バイクは風を直接受けるため、寒さを感じやすい乗り物だ。冬場の走行では体温が奪われやすく、手足が冷たくなり操作がしにくくなることも。寒さを甘く見ていると、楽しいツーリングがつらい体験になりかねない。だからこそバイクに乗る際の防寒対策は重要だが、意外にも防寒対策を十分にしていないライダーが多く存在する。この記事では、その理由と防寒対策について考察する。
なぜバイクライダーは防寒対策を怠るのか?
「自然を肌で感じたい」という思い
そもそもバイクは剥き身の体で乗るノリモノであることから、自然環境の影響をダイレクトに受けやすい。度が過ぎる暑さ・寒さや、走行することが怖くなってしまう程の風の影響を受けたくないなら、普通にクルマに乗ればいいのである。それでもバイク乗りがバイクに乗るのは、むしろ、そういった自然環境の変化を肌で感じたいという思いが根底にあるからだ。
夏は暑いし冬は寒い、だがそれが良い。そう考えているバイク乗りにとって、せっかく「寒い」を感じ取る「チャンス」に、それを過度に軽減するのも少し抵抗を感じてしまう。もちろん、さすがに冬場はそれなりの対策は行う。しかし、あまりに対策しすぎることは、バイクに乗る意義を損ねてしまうため、防寒対策をあまり行わない、つまり対策が甘くなってしまう傾向があるのだ。
「ワイルド=気合と根性⇒かっこいい」という思想
バイクは非常にワイルドな乗り物だというイメージを持つ人は多いだろう。実際、この「ワイルドさ」が「かっこいい」と憧れて、バイク乗りになったというライダーも多い。そんなワイルドなバイクに乗る自分も、もちろんワイルドでなくてはならない。このワイルドさを大切にするあまり、バイク乗りはついつい「ワイルド」=「気合と根性」で困難を乗り切ろうとしてしまうのだ。
「冬場の寒さという困難」も、気合と根性で乗り切る対象だ。このようなバイク乗りは、冬場でも「出来る限り薄着」で走行することを美徳としており、防寒対策をあえて行っていないのだ。もちろん「気合と根性」で乗り切ろうとしているので、やっぱり寒いし、やせ我慢してバイクに乗っていることは否めない。しかし、その寒さの中を「少し涼しいかな」くらいの表情でバイクを駆ることがワイルドであり、かっこいいと考えているのだ。
「この程度の服装でも大丈夫」という楽観性
防寒対策をする際、あまりに厚手のものを着てしまうと、体の可動域が狭まりバイクの運転の邪魔になる場合がある。また、発熱アイテムを装備する場合、電源の確保をしたり、時には発熱アイテムの断線が発生してしまったりなど、わりと面倒だ。そのため、バイク乗りは「ま、大丈夫だろう」という楽観的な判断により、防寒対策を怠ってツーリングに出かけてしまう場合がある。
冬場でも短距離なら「持ってくれよ……俺の身体!作戦」で走るライダーも多い。しかしこの現象がもっとも多い季節は、春と秋である。冬でなければ「この程度の服装でも大丈夫」という誤った判断をしてしまい、結果、峠の上などで激しく後悔するバイク乗りが後を絶たない。驚くべきことに、バイク乗りはこの過ちを、何度も繰り返してしまうのだ。光に向かって飛ぶ虫のように、バイク乗りは、微妙な季節であっても出来る限りの薄着で、標高の高い峠や山に向かってツーリングに出かけてしまうのだ。
バイクに乗るとどれくらい寒いか
冬のバイクは想像以上に寒い。手の感覚が無くなるレベルだ。さらに走行風が身体の熱を奪うため、あっという間に身体が冷え切ってしまう。仮に気温が10℃あったとしても、風速20m/sの場合の体感温度はマイナス10℃と言われている。まさに「走り出したら凍るくらい寒い」状態だ。
また、走行風は想像以上に体温を奪う。衣服の隙間から風が侵入することで、実際の気温よりも寒さを感じる。バイクに乗る際は、風を通しにくいものを選ばないと、冬場でなくとも想像以上に寒いことがあるので、注意が必要だ。
寒さがもたらす健康やライディングへの影響
寒さは、手足の震えや、冷え込みによる痛みなどを引き起こす。酷くなると低体温症になるリスクもある。また寒さは、集中力の低下による判断ミスや、手足がかじかむことでの運転ミスを誘発する。バイク乗りの安全を脅かすため、防寒対策をしっかり行おう。
効果的な防寒アイテム
上半身の防寒アイテム
冬場や肌寒い日には、上半身の服装、ジャケット、インナー、グローブを冬季仕様を選んで走行しよう。ジャケットは、防風性、防水性、透湿性に優れたものを選び、インナーウェアには汗冷えを防ぐ吸汗速乾性のあるものを選ぼう。冬用グローブは生地が厚く動かしにくいので、滑り止め加工が施されていると操作面で安心できる。またインナーグローブも寒さには有効だ。
下半身の防寒アイテム
下半身の防寒にはパンツ、オーバーパンツ、ブーツが重要です。パンツはジャケットと同じく、防風性、防水性、透湿性に優れたものを選ぶ。オーバーパンツは重ね着して防寒効果を高めよう。ブーツは、防水性、保温性のあるものを。また、つま先が冷えやすい場合はソックスを2〜3枚重ねて着用するのも有効だ。
電熱ウェアの選び方
人気の電熱ウェアはバッテリーで発熱する仕組みになっており、従来の防寒着よりも効果的な防寒対策となりうる。電熱ウェアを選ぶ際は、発熱温度や発熱部位、バッテリーの持続時間などをしっかり確認しておこう。最近は安価なモデルから高性能なものまで幅広くラインナップされているが、価格だけで判断すせず、自分のライディングを考慮して、最適なものを選ぶように心がけよう。
バイクに装備する防寒アイテム
グリップヒーター
グリップヒーターはハンドルグリップが電気で発熱し、手を温めることができるアイテムだ。温度調節機能が付いているのが一般的で、手先の冷えを抑えることができる。純正オプションとしてラインナップされている場合がありますが、後付けタイプの製品も豊富。
フェアリング・ウィンドシールド
フェアリングやウィンドシールドは走行風を遮ってくれるので、体温が奪われることを抑えることができる。フェアリング・ウィンドシールドは、ともに車体前面に装着する風除けカバーと言える。また、防風だけでなく空力的な効果もあり、走行時の安定性も向上させる効果がある。
ハンドルカバー
ハンドルカバーは、文字通りハンドル周りをまるごと覆って風や雨から手を守る。様々な素材やデザインのものがあるが、「かっこ悪い」という意見が多いため、「俺の考えた最高にかっこいいバイク」派のライダーには敬遠される傾向がある。しかし、実はハンドルカバーの防寒効果は非常に高いので、プライドを捨ててでも装着することをお勧めしたい。
まとめ
冬のバイクに乗る際は適切な防寒対策をすることが重要だ。また、特別なアイテムを揃えるだけでなく、日常のちょっとした工夫でも防寒対策ができる。例えば、外出前や休憩時に温かい飲み物を飲んだり、走行前にストレッチして身体を温めるのもおすすめだ。ちょっとしたもので首からの風の侵入を防いだり、重ね着したりなど、簡単なことで防寒対策を行うこともできる。
適切な防寒対策は、快適性や操作性を向上させる。防寒対策をしっかりとして、冬や寒い日のバイクライディングを満喫しよう。