大型バイクから原付まで、どんなバイクでも遭遇する可能性がある雨。ツーリングや通勤の途中に雨が降ってくると、ゆううつな気分でレインコートを羽織らされることになります。
一口にレインコートといっても数千円の汎用タイプから、一万円以上するバイク専用モデルまでさまざま。
多くのライダーにとって「できれば使いたくないモノ」であるレインコート、高級なバイク専用品を買うかどうかってちょっと悩みませんか?
僕はずっとワークマンのレインコートを使っていて「バイク専用品ってどれくらい違うの?」と思っていたのですが、ちょうど梅雨時だし編集部に提案してみたらメーカーさんからお借りできることになりました。
実際に雨の中を走り回って防水性能や快適性をチェックしてみましたので、ぜひレインウェア選びの参考にしてみてください。
今回比較する3つのレインコート
今回は僕が普段使っているワークマンの汎用レインコートと、メーカーさんからお借りしたバイク用レインコートの3種類を比較してみました。
ワークマン:透湿レインスーツSTRETCH(ストレッチ) | RSタイチ:DRYMASTER レインスーツ | フラッグシップ:イノベーティブストレッチレインスーツ |
耐水圧10,000mm:透湿性5,000g/㎡-24h | 耐水圧20,000mm:透湿性10,000g/㎡-24h | 耐水圧20,000mm:透湿性10,000g/㎡-24h |
4,900円(ワークマンオンラインストア) | 16,280円(公式サイト) | 15,180円(公式サイト) |
僕が普段使っているワークマンのレインスーツはバイク向けとはっきり書いてはありませんが、雨の日にバイクで使っている人を見かけることも多いロングセラー商品。
割とリーズナブルな価格でガンガン使いやすいため、バッグやメットインにいつも忍ばせておいて、急な雨に対応する感じで使っています。
ただしバイク専用モデルではないため、ツーリング先で雨に見舞われて長時間走行すると体が濡れることも多く「バイク用レインコート欲しいなぁ」と思っていましたが、結構価格差があるのでずっと手を出せずに来てしまいました(笑)
今回お借りしたRSタイチとフラッグシップのレインスーツはバイク専用品。耐水圧や浸透性といった数値上の性能や細かい部分の作り込みの違いが結構ありますので、実際に雨の日の路上でそれぞれ使ってみて、差額分の性能差や使い勝手の良さがあるのかどうかチェックしてみてたいと思います。
実際の走行シーンで防水性能をチェック
細かい部分は後半チェックするとして、まずは実際の雨の日に走り回りながら一番気になる防水性能を確認してみましょう。
まず準備として、僕が普段乗っているXMAX250のウインドスクリーンを外して、上半身はほぼネイキッド状態でたっぷり雨風がかかるようにしました(笑)
この状態で通勤を想定して1時間、さらにツーリングシーンを想定してプラス1時間、雨の路上を走り込んでみます。レインコートの下に水漏れが分かりやすいグレーのTシャツを着るという原始的な方法で、防水性能をチェックしてみました。
走行時間は揃えていますが、雨の量や風向きには多少のばらつきがあるため、あくまで「今回はこうなった」という目安にしていただければ幸いです。
まず僕が普段使っているワークマンレインコートから。
1時間走行後。ちょっと首回りにポツポツと雨漏れが見られますが、ファスナー部分を含めて概ねドライ状態をキープできています。
2時間走行後は、かなり浸水が発生して走行中も明らかに体が濡れていることが分かりました。ファスナー中心に首回り、お腹周りに雨漏れが発生しています。時間が経ってレインコート表面の撥水効果が弱ってくると波打ったファスナー付近に水が溜まりやすくなり、そこから浸水してくるパターンです。多少の経年劣化はあると思いますが、購入直後に行った雨中ロングツーリングの時から同じような濡れ方でした。
続いてRSタイチのドライマスターをテストしてみます。
