イタリアの老舗ブランド・FANTIC(ファンティック)がリリースしている、キャバレロ・スクランブラー500。ストリートからダートまで走れるスクランブラーだが、高い走行性能を持つためサーキットでも楽しめるという。実際にサーキットで試乗し、その場で購入を決定したというプロショップ・Trentasette37の塙代表にプロ目線での話をうかがった。
ストリートからダートまで、道を選ばず走れる本格スクランブラーモデル
スクランブラーとは、ストリートからダートまで、道を選ばずに幅広いフィールドを自由に走れるバイクのこと。元々はオフロードバイクが生まれる以前に、オンロードバイクをベースに未舗装路を走れるようアップハンドルやアップマフラー、ブロックタイヤなどを装着したバイクのことを「スクランブラー」と呼んでいた。その後、本格的なオフロードバイクが発売されると一度は影を潜めたが、近年再びフォーカスされ始め、多くのメーカーから「スクランブラー」の名を冠したモデルが登場した。
ただ昔とは少し意味合いが異なり、現代の多くのスクランブラーは走行性能よりもレトロな雰囲気を楽しむモデルが多い印象。そんな中、1968年にイタリアで創業した老舗ブランド・FANTIC(ファンティック)がリリースするキャバレロ スクランブラー500は違った。
スタイリングだけじゃなく、本格スクランブラーとしての高い走行性能も追求。倒立フォークを支えるステムやスイングアームピボットに高品質かつ高剛性なアルミ削り出しパーツを使うなど、細部にまでこだわり、ストリートからダートまで高い走行性能を発揮するモデルに仕上がっているのだ。
デビューから5年が経過しているが、まったく古さを感じさせないのは、優れたイタリアン・デザインと高品質なパーツ群、そして高い走行性能が見事にバランスしているからだろう。
FANTICのスクランブラーは、サーキットを軽快に駆け抜ける走行性能も持つ
高い走行性能を持つことで定評があるファンティック キャバレロ スクランブラー500だが、ファンティックの販売総代理店であるMOTORISTS(モータリスト:東京大田区)の野口代表によると、それでサーキット走行を楽しんでいる人がいるという。その言葉に興味が湧き、さっそくその人がインストラクターとして参加しているサーキット走行会に行ってみた。
フルカウルのスーパースポーツにあふれているサーキットのパドックにたたずむキャバレロ スクランブラー500は、ちょっと場違いな雰囲気。ところがコースインした姿を見てビックリ!
かなりのハイペースでストレートを駆け抜け、コーナーでは深くバンクしてヒザを擦りながら曲がっていくではないか。ハイパワーのスーパースポーツモデルについていくどころか、コーナーでは軽さを活かして前に出ていくほどなのだ。
確かにライダーの技量が高いということもあるのだが、キャバレロ スクランブラー500がそれに応えるだけの性能を持っていることにも驚かされる。
元国際A級ライダーが一目惚れしたキャバレロ スクランブラー500の走行性能
コースでキャバレロ スクランブラー500を走らせていたのは、神奈川県川崎市にあるプロショップ・Trentasette37の代表、塙さんだ。
塙さんは18歳のとき友人に誘われてレースを始めた。125ccクラスで経験を重ね、ヤマハ系のチームに入ると当時盛り上がっていたF3(2スト250ccと4スト400ccで競うクラス)にTZR250やFZR400RRなどで参戦した。その後SP750、TT-F1など国内での最高峰クラスを走り、鈴鹿8時間耐久ロードレースも3回走った経験を持っている。
レース引退後は自動車整備の仕事を経て、海外ブランドの高級バイクを中心に取り扱うバイクショップに就職。十数年務めたあとにDUCATIやMVアグスタ、ビモータなどを取り扱うプロショップとして独立した。昨年屋号をTrentasette37(トレンタセッテ37)として、多くのユーザーから信頼を得ながら活動している。
塙さんとFANTICの出会いは筑波サーキット。ちょうど街乗りバイクを探していた塙さんの目に止まったのが、走行会に出展していたモータリストのテント前にあったキャバレロ スクランブラー500だった。
「カッコいいバイクだなと思って、コースで試乗させてもらったんです」
するとノーマルサスペンション+ブロックタイヤ(PIRELLI SCORPION RALLY STR)なのに、ハイスピードでも挙動が安定していて、バランスが良い。ハードブレーキングでもサスペンションが底付きすることなく、想像以上に楽しく走れることに驚いたという。
塙さんはモータリストの出展ブースに戻ってくると「これ買います」とその場で購入を決定。モータリストの担当者はかなり驚いた顔をしていたそうだ。
ほどなくして塙さんのショップはFANTICの正規ディーラーとなり、キャバレロ シリーズの取り扱いを始めたという。
これはバイクの本質を知っている人が生み出したスクランブラーだ。
プロライダーとしての経歴を持つ塙さんは、バイクの挙動に対する感受性がかなり高い。本人は謙遜するが、数々のレーシングマシンをセットアップしてきた経験を持つのだから、当然のことだろう。その豊富な経験からキャバレロ スクランブラー500について伺うと
「このバイクを設計した人は、相当バイクに対しての知見が深い人だと思います」
という。そう感じた理由を詳しく聞くと
「ステムやスイングアームピボットがアルミの削り出しでできている。一部の老舗メーカーも取る手法ですが、その部分を強化すると車体の剛性は高くなる反面、タイヤの接地感が希薄になったり曲がらないバイクになってしまうことが多いんです」
「ところがキャバレロは違う。不自然さは一切なく、軽快なハンドリングなんです。恐らくメインフレームやスイングアームなどの剛性バランスが絶妙で、要所をしならせることで自然なハンドリングを実現しているんだと思います」
それらのことからキャバレロ スクランブラーの設計者や、まとめ上げたテストライダーはかなりレベルが高い人だと感じているという。
「素晴らしいハンドリングと、ビッグシングル特有のパンチのあるエンジン特性を持っている。だから購入から5年経っていますが、今でも乗っていて楽しいと感じるんです」
と笑顔で答えてくれた。
プロショップが手を入れたキャバレロ スクランブラー500
普段の街乗りのみならず、サーキット走行会などでインストラクターとして走るときにも使用している塙さんのキャバレロ スクランブラー500を紹介しよう。
カスタムのテスト車としての役割もあるため色々と手を入れているが、車体や前後サスペンションなどの基本は購入時のまま。基本設計が優秀な証拠だといえよう。
CABALLERO SCRAMBLER 500 SPECIFICATION
エンジン形式:水冷4ストローク単気筒 SOHC4バルブ
排気量:449cc
ボア×ストローク:94.5×64mm
最高出力:40HP/7500rpm
最大トルク:43Nm/6000rpm
始動方式:セル式
変速機:6速
フレーム:クロームモリブデン鋼 セントラルチューブフレーム
ブレーキ(F):φ320mmディスクブレーキ
ブレーキ(R):φ230mmディスクブレーキ
ABS:2チャンネルABS (ABSカット機能付き)
サスペンション(F):FANTIC FRS φ41mm 倒立フォーク
サスペンション(R):FANTIC FRS プリロード調整可能
サスペンション ストローク(F/R):150/150mm
全長:2166mm
全幅:820mm
全高:1135mm
シート高:820mm
ホイールベース:1425mm
タイヤ(F/R):110/80-19 / 140/80-17
車両重量:150kg
タンク容量:12L
カラー:レッド/イエロー
メーカー希望 小売価格(消費税込):1,190,000円
【問い合わせ】
モータリスト合同会社
TEL:03-3731-2388
URL:https://motorists.jp