【brand pickup】
アドベンチャーバイクが世界的なブームになっているが、そのヘルメット選びはなかなかに難しい。
というのも、アドベンチャーバイクは“高速走行をはじめとするツーリングが楽”で、しかも“オフロード走行も可能”なバイクである。当然、ヘルメットにもこれらの要素が求められるのだが、なかなかその二つの要素をきちんと両立できるヘルメットがないのだ。
第一にツーリングが快適なヘルメットとなると“シールド付き”であることは高速道路走行を行う上で必須条件。その一方で運動量の多いオフロード走行となると、チンガードを前方に尖らせて空気の流入量を大きくしたい。オフロードヘルメット特有の前方に尖ったデザインは息が上がったときに呼吸をしやすくするためのものなのだ。
だが、このオフロード用ヘルメット特有の尖ったデザインとシールドの相性が非常に悪い。快適な視界を得るには極力シールドに歪みがない方がいいのだが、チンガード部分を尖らせるとどうしてもシールドの形状が複雑になり、視界の歪みが発生しやすいのだ。
さてLS2で人気となっているシールド付きオフロードヘルメットのエクスプローラーFは、このあたりの使い勝手はどうだろうか? 今回は高速走行、オフロード走行、雨天走行でじっくり試してみよう!
メーカー: LS2 HELMETS
品名: EXPLORER F
価格: ¥37,260円~38,470円(税込)
COLOR: 37,260円:ブラック、ホワイト/38,470円:フロンティアブラックブルー、マットブラックホワイト、マットブラックオレンジ、カモチタニウムグリーン
SIZE: S(55-56㎝)、M(57-58㎝)、L(59-60㎝)、XL(61-62㎝)、XXL(63-64㎝)
WEIGHT:S(1685 ± 50g)、M(1770 ± 50g)、L(1710 ± 50g)、XL(1815 ± 50g)、XXL(1815 ± 50g)
エクスプローラーFは高速走行も快適!
強い走行風を受けて走る高速道路走行において目を守り、視界を確保するシールドの存在は絶対条件であるが、エクスプローラーFを使ってみて驚いたのは視界の歪みの少なさだ。
通常、この手のシールド付きのオフロードヘルメットは前方に突き出させたチンガードのおかげでシールドの形状が複雑になり、多かれ少なかれ視界に歪みが出る。しかし、エクスプローラーFは、しっかりとチンガードを前方に飛び出させたオフロードテイストあふれるデザインを採用しているのに視界の歪みが極端に少く快適なのだ。
またオフロード系のヘルメットで気になるのはバイザーの風の抵抗の受け具合や左右への帽体の振られ具合。エクスプローラーFは時速120㎞レベルで走行しても妙なフレを起こすこともなく、風切り音もバイザー付きオフロードヘルメットとしては許容範囲なレベル。手動3段階の調整が可能なバイザーも走行風で動いてしまうなんてこともなかった。
このほかツーリングで使いやすい機能が凝縮されているのも気に入った。
まずインナーバイザー。スモークタイプのインナーバイザーが標準装備されており、走行中もヘルメット左側のスライドスイッチで簡単に出し入れ可能。西日が気になる時などはすぐさまインナーバイザーが下せて非常に便利。またUVカット加工も施されており、日差しが強い夏場などは、このインナーバイザーで目を守るだけで大きな疲労軽減になるだろう。
また、アゴ紐にはラチェットバックル式を採用しており、差し込むだけの簡単装着なのはもちろん、脱ぐ場合にはマグネット留めされているタブを引っ張れば簡単に外すことができるのでとても楽。ラチェットシステムとは別に、Dリングも装備しており車体のヘルメットホルダーが使えるようになっているのもいい。
今回は高速走行にあたってBluetoothインカムも装着してみたが、内部にはスピーカーを収めるための凹みが設けられており、内装も取り外しが可能なのでインカムの装着作業は簡単だった。実際の使用に関しても、インナーバイザー操作のためのスライドスイッチを避けてインカム本体を少々前気味に取り付けるくらいで、特にBluetoothインカム使用に関しては支障は感じなかった。
オフロード走行ではインナーバイザーがとにかく便利!
シールド付きオフロードヘルメットでオフロード走行をする場合、どうしても呼吸のしやすさや内部の曇りを避けるために、走行中はヘルメットのシールドを上げたくなるもの。ただそこで気になるのは目の露出だ。
林道では道に小枝が飛び出していたり、虫が飛んでいたり……。また仲間と走るような場合は前走車の跳ね上げた小石が飛んでくることもある。林道ツーリングでは何らかの目の防御を行いたいのだが、そんな場合にスライド式のインナーバイザーが便利だったのだ。
シールドと違い密閉されないので呼吸の妨げにならず、それでいて目のまわりをしっかりガード。標準設定されているスモークシールドだとちょっと日影などでは視界が暗くて見にくくなるが、なんとエクスプローラーFのアクセサリーパーツにはクリアタイプのインナーシールド(2,200円/税込)も用意されている。
またチンガード部分はしっかり張り出しているために、息が上がるようなオフロード走行時にも息苦しさを感じることはなく、速度をあげれば各部のベンチレーションの効果もしっかり体感できた。
またオフロード走行を頻繁にする場合に地味に気になるのが、内装を取り外して洗濯可能かどうか? エクスプローラーFの内装は、チークパットやヘッドパッドはもちろん、チンストラップカバーやチンシャッターを含めて全て取り外して洗うことができる。大量の発汗を伴うオフロード走行で使うなら非常に嬉しい機能だ。
雨天は標準装備のピンロックシートで曇りにくく快適!
今回は、たまたまだが雨天時の走行もできたのでその様子も少し書いておこう。何より書くべきはやはりピンロックシートのことだろう。一般的なヘルメットではオプション扱いとなることが多いピンロックシートが、エクスプローラーFに関しては1枚標準装備品として付属している。
このピンロックシートは、シールドの内側に貼り付けることでシールド内側の曇りを防いてくれるアイテム。とくに雨天走行時や発汗後の走行などでは、ヘルメット内部がムレやすく非常にシールドは曇りやすくなるというわけだが、税込価格が4万円(¥37,260円~38,470円)を切りながら、ピンロックシートが付属しているとはなかなかびっくり!
また防水性に関しても、しっかりシールドを閉めたときの密閉性が高いおかげで走行中に内部に水が入り込んでくるようなことはなかった。確かに、信号待ちなど停止ている状態でひどい雨に見舞われたような場合は、シールドとパッキンの隙間から若干の浸水が認められたが、これもピンロックシートがあったおかげで内部の曇りを気にせず完全にシールド閉められていたからこそである。エクスプローラーFとなら雨天も快適に走ることができるというわけだ。
このシールド付きオフロードヘルメットがこの価格で、インナーバイザー、ピンロックシート、そしてヘルメット袋&バッグが付属するならお買い得! ツーリングメインで時々オフロードするようなライダーにとって、LS2のエクスプローラーFは価格と性能面でのバランスが非常にいいヘルメットになっている。
文:谷田貝 洋暁
写真:南 孝幸/谷田貝 洋暁