1時間走行後。さすがバイク専用モデルだけあって浸水は全く見られません。
2時間走行後は、お腹周辺のファスナーから若干の浸水が見られましたが、水量はかなり少なく抑えられています。走行中に浸水してきた感触はなく、脱いでみて初めて気づいた感じですね。ドライマスターの走行中はかなり風が強かったため、フラップのすき間から雨が少しずつ入ってきたのかもしれません。
最後にフラッグシップのイノベーティブストレッチレインスーツです。
1時間走行後。レインコートを脱いだ時の水はねで少し濡らしてしまいましたが、基本的には浸水はありませんでした。こちらもさすがバイク専用モデルといった感じですね。
2時間走行後。首回りのファスナー部のみ若干の水漏れが見られました。フラッグシップのレインスーツは首回りが若干広めで、ヘルメットから落ちた水滴が首から入った感触がありました。ただし、2時間走りっぱなしだったことを考えると全体的な防水性能は高いといえるでしょう。
ちなみに今回テストした3モデルとも、ずっとシートと密着しているお尻周辺は時間経過とともにじわっと浸水がありました。各モデルとも防水処理はしてあるのですが、股周辺の浸水を完全に防ぐのは難しいようです。
各部詳細と使い勝手をチェック
それぞれのレインスーツの細かい部分の造りを、実際に使ってみた感想とともにお伝えします。
透湿レインスーツSTRETCH(ストレッチ)
ワークンの透湿レインスーツSTRETCHは全体的に細身のデザインで、僕的にはちょっとコンビニに寄るといったシーンでも気兼ねしにくいです。結構ストレッチが効くので、動きにくさやきゅうくつな感じもありません。
防水性能に大きく影響する前合わせ部は、止水ジッパーと内部のフラップという組み合わせ。小雨で1時間程度の走行だと結構雨を防いでくれますが、外側のフラップがないため走行時間が増えるとどうしても浸水しやすくなります。ここはバイク専用品と結構差が大きい部分だと感じました。
両サイドと胸元に合計3つのポケットがあり、それぞれフラップや止水ジップで防水加工されています。小銭や鍵など濡れても困らないアイテムを収納する場所には困りません。
裏地はツルツルした素材で、透湿性に関係なく肌触りはペタッとした印象のため、僕はあまり半袖Tシャツに直接は着たくない感じですね。布地のつなぎ目は防水テープで処理されています。
裾のドローコードや腕やボディの絞りはなく、袖口のみ調整可能です。全体的に細身なので一般道ではそれほどバタつきは気になりませんが、この辺りもバイク専用品との差が見られる部分です。
ズボンはお尻側のつなぎ目をなくして防水処理にすることで浸水を減らす工夫がされています。ただし、ずっとシートに押し付けられている部分なので時間が経つとじわっと浸水するのは避けられません。
ズボンのすそはボタンで絞ることができますが、調整幅が決まっているのでシューズやブーツのサイズによっては使いにくいケースもありそうです。ズボンも比較的細身なので、僕は走行時にバタつきを感じたことはありません。
DRYMASTER レインスーツ
今回試着した中で、RSタイチのDRYMASTER レインスーツは一番ゆったりしたサイズ感でしたが、カラーリングやデザインのおかげなのかダボっとした印象は受けませんでした。個人的には一番「プロっぽい」デザインかなと感じました。
前合わせ部分は雨返しが付いたダブルフラップでしっかり作り込まれています。大きめのファスナー金具も操作しやすくてgood。面ファスナーで襟を無段階調整できるため、首にピッタリフィットできるのもライダー向けに細かく作り込まれている部分だと感じました。
表側のポケットは右下に一か所。雨を防ぐフラップはありますが水抜き穴もあるので、濡れても困らないものを入れる場所ですね。
さらに内ポケットもついていますが、防水ファスナーではないのでここも濡れたら困るものは避けたがほうが良さそうです。落としたら困る物を入れる場所としては良いかもしれません。裏地は全面メッシュ仕上げになっていて、半そでTシャツの上に羽織ってもサラッとした着心地でした。
