イタリアで1968年に生まれたファンティック。70年代にはモトクロスなどのレースに参戦を開始。現代のキャバレロスクランブラーのイメージカラーであるレッドタンクとイエローゼッケンという組み合わせはこの頃からの系譜であり、その後トライアル界などにも進出して活躍することになる。
2014にリスタートをきることになった新生ファンティック。現在はコアブランドのキャバレロシリーズと、プレミアムトレールのエンデューロ&モタードシリーズの2系統が主力商品となっている。
今回は、125/500の排気量に加え、6バージョンあるキャバレロシリーズの中から、最もキャバレロらしいキャラクターが味わえるスクランブラー500をピックアップ。オンロードセクションとオフロードセクションの両方のインプレッションをお届けしよう。
試乗・文:谷田貝 洋暁
写真:川崎裕貴/谷田貝 洋暁
ファンティック・キャバレロ スクランブラー500のスタイリング
FANTIC キャバレロ スクランブラー500
<SPEC>
●全長2166㎜/全幅820㎜/全高1135㎜
●ホイールベース1425㎜
●シート高820㎜
●車重150㎏(装備)
●水冷4ストSOHC単気筒 449cc、40HP/7500rpm 43Nm/6000rpm
●変速機6段リターン
●燃料タンク容量12ℓ
●ブレーキF/R=ディスク
●タイヤF=110/80-19 R=140/80-17
●ボディカラー:イエロー、レッド
●価格:1,190,000円/Deluxe:1,300,000万円(税込)
●モータリスト合同会社●https://motorists.jp●03-3731-2388
ワインディングから旅で楽しめるビッグシングルのキャバレロスクランブラー500
エンジンをかけてまず驚くのは、水冷4スト449cc単気筒が発する強烈な鼓動感だ。ひと昔前はSR500やSRX600といったビッグシングルのラインナップもあったが、それももう90年代のこと。現代においてキャバレロシリーズようなビックシングルらしい、エンジンの燃焼がダイレクトに味わえるようなモデルは他にない。
しかも、このキャバレロシリーズに搭載される449cc単気筒のエンジンは、最高出力が40HP/7500rpmで、最大トルクが43Nm/6000rpm。最高出力と最大トルクともに、割と低めの回転数で発揮する中低回転域重視の仕様となっている。常用域でスロットルを開ければ、地面を蹴り上げて進むような加速が存分に楽しめるのだ。
この鼓動感が強めのエンジンキャラクターのおかげでワインディングの走りがとても楽しい。ビッグシングルらしい強烈なトルクに強めのエンジンブレーキのおかげで、走りにものすごくメリハリを効かせられる。
また巡航走行も飽きることがない。このビッグシングルの鼓動感のおかげで高速道路を使って遠くへ行くような走りも実に楽しい。ちょっとした加速や追い越しでも、粒感の際立った鼓動感が味わえて飽きることがないのだ。
バイクらしいエンジンの鼓動を感じたいなら、ファンティックのキャバレロスクランブラー500ほど最適なモデルもないというわけだ。
キャバレロスクランブラー500はもちろんオフロード走行も得意!
ファンティックのキャバレロスクランブラーのすごいところは、単なるスタイルだけで見掛け倒しの“ビンテージオフロード風”バイクではないってところだ。
近年のスクランブラーブームで似たような“ビンテージオフロード風”のマシンはたくさんあるものの、本格的なダート走行性能に拘ったモデルはあまりない。ファンティックはかつてモトクロスやトライアルといったオフロード部門の競技にも盛んだったメーカーであり、生半可なバイクは出せないということだろう。
カジュアルなウエアの似合うスクランブラースタイルは見かけ倒しではなく、しっかりオフロード走行もできてしまうのだ。
しかも、フロント21インチサイズのトレールバイクとも、最近流行りのアドベンチャーモデルとも違う独特なオフロード走行ができるのが面白い。
車体はアドベンチャーバイクほど重くはないものの、トレールバイクよりがフレーム周りの剛性は高め。そこに449cc単気筒のエンジンの強烈なトルクが組み合わせたことで、スロットル操作一つで路面をかきむしりながら前へ進むような迫力あるダート走行が楽しめる。
世の中にある見掛け倒しのスクランブラーモデルとは違い、キャバレロスクランブラー500は、きちんと“ダートを楽しめる”スクランブラーに仕上がっている。
スタイリングはビンテージオフロード風のスクランブラースタイルながら、日本のダート林道くらいならなんなく走れてしまうキャバレロスクランブラー500は、オンロードもオフロードも楽しめる真のスクランブラーといっていいだろう。
キャバレロスクランブラー500の足つき性
シート高820㎜とスクランブラー属としてはやや高めでサイド回しのエキゾーストパイプのため車幅はそれなりにあるが、単気筒のスリムな車体のおかげで身長:172cm 75kgの筆者の体格だと踵が数cm浮く程度。上半身のポジションもアップライトで普段使いからツーリングまで使いやすく、膝の曲がりもキツくない。