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2025大阪モーターサイクルショーでジャパンプレミアで発表されたBear650(ベア・ロクゴーマル)にいち早く試乗! ショットガン650やスーパーメテオ650と同系の空冷648cc並列2気筒エンジンを使用したスクランブラーモデルとは一体どんなキャラクターなのか? 一般道や高速道路はもちろん、ダートセクションにもベア650を連れ出してみた!
試乗・文:谷田貝 洋暁
写真:真弓 悟史
フロント19インチホイールの本格スクランブラースタイルの「ベア650」
近年、ラインナップの増強や日本国内でのディーラー増加など、インドのバイクメーカー・ロイヤルエンフィールドの動きが活発だ。前日始まった2025大阪モーターサイクルショーでも、クラシック650やゴアン クラシック350などの次期投入予定の新型車を続々発表。
さて、今回試乗したのはそんな日本に上陸したばかりのベア650。INT650の車体をベースに大きめの19インチホイールをセットして最近流行りのスクランブラースタイル化。エンジンはスーパーメテオ650やショットガン650にも搭載されている空冷SOHCの648ccの並列2気筒エンジンだ。
目を引くのは、ブレース(補強)付きの幅広のハンドルやゼッケン付きのサイドカバー、ツインショックなどの“ビンテージオフロード風”の本格スクランブラースタイル。どちらかというとクルーザーに近いスーパーメテオ650やショットガン650や、INT650とは全く別の世界観を作り出している。
Royal Enfield Bear 650
<SPEC>
●全長/全幅/全高:2,216mm/855mm/1,160mm
●装備重量:214kg
●シート高:830mm
●燃料タンク容量:13.7ℓ
●エンジン型式:空冷4サイクル並列2気筒SOHC
●総排気量:648cm³
●最高出力:34.9kW〈47.4PS〉@7150
●最大トルク:56.5N・m〈5.7kgf・m〉 @5150
●変速機: 6速
●ブレーキ形式:前φ320mmディスク、後φ270mmディスク/ABS
●タイヤサイズ(前/後):100/90R19/140/80R18
●価格:990,000円(ボードウォーク・ホワイト)/998,800円(ペトロ-ル・グリーン、ワイルド・ハニー、ゴールデン・シャドウ)/1,015,300円(トゥー・フォー・ナイン)/税込
中低回転域が元気な「ベア650」
走り出して驚いたのは、同系エンジンを積むスーパーメテオ650やショットガン650はもちろん、INT650とも異なるエンジンフィーリングだ。270°クランクの空冷SOHC648cc並列2気筒エンジンという仕様が変わっているわけではないし、数値的な違いもピークパワーに関してはほぼ一緒。
違うのは最大トルクで、スーパーメテオ650やショットガン650の最大トルク52.3N・m@5650rpmに対し、ベア650は56.5N・m@5150rpm。つまりベア650の方が500回転低い回転域でより高い最大トルクを発揮。この回転数はINT650の最大トルクの発生回転数と一緒であるが、ベア650の方がさらに4.2N・mほど力強いキャラクターとなっている。メーカーによればこの性能差は機械的な違いではなく、エンジンマッピングによる差別化とのことだが、乗ってみればその違いはしっかり感じられる。
クルージング向きのフラットな過渡特性のスーパーメテオ650やショットガン650のエンジンフィーリングに対し、ベア650は中低速、エンジン回転数3千回転あたりのエンジンフィーリングの粒感が際立っており、スロットル操作に対してより元気に反応する。
メインフレームなどの車体に関しては、スーパーメテオ650やショットガン650ではなくINT650がベースとのこと。ホイールサイズはフロント18インチ/リヤ18インチのINT650に対し、ベア650はフロント19インチ/リヤ17インチ。同時にフロントフォークも正立タイプではなくインナーチューブ径43mmの倒立タイプを採用して、フレームもそれに合わせて剛性強化。
ベースモデルのINT650やカフェレーサータイプのコンチネンタルGTというと、バーハンドルとセパレートハンドルという違いはあるものの、どちらも腰を引いた後輪荷重重視のライディングポジションで操ると素直に曲がってくれた記憶がある。ところがこのベア650はステップ位置がかなり前目にセットされているためか走行フィーリングがずいぶん異なる。しっかりフロントに荷重をかけていく現代的なコーナリングの方がよく曲がる印象を受けるのだ。
また最低地上高が184㎜と高めに設定されているおかげで、スーパーメテオ650やショットガン650よりもバンク角が深い。おかげでワインディングではしっかりマシンを寝かしていくようなスポーティな走りが楽しめる。
「ベア650」の意外なオフロード適性の高さにびっくり!?
正直に話せば、このベア650にダートセクションの走行性能は期待していなかった。19インチのスポークホイールにブロックパターンが強めのタイヤを履いているものの、フロントフォークのストロークはロードバイクとほぼ変わらない130㎜程度だし、最低地上高も184㎜とそこそこ。
見た目を重視してのことだろう、リヤショックに関しても絶対的な性能でモノショックに劣るツインショックだったりする。とはいえメーカー発表の公式リリースには“軽度のオフロード走行能力も備えます”なんて書いてあるから一応ダートを走って確かめてみようか? 最初はそんな軽い気持ちだったのだ。
前後の空気圧を1.2kgf/㎠まで落とし、ABSのモードをリヤタイヤのブレーキロックが可能になるオフロード走行専用のモードに切り替えて走り出す。……と、このベア650は意外なことにダートセクションも結構面白い。ABSはリヤの制御キャンセルが可能なだけでなく、きちんとオフロード走行に合わせて介入がやや遅めに設定されており、ロードバイクでダートを走った時のような“止まらないっ!!”なんてこともない。
驚いたのはサスペンションだ。仕様諸元によればホイールトラベルはフロントが130mm、リヤ115mm。ダートを走るにはかなり少ないトラベル量だと感じたのだが、フラットダートレベルでちょっとスロットルを開けて遊んでみても案外底突きしない。
フロントフォークに関しては、決してオフロード向きのソフトな設定ではないのだが、意外とタイヤが路面を捉えている感覚が掴みやすくて不安が少ない。ビックピストンフォークの効用で動きがいいからなのか? またスプリングに特別な工夫があるのか? 車重も200kg超えなのだが、スタイルだけの“陸(おか)”スクランブラーの一言で片付けられないダート適性を感じる。
この意外なダート性能に気を良くして、スタック覚悟でサンドセクションに持ち込んでみたりしたのだが、オフロードバイク並みとは言わないものの、それなりに走れてしまうことにびっくり(笑)。
ちょっとしたギャップで跳んでみればストロークをあっさり使い切ったのでジャンプなどの縦方向の動きに対する適性はそれなりだが、横の動きに関しては意外とダート適性が高くて走らせるのが楽しい……と言ってしまおう。無理は禁物だが、トコトコ走るくらいの林道ツーリングくらいならベア650で十分こなせるはずだ。“軽度のオフロード走行能力も備えます”というメーカーの発表は偽りなしといったところだ。
「ベア650」の足つき&ディティール
シート高は830㎜。クラシカルなスタイルのおかげでシート部分にも幅がありそうなイメージだがそんなことはなく、しっかりシートが絞られているおかげで足は意外と出しやすい。172cm、75kgの筆者の体格だと両足で支えると踵が2、3cm浮く程度。ずっしりとした車重は感じるものの足つきが悪いとは感じない。上半身は幅広なハンドルがいかにもスクランブラーという感じだが変な遠さはなく、スタンディング時の違和感もない。ステップポジションはスタンディングでもシッティングでも窮屈さを感じず、足つき時にも邪魔にならない絶妙な位置にある。
「ベア650」の試乗まとめ
見た目だけでダートが走れないスクランブラーかと思いきや、フラットダートが意外にも楽しく走れてしまったベア650。オフロード初心者に「ベア650が1台あればダート遊びもできますよ!」と勧めるつもりはないが、それなりにオフロード経験のあるライダーならマシンの重さからくる難易度アップも含めて結構楽しめる事だろう。
2025年現在、スクランブラー系のモデルは、カタチだけの“陸スクランブラー”と、オフロード性能を追求したガチ勢の2極化が進んでいる。ベア650は決して本気でオフロード性能を作り込んだガチ勢ではないのだが、そこそこのダートが楽しめるうえにスクランブラーとしてのビンテージスタイルは本格的という、なかなか面白いポジションにおさまっている。