裾は左右二カ所にドローコードがあり、身体のサイズにあわせてバタつきを防げます。
腰と袖も面ファスナーでアジャスト可能。幹線道路や高速道路を走るときにはかなり重宝しそうです。
背中には常時開放の大きなベンチレーションがついています。外気と直接つながるので、かなりムレの軽減に役立ちそうです。
ズボンも裏地は全面メッシュになっています。ちょっと見えにくいですがお尻部分の縫い目を減らし、防水テープされているところは他のモデルと同じ仕上げです。
ズボンのすそは反射板のついた面ファスナーで絞り込めます。全開にするとかなり広がるので、大きめのライディングブーツにも対応できそうです。
イノベーティブストレッチレインスーツ
フラッグシップのイノベーティブストレッチレインスーツは比較的細身のシルエットですが、ストレッチが効いていて動きにくさはありません。今回お借りしたライトストリークカラーは、落ち着いたイメージでちょっとコンビニなどにも立ち寄りやすいイメージです。
二重構造のフロントフラップで、やはりバイク専用品ならではの作り込みといった感じです。襟もライディングを想定して高く作ってあるのですが、絞り調整がついていないので少しヘルメットからの雨だれを感じるシーンがありました。雨風はしっかりと防いでくれます。
ポケットは左右2か所で、雨返しと落下防止のベルクロがついています。
3つの生地を貼り合わせた3レイヤー生地で、メッシュはありませんが裏地はサラッとした触り心地でぺたぺたとした不快感はありません。今回試着したモデルの中では一番生地がしっかりしていますが、厚くて重たい印象はありません。縫い合わせ面やミシン目は防水テープでしっかり処理されています。
左右の袖に調整フラップ、腰回りにはありませんが、比較的細身のシルエットなので幹線道路を走ってもそれほどバタつきは気になりませんでした。
裾のドローコードは左側の一か所のみで、全体を調整する方式です。
バイク向けモデルらしく、背中は全面ベンチレーション付きで快適性を確保しています。
フードは脱着式。走行中は外しておいてヘルメットを脱ぐときだけフードをかぶるなど、シーンに応じて使い分けできます。
ズボンは他モデルと同じように、お尻側の縫い目をなくして防水テープ処理されています。
裾のアジャストフラップは調整幅が広く、シューズを選ぶことはなさそう。
結論:バイク用レインコートは必要なのか?
今回はワークマンのアウトドア用レインコートと、2つのバイク用レインコートを比較しました。
実際に使ってみたうえでの僕の結論を一言でまとめると、ツーリング中の雨などで1時間以上走る可能性があるなら、バイク用レインコートがおすすめです。
小雨~普通の雨量で1時間以内の通勤・通学レベルなら、僕が使っているような汎用レインコートでも大きな不満が出ることは少ないと思います。ただし遠方ツーリング中の雨など、長時間走行する場合は汎用レインコートだと結構身体が濡れる可能性が高いです。
バイク用レインコートは耐水圧の高さやフラップ構造などが汎用モデルと違い、長時間走行での浸水具合がかなり変わってきます。生地の浸透性やベンチレーションなどのムレ耐性、調整によるフィッティングなど快適性も踏まえると、長時間走行時の疲れ具合も軽減してくれそうです。体を濡らさないことは体力の温存にもつながりますので、安全面で考えてもバイク用レインコートの方がおすすめ。
もちろん予算が許すのであれば、たとえ走行時間が短い通勤・通学でもバイク用レインコートがおすすめなのは間違いありません。2着購入する余裕があれば、短い通勤は安い汎用レインコートを使い、ツーリング時はバイク用レインコートを携帯するといった使い分けも良いですね。
ご自身の利用シーンに合わせたレインコートを選んで、雨の日も安全・快適にバイクライフを楽しみましょう。