楽しみにしていたツーリングが雨天のため中止……という経験をしたライダーは多いのではないでしょうか。またツーリング中に、急な天候の変化で通り雨に打たれるなど、厳しい状況に遭遇したライダーも少なくないはず。6月といえば梅雨シーズン到来ということで、雨天時のライディングで注意すべき点について見直していきましょう。
雨の中のライディングでは「急」な操作を避ける
常日頃からバイクに乗るライダーの皆様には釈迦に説法とは思いますが、雨の日の濡れた路面における「急発進&急加速」「急ブレーキ」「急ハンドル」等、タイヤに急に力がかかる操作は絶対に避けましょう。タイヤがグリップを失う「臨海点」を超えないように意識し、感情に任せず、冷静で慎重なライディングを心がけるようにしましょう。
走行速度と信号が変わるタイミング
信号機の青色、黄色、赤色のサイクルは、制限速度や法定速度を守って走行することによって、青信号で通過、もしくは十分な余裕をもってブレーキ操作ができるように設定されています。
しかしタイミングによっては、交差点に近づいているときに信号の色が黄信号に変わる場合もあります。その場合は安全に停止できるかどうか判断に迷う場合がありますが、雨で路面が濡れている場合はタイヤのグリップ力が低くなってしまうため、停止するために必要な距離が伸びると同時に、転倒リスクを避けるために急なブレーキ操作もできません。
状況別にあわせた判断力
①市街地を走行する場合
市街地はインフラ設備が整っているため、雨に濡れるとタイヤが滑りやすくなるマンホールやグレーチング等が多いため、特に注意しなければなりません。これらの危険を避けながら運転することが理想なのはもちろんですが、やむを得ず通らなければならない場合もあります。その場合でも落ち着いて以下の点を意識しましょう。
・進入角が直角になるよう車体を立てる
・フロントブレーキの扱いに注意
・慎重なスロットル操作
これらを意識しつつ、さらに車体の傾斜を少なくすることが「タイヤのすべり対策」になります。
ただし、市街地等は他の自動車などの交通に対しても注意すべき点が数多くあります。雨による水たまりはもちろん、道路と同じ色のマンホールなどは発見が遅れやすい傾向になります。他の自動車などを避けた際にマンホール上を走ってしまうことも十分考えられます。
タイヤが滑って危険な状態になってしまう前に、車間距離をしっかりととり、いつも以上に周囲の状況に気を配って不慮のアクシデントに注意したいですね。
②ツーリングルートを走行する場合
雨天時とはいえ、ワインディング走行ではある程度の速度を維持しなければなりません。そのため、路面状況や視界が悪い場合は、「落石」や「橋の継ぎ目」など障害物への対処が遅れやすい状況になるので、慎重に運転することが求められます。
対処法としては、あえて自分の走行位置を「走行車線のやや左寄り」にすることで、
① 状況認知を「おおむね正面に限定」できる。
②走行位置の「安全 or 危険」を判断しやすい。
③操作は「進むか右に寄る」の二択になる。
・・・というように、「運転の三要素」をあえて限定する、つまり判断し易くすることでパニックブレーキ等の予防につなげます。
「これが最適解だ!」というわけではありませんが、私自身が普段行っている方法をご紹介させていただきました。
ウェット路面のブレーキ操作法
降水量、道路の勾配、ライダー経験により異なりますが、マシンの性能やライダーの技量に関係なく「滑りやすい条件」であることは明白なので、参考になれば幸いです。
①車体は垂直に保つ
車体が傾いている場合にブレーキ操作を行うと、タイヤが滑り転倒の可能性が高くなります。横方向への負荷には注意しましょう。
したがって、減速する場合は車体を垂直状態にし、接地摩擦が発生する方向に気をつけながら車体の安定を図るようにしましょう。
②「後輪ブレーキ」のコントロール
ウェット路面はドライ路面ほどフロントブレーキに頼る制動ができないので、「多少滑ってもコントロールできる」後輪ブレーキ強めの操作がおすすめです。
また、後続車へ減速を知らせる手段の一つでもある、ブレーキ操作を数回に分けて行う「制度予告」という方法があります。
後続車に対し制動予告ができるよう、ゆとりと余裕をもって運転しましょう。
③加速と駆動輪
「スローイン・ファーストアウト」という、カーブを曲がる際のテクニックをご存じかと思いますが、雨天時の加速と減速の操作は、特に慎重に行わなけばなりません。
① 適切なブレーキングを行い
② 加速区間到達まで待つ
③ リアタイヤの方向を意識し加速する
駆動輪である後車輪が進行方向に向いていないにもかかわらずスロットル操作を行った場合、進行方向でない方向へ進んでしまうので危険。加速するタイミングは間違えないようにしましょう。
アウト・イン・アウトは使いかた次第
これは主にサーキットを走行する際に、効率よく速く走るための走行位置の取り方ですが、サーキットの様な法則性がない一般公道においては、カーブへの進入方法を誤るかもしれません。
したがって「パニックブレーキ」などによりスリップ事故に繋がりやすく大変危険です。特に雨天時はブレーキを効かせられないため、操作ミスによるオーバーランやガードレール等への激突を絶対に避けなければなりません。
まとめ
今回は雨天時のライディングについていくつかご紹介しましたが、雨に見舞われた際は、操作方法に気をつけるのはもちろん、状況に応じた判断力も必要となることを知っておきましょう。