「バンバン」は、スズキのレジャーバイクに受け継がれてきた由緒正しい車名です。これまで派生モデルや復刻モデルを合わせて5種類が発売されました。車名の由来は「バンバン走るからバンバン」。ラッシャー木村(プロレスラー)に似ている元板前だから「ラッシャー板前」と同じ、たけし軍団のノリでネーミングされました。スズキらしさが溢れる「バンバンシリーズ」を深掘りします。
ホンダ・ダックスの背中を追って「バンバン」誕生!
国産レジャーバイクの歴史は、1967年に発売された「ホンダ モンキー」から始まりました。1969年に発売された「ダックス ホンダ」は、胴長なスタイルに走破性が高い極太タイヤを装着。モンキーとは異なる方向性で人気を博しました。
ライバル各社も指をくわえて見ていたわけではありません。バイク業界は仁義なきパクリ合い。スズキは1971年に「バンバン90」を発売しました。胴長なスタイルに走破性が高い極太タイヤを装着するなど、見た目もソックリ。バイクに詳しくない人なら間違って買ってしまいそうです。
我が世の春を謳歌しすぎて自分を見失う
1972年に、ヤマハから「GT50・80(ミニトレ)」も発売され、レジャーバイクは三つ巴のカオスな状態になります。スズキは相乗効果による人気にニンマリし、1972年に125ccと50cc、1973年には75ccと、派生モデルを発売しました。バンバン90のキャッチコピーは「新しい世界を見つけよう」でしたが、バンバン75は「地球に乗るならバンバン」と意味不明。バンバン50に至っては、花柄シート仕様を発売するなど、明後日の方向に向かいました。
ヤマハ・TWで蘇ったアンデット「バンバン200」
1970年代に息絶えたバンバンでしたが、2002年にアンデットのように復活しました。排気量はバンバン史上最大の200ccにアップ。かつて2サイクルだったエンジンは4サイクルに改められました。
2000年にグラストラッカーを発売していたにもかかわらず、似たようなモデルを発売したのは、ヤマハTWが発端となったストリートバイクの市場拡大が狙いだったと思われます。しかしブームが下火になり、「バンバン」と数多く鉄砲を撃っても当たることはありませんでした。
バンバン200を取り巻く現状
取材に協力いただいたショップのバンバン200は、オレンジの車体にサビはなく、センス良くカスタムされています。ダートモデルのジェベル200やDF200に用いられていたエンジンを減速比を変えて搭載。排気量199cc・空冷4スト単気筒・最高出力16馬力。街乗りに最適なスペックです。
社外メーターに交換されているので実装距離はわかりませんが、オドメーターは約3500㎞でストップ。シートもシックなデザインに交換されるなど、隅々に手が入れられています。
すぐ売れても不思議ではないですが、不人気車の悲しい定め。スタッフに聞くと、入荷してから5年もこの場所に佇んでいるそうです。中古車ながら販売価格は新車当時と同じ約30万円。きれいなオレンジの車体に興味を持つ人は多いものの、購入までには至らないそう。あと10万円プライスダウンしたら即売でしょうね。由緒ある車名が寂しそうでした。
実のところバンバン200は、まじめに作られたバイクだと思います。足つきも良く、大型バイクを持て余してしまうシニア層におすすめ。スズキは胸を張ってアピールしてもよかったと思います。
なんだかんだと言いながら、ブームが終了した後も15年間に渡って生産され続けたのちに、2017年9月に再び長い眠りについたゾンビのようなバンバン200。今度は30年後に「バンバン400」として復活を果たすかも知れません。その時にモトメガネが存在し、私も生きていたらレポートさせてください。