームなわけだが、SNSでアドベンチャーモデルに乗っている海外のライダー達をチェックしているとよく目にするのが、完全防水タイプのソフトバッグを装着して旅をしている様子だ。砂漠、土漠、草原、河原、山岳地帯など地球上のあらゆる場所を旅する彼らがなぜハードケースではなく防水ソフトバッグを選ぶのかといえば、それは軽さとフィッテングだと思われる。ハードケースに荷物を満載するとどうしても重くなり、走破性能が落ち、また激しい走行ではステーが耐えきれずに破損することもある。
ソフトバッグなら軽いがゆえにバイクの運動性も損なわない。またハードケースに比べれば圧倒的にリーズナブルなのも大きな利点。そういった要因で、本気でオフロードのフィールドを旅するライダーは、防水ソフトバッグをチョイスしているのだと推測できる。
SHADのTR30も、そんなシーンで活躍している防水ソフトバッグだ。別売の4Pシステムフィッティングキットを装着すればワンタッチで装着でき、容量は片側30Lなので、両側装備すればソロのキャンプ用品なら楽に収納できるサイズ。
止水ファスナーを使わず、上部を巻き込んで留めるロールトップ方式を採用してるので、防水性能はIPX6をクリア。前述のTR10CLよりも高い防水防塵性能を持っているからさらに信頼性が高い。
またフィッティングキットにバッグのフックをかけてキーが掛けられるので、ロックをかけてしまえば、開閉も取り外すこともできない。TR10CL同様に、ソフトバッグながら非常に高い防犯性能を持っているのが特徴だ。
本体価格が84700円とフィッティングキットが5万円前後(車種によって異なる)とトータルすると15万円ほどになってしまうが、ハードケースと比較すれば、リーズナブルではないだろうか。
◆TR30本体サイズ:H380×W400×D230(㎜)
容量:60L(片側30L)
耐荷重量:6kg(片側)
対応メーカー:HONDA、YAMAHA、SUZUKI、KAWASAKI、KTM、
DUCATI、BMW、TRIUMPH、MOTO GUZZI、BENELLI、他
材質:ターポリン(PVCをメインにした3層構造)
参考小売価格:84,700円(税込)
4Pシステムフィッティングキット:47300円(税込)~
まとめ
完全防水で、着脱が圧倒的に早く、それでいて防犯性能も高いこのSHADのTR10CLとTR30。筆者にしてみればヨーロッパやアフリカ大陸のオフロードフィールドをガチで旅するライダーのようで非常に憧れるスタイルだ。
もちろんその性能の高さは日本の普通のツーリングでも、絶大な効果を発揮することは間違いない。着脱と天候を味方につけるというのは、それだけでかなりのストレスフリーなのだ。
実際の旅で、このクセになるクリック感をぜひ味わってもらいたい。