JD-STERの第3戦、ある歴史的なマシンがコースを疾走した。
ブルーとイエローでペイントされたことからも分かるとおりモリワキのマシンだ。
1979年、1980年シーズンのイギリス選手権やAMA・F1クラスなどで活躍した伝説のレーシングマシンで、〝モリワキ・モンスター〟と呼ばれている。
モリワキとTT-F1
モリワキ・モンスターを語る上で外せないのが、『TT-F1』というかつて存在していたレースカテゴリーだ。
これは市販車をベースとするが、フレームには材質も含めて変更可能というもの。
エンジンはクランクケースやシリンダーヘッドにベース市販車用を使う規定があるが、スーパーバイクと比べても改造範囲はかなり広いものだった。
そのため、独創的なレーシングマシンが多数生まれたのもこの頃だ。
ビモータ、モトマーチン、ニコバッカー、マーニといった名前をご存知だろうか。これらはコンストラクター(ビルダーとも言われ同義)と呼ばれ、レースで走るマシンをトータルで制作するメーカーのこと。今回JDスターで走ったモリワキもコンストラクターという立ち位置だ。
特にフレーム制作が有名で、1981年のTTーF1にモリワキがアルミフレームを持ち込み、多くのコンストラクターの度肝を抜いたのは有名な話。当時の市販車は鉄フレームで、アルミフレームは世界GPマシンが採用していただけ。ワークスマシンと互角の性能のマシンを次々と作り出していった。
なお、MotoGPマシンの最新技術を投入したロードゴーイングレーサーとして話題を集めた「RC213V-S」のフレーム生産はモリワキが担当している。
いかに高い技術を持っているコンストラクターか理解いただけることだろう。
なおこのフルカウルのモリワキ・モンスターはアルミフレームを採用する前のもの。
フレームはクロームモリブデン鋼で製作したオリジナルだ。
故・真田哲道氏が駆ったZ1-Rタンク仕様
もう一台のネイキッドスタイルの車両は、故・真田哲道氏(ワークス主宰)が駆ったZ1-Rタンク仕様のモリワキ・モンスターだ。
真田氏が8耐で実際に走らせたマシンで、排気量は998ccと当時のレギュレーションに合致したもの。
キャブレター以外は全て当時のもので、フロントサスも本物のモリワキカヤバだ。
炎天下の中8時間走らなければならない過酷なレースで持たせるため、最高出力はあえて100馬力に抑えられている。