オフロード走行にこだわるイタリアのバイクメーカーファンティック。軽量な21インチホイールのフルサイズトレールバイクのラインナップがXEFシリーズだ。今回は、50㏄、125cc、250㏄と3つの排気量タイプから、車検のない250ccクラスの『XEF250トレイル』をピックアップ。実際にオフロードでも走らせてみた!
FANTIC XEF250トレイル
<SPEC>
●全長2100㎜/全幅865㎜/全高1240㎜/
●ホイールベース1420㎜
●シート高915㎜
●車重122㎏(ガソリン除く)
●水冷4サイクル単気筒SOHC4バルブ 249.6㏄、21.5PS/8750rpm、18.6Nm/6750rpm
●変速機6段リターン
●燃料タンク容量7.5ℓ
●ブレーキF/R=ディスク
●タイヤF=90/90-21 R=120/90-18
●ボディカラー:イエロー/レッド
●価格:990,000円(税込)
ABSのないオフロードモデル
ご存知のとおり、排気量125cc以上のバイクは2021年10月より継続生産車(新型車は2018年10月生産分から)から、ABS装着が義務付けられている。
軽さが求められるオフロードバイクとはいえABS装着義務の例外ではない。それにテールスライドによる方向転換などを積極的に行なうオフロード走行においてABSは、その動きを阻害するような働きをする。しかも、そんな無用な機能にも関わらず、装着すればさらに価格がアップしてしまう。そんな流れもあって市場からは、WR250R、KLX250が消え、セロー250もついにファイナルエディション。現在国内モデルでは、ABSの装着義務に対応したCRF250シリーズとKLX230が残るのみとなっている。
…と、ここでファンティックのXEF250トレイルを見てみるとABSが付いてない! いったいどういうことだろう?
何事にも例外があるものだ。ナンバー付きモデルにおけるABSの装着義務化にも、実はエンデューロレーサーとトライアル車はABS付けなくてもOKという但し書きがある。トライアル車の説明は省くが、エンデューロレーサーの条件を箇条書きにすると、
①シート高900㎜以上。
②最低地上高310㎜以上。
③高めの減速比。
④車両重量140kg以下。
⑤1人乗り仕様であること。
…という条件を全て満たすとエンデューロバイクと認められ、ABSを装着していなくても公道走行が可能。つまりはこの要件を満たすことでXEF250トレイルはABSを装着しない状態でナンバーを取得し、公道走行が可能となっている。
XEF250トレイルは扱いやすくて乗りやすい!
ただこんなことを書いてしまうと、XEF250トレイルがエンデューロバイクというイメージが付いてしまいそうだがそうじゃない。あくまでエンデューロレーサーの要件で作ったトレールモデルというのが正しい表現となる。そして、それこそがXEF250トレイルというマシンの最大の魅力の根幹となっているのだ。
際立つのはやはり圧倒的な軽さだ。装備重量122kgの車体はトレールモデルとしては軽い部類に入る。まぁ、1人乗り専用として割り切って作るのだから剛性確保などの面からも軽量化できるのは当たり前なのだが、走ってみれば一般的なトレールモデルにはない走りの軽快感がある。
だからこそボディアクションに対してマシンが素直に反応するし、それにバランスを崩した際のリカバリーもかなりやりやすくなる。スロットルコントロールなどでのフロントアップといったアクションもしやすいと感じる。今回はガレ場も走ってみたが、岩にリヤタイヤを弾かれてもボディアクション一つで抑え込める感覚は、トレールマシンというよりはエンデューロマシンのそれに近い。やはりオフロードバイクにおいて軽さは正義なのだ。
XEF250トレイルはシートこそ高いが軽いので気にならない
915㎜のシート高は、両足を着こうとするとかなり高く感じるが、車体がスリムで硬いのでちょっと腰をずらせば片足をしっかりと支えられる。なので足つきに対する不安は感じなかった。また、またがって感じるのはその軽さからくる扱いやすさ。それにしっかりハンドルが切れてくれるおかげで小回りが効く。しかもエンジン特性にレーサーのような扱いにくさはなく、しっかりと低速トルクも確保されているので、エンストもしにくい。
ライダーの身長は172cm、体重75㎏。シート高は915㎜と高めだが、カスタムで30㎜ほどシート高を落とすことも簡単にできるという。スタイリングこそ戦闘的で、なんだかとんでもなく速そうなイメージを受けるが、乗ってみると非常に扱いやすい。エンジンパワーも扱いやすいので、フロントアップなどのオフロードバイクならではのアクションを体得するのにちょうどいいだろう。
高速走行も可能なXEF250トレイル
しかも、このXEF250トレイルのすごいところは高速道路もなんとか走れてしまうことだ。メーター読みで120km/hまでは普通に加速。流石にエンジンパワー的に余裕あるとは言えないし、振動もあって快適ではないが、それでも流れに乗って高速道路を走ることができる。少なくとも“怖くてアクセルが開けられない!”なんてことはないので、高速道路を使っての林道ツーリングに出かけることも可能だ。
軽く、オフロードで扱いやすくて、高速道路走行も可能。しかも、トレールマシンとしてしっかり耐久性も確保しているから、普段使いだってできる。純粋なオフロード走行を楽しむなら、このくらい割り切ったキャラクターのマシンの方が絶対楽しいぞ!
FANTIC XEF250トレイルのディティール
文/写真:谷田貝 洋暁