バイクを新車で購入したときには必ず「初回点検」を受けるようにバイクショップから言われるものです。通常、点検は一年ごとにおこなうものですが、初回点検はより短いスパンでおこなわれます。新車であれば不具合は少ないはずなのに、なぜ頻繁に点検しなければならないのか。
そんな疑問をもつライダーに、バイクの初回点検は、なぜあれほどにも早いタイミングで実施されるのかを解説します。
多くのバイクの初回点検の目安(期間、走行距離)
新車のバイクはキズ一つ無い綺麗な状態です。眺めるだけでも満足感の高い魅力的な1台ですが、新車バイクを購入した時は、必ず初回点検が必要です。
バイクは安全な運行のために定期的な点検を必要としていますが、その定期点検とは別に、新車購入からすぐの時期に受ける点検が初回点検です。なお、初回点検が必要なのは新車購入の場合のみであり、中古でバイクを購入したときには初回点検は不要です。
バイクの初回点検の目安は新車購入からの期間、もしくは走行距離で決められており、国内メーカーのバイクでは「新車納車から1ヶ月」もしくは「走行距離1,000km」を超えたときに受けるようにバイクショップから言われます。
初回点検は12ヶ月点検のような法定点検とは異なり、法的に定められているわけではありませんが、バイクの寿命に影響する重要な点検となります。
また国内メーカー4社(ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキ)や、いくつかの海外メーカーのバイクは初回点検が無料となっており、点検費用はメーカーが負担してくれるので、受けない理由はありません。
購入後すぐに初回点検が必要な理由
工業製品は劣化していくため、新車のバイクは購入直後がもっとも良い状態のはずなのですが、それでも初回点検が必要な理由には次のようなものがあります。
初期不良の発見と対応
初回点検をメーカーが無償で行う理由の1つは、新車バイクの初期不良に対応するためです。バイクは設計段階で充分な信頼性と耐久性を与えられ、それを実験確認で確かめることで安全で高い性能のバイクに仕上がっています。
新車購入直後はすべての部品が新品で耐久性があり、故障が最も少ない時期といえるのですが、一方でバイクが量産の工業品である限り、生産時には多少品質がバラつく可能性が常にあります。
バイクを慣らし運転の期間走らせると、部品取り付けボルト、ナットの振動での緩みや、異常振動、異音の発生など、生産工場では起こらなかった問題が起こる可能性があります。
初回点検によってこれらの初期不良が発見されれば直ちに対応、修理が行われますので、初回点検以降は安心してバイクに乗ることができます。
エンジン内部の金属片の除去
新車のバイクはエンジンも当然新品ですが、新品のエンジンには「慣らし」が必要です。慣らしは新車のバイクや車などでよく言われるものですが、漠然とした慣らしではなく特にエンジン内部の状態を最適化することを指しています。
エンジン内部は数多くの部品が往復、回転、摺動など激しく動作していますが、その際に細かい金属片が発生します。走っているうちに部品同士の角が取れて良好な状態に自然に落ち着くのですが、その過程で新品のエンジンからは金属片が多く発生します。
発生した金属粉はエンジン内部のエンジンオイルで回収され、オイルパンなどにたまっていきますので、初回点検時にオイル交換によって金属粉を除去することも目的の一つになっています。
初回点検で見られることが多い項目
初回点検で見られることの多い項目は次の5つとなっており、バイクの主要部分をチェックしてくれます。
エンジン
エンジン点検ではアイドリングの回転数の確認やエンジン各所の動作状況がチェックされ、吹け上がりの状態や異常な振動、異音がないかも確認されます。燃料漏れやオイル漏れ、冷却水の確認なども行われ、各所の固定ネジの緩みも確認されます。
そしてエンジンオイル交換およびオイルフィルターの交換も初回点検に含まれており、エンジンなどからの金属粉やスラッジ、汚れなどを除去するために行われます。
クラッチまわり
クラッチまわりは主にクラッチレバーの遊びや伝達ワイヤーのキズなどがチェックされ、クラッチが適切なタイミングでリリースされているかなども確認されます。また、油圧クラッチの場合はクラッチのフルードの量などもチェックされます。
ほかにもエンジンを始動させた状態で、クラッチ部分からの異音がないかもチェックされ、調整なども含まれます。
チェーンまわり
チェーンまわりは、ギアボックスから後輪まで動力を伝達するチェーンの伸びの確認や、チェーンの汚れの洗浄などを行います。
またチェーンに回転を伝えている、スプロケットの異常な摩耗や破損がないのかも確認されます。
ブレーキまわり
ブレーキまわりのチェックではバイクが正常に制動出来ているかを確認され、ブレーキパッドの摩耗具合やブレーキレバー、ブレーキペダルの遊びなどの確認、調整を行います。
また油圧ブレーキの場合には、ブレーキフルードの減りや汚れ具合もチェックされ、不足している場合には調整やブレーキフルードの補充を行います。
ホイールまわり
ホイールまわりでは、ホイール自体に異常な歪みがないかをチェックします。ホイールだけでなく、タイヤにも問題になりそうな傷がないか、摩耗具合は正常か、異常な摩耗はないかを確認されます。
またホイールがワイヤースポークの場合には、スポークのニップルの緩みや、ホイールのバランス取り調整なども行います。
タイヤやホイールのチェックと調整が終了したら、タイヤの空気圧を調整して完了となります。
まとめ
バイクの初回点検は新車のバイクを良好な状態に保つために必要な点検で、エンジンの慣らしや初期不良の発見、調整などを行うことで長いバイクの寿命をより高めてくれるものです。
初回点検は、多くの場合工賃無償で行ってもらえますので、間違いなく受けるようにしましょう。