みなさんこんにちは。
今回は「ジャケットの仕様とその理由 、使い方」についてご説明したいと思います。
前回は素材と形について説明しましたが、
ライディングジャケットを細かくジャンル分けすると、かなりの種類になってしまいます。
そこで今回は、一般的なライディングジャケットの中でも、
これからの季節に丁度いい『防水仕様』と『暑さ対策仕様』のジャケットに焦点を合わせたいと思います。
防水仕様のジャケットの種類は?
初めに『防水仕様』についてご紹介しましょう。
防水の方法には主に二つあります。
① アウター側で浸水を防ぐ
② インナー側で浸水を防ぐ (ライナー防水・フィルム防水)
同じ防水でも浸水の防ぎ方・仕様が異なります。
アウター側で浸水を防ぐ
弊社の防水仕様は①の主に『アウター側』で防ぐ方法をとっています。
生地そのものも防水性のある、主にナイロン生地を使用し、
表面は撥水加工、裏地にPU加工(ポリウレタン加工)と呼ばれるコーティングをします。
それによって、浸水を防止する訳ですね。
生地の縫製部分の防水はどうしているの?
でも縫製した(生地を縫い合わせ)部分はどうやって浸水を防ぐの?となりますよね。
どうやって水を防いでいるかと言うと、縫製した部分をシーム(防水テープ)加工しているのです。
シーム加工とは?
シーム加工とは、防水テープを熱圧着、または高周波で目止めする事を言います。
ジャケットの裏地を割いて見てみましょう
透明なテープが見えますか?これがシームです。
テントなんかもこうした方法で浸水を防いでいるのです。
昔からある方法で最もポピュラーな仕様です。
インナー側で浸水を防ぐ
インナー側で浸水を防ぐライナー防水は、写真の白いビニールのようなものを使用しています。
縫い合わせを目止めする事なく 表生地と裏生地の間に入れて防水をする訳です。
浸水しやすいポケット、ベンチレーション部分の防水は?
ライディングジャケットを防水仕様にするためには、これだけでは終わりません!
ファスナー部分やポケット部分、またはベンチレーションをどう防水するかが大切なんです。
最も定番なフロントファスナーの防水方法
前立てにフラップを付けてフタをする仕様(わかりやすい様にレインジャケットを使用)。
ファスナー自体を防水仕様にする
もう一つの防水方法は、ファスナー自体を止水ファスナーと呼ばれる防水ファスナーにする方法です。
ポケットの防水の仕方は主にこの二つのやり方です。
防水ジャケットの現在
以上、防水ジャケットの作りをご紹介しましたが、防水仕様にするためには非常に手間がかかります。
そのためどうしても通常のライディングジャケットに比べて高額になってしまいます。
作る側としても いつも腐心するところです……。
私がこの仕事を始めた頃は、春夏用でも防水ナイロンジャケットが何種類かありましたが、
年を追うごとに型数が減っていきました。
防水ジャケットは、夜のツーリング、長距離高速ツーリングは重宝するのですが、
それ以上に近年の暑さがそれを凌駕してしまっています!! (笑)
真夏の夜ですら、ナイロンジャケットを着るのがおっくうになるくらいの気温の高さ……。
完全に温暖化の影響で……あ、違う話になりそうなのでこの辺で戻します。
なので 弊社では秋冬ものに防水ジャケットを作り、春先には綿入りのインナージャケットを取って着ていただくモデルのみとなってしまいました。
これも時代の流れですね……。
暑さ対策のジャケットの種類は?
さて次に暑さ対策のライディングジャケットの種類を紹介しましょう。
メッシュジャケット
先程の暑さ対策から生まれたバイクジャケット。
それが非防水の代表格『メッシュジャケット』です。
メッシュ生地といっても、薄手の物から厚手生地、ストレッチする生地、さらには、織り目が細かかったり粗かったりと、それぞれ生地の特性によって着心地が違います。
基本防水にならない理由は生地構成として『編み』だからです
ちなみに防水のナイロン生地は『織り』。
編み物と織物の違いですね。
関東地方では5月半ばを過ぎれば、普通に使用できる頃になると思います。
防風インナー付きメッシュジャケット
日中と夜間の寒暖差が激しい春先。
そんな時期に重宝するのが『防風インナー付きメッシュジャケット』です。
内側にナイロン製の防風インナーが装備されているものです。
ちなみにこのモデルはファスナーで脱着します。
インナー自体は薄い物ですが、寒い時、風を防ぐだけでかなりの効果があります!!
長時間風に当たっていると体温が低下し、運動能力や意識の低下を招いてしまいます。
風を防ぐことはとても重要なことなんです。
一口でメッシュジャケットといっても色々ありますので、
自分の使用する季節、用途に合わせて選んで頂ければと思います。
快適な環境で楽しくライディングをするために
雨や暑さといった天候や気候状況は、どのようなジャケットを着たらいいのかライダーの頭を悩ませる問題です。
ですが、そんな天候や気候に対応したライディングジャケットを着ることで、
憂鬱な気分や不快な気持ちを軽くできます。
ちまたにはライディングジャケットの代わりとして一見使えそうなものもありますが、
やはり専用に作られたライディングジャケットの快適性には遠く及びません。
濡れない、暑くない、たったこれだけのことですが、
急な雨で焦ることがなくなり、半袖で乗るような怪我のリスクを回避できます。
ジャケットを着用しても不快な思いをしないから、ライディングにも集中できます。
安全に気持ちよくバイクをライディングするためにも、
『防水仕様』と『暑さ対策』のジャケットはそれぞれ揃えた置きたいライディングギアなのです。
【FlagShip・フラッグシップ】
オートバイ専用のジャケット、パンツ、グローブなどのウエア類からバッグ、アクセサリーまで幅広くライディングギアをラインナップしているFlagShip(フラッグシップ)。 エルフ(ELF)の日本正規販売元オフィシャルメーカーでもある。
【執筆者・FlagShip企画室 上野時夫】
ライディングジャケットはもちろん、バイクでライディングする時に使用するギアに至るあらゆるものの企画を担当。素材から製造まで幅広い知識をもつ。
初めてのバイクは国産アメリカン。そこからなぜか旧車に目覚めAT90なる1965年生の90cc2サイクル2気筒の謎なバイク(音が最高でした……)を所有経験あり。その他にも色々乗り、大型自動二輪免許を取得してからはアメリカンに再び戻りハーレー・ダヴィッドソンを経て、これまた何故かオフロードに目覚める。現在WR250Rとカブを所有。
フラッグシップ・ライディングギア・ラボラトリー【ウエア・素材編】 皆様こんにちは。オートバイアパレルメーカー・FlagShip(フラッグシップ)の上野です。ここでは作り手として感じてることをシリーズでお話できればいいと思っておりま…