新型コロナウイルスの影響で2年ぶりの開催となった日本最大級のカスタムカー&バイクショー「30th Anniversary YOKOHAMA HOT ROD CUSTOM SHOW 2021」。会場となったパシフィコ横浜には1万人をゆうに超えるオーディエンスが集結。外出制限が叫ばれる状況下を鑑みた主催のムーンアイズは、入場券への連絡先の記入/マスクの着用/入場前の検温とアルコール消毒と、厳戒態勢での実施を敢行しました。
ホットロッドカスタムショーの目玉コンテンツである海外の大物カスタムビルダーとその作品(カスタムカー&バイク)の来日は叶わず、また国内カスタムショップやベンダーの一部も出展を控えるなど、年々ファンを増やしていたこれまでの同ショーは、コロナ禍での影響を受ける形での ややサイズを絞った開催となりました。それでもあのパシフィコ横浜全面を使い切るスケールの大きさは健在で、開催を待ち望んだオーディエンスが生み出す賑やかさがホットロッドカスタムショーならではの明るい息吹を吹き込んでくれていました。
そんなホットロッドカスタムショーをトピックごとにチェック! 会場の雰囲気を存分に楽しんだ人はもちろん、残念ながら今回参加を見送った人には来年への参加のモチベーションとしていただくべく、レポートをお届けします! 存分に胸焼けしていってください!
YOKOHAMA HOT ROD CUSTOM SHOW 2021 レポート
出展ブースをカテゴライズすると、「カスタムカー」「カスタムバイク」「バイクメーカー」「ベンダー(物販)」に分けられるホットロッドカスタムショー。バイクメディアであるモトメガネではバイク部門にフォーカスしてご紹介します。
メーカーブースも多数出展
メーカーブースは4つ、ハーレーダビッドソンジャパン、BMWモトラッドジャパン、インディアンジャパン、キャバレロが出展。
ハーレーダビッドソンジャパン
ハーレーダビッドソンジャパンのブースでは、話題の最新モデル・スポーツスターSと1957年式 XL と 新旧スポーツスターが並び立ち、スポーツスターの歴史をパネルで見せるスポーツスター尽くしな一角に。さらに最後のラバーマウント スポーツスターとなる限定1300台「フォーティーエイト ファイナルエディション」がこのショーで発表されました。
BMWモトラッドジャパン
R nineTカスタムプロジェクトやCUSTOM WORKS ZONによるR 18 カスタムプロジェクトなど、近年カスタムバイク分野で話題を集めるBMW。今年はムーンアイズのピンストライパー ワイルドマン石井さんとペイントファクトリー Glanz(グランツ)によるオリジナルペイントで彩ったR 18 クラシックを展示。さらに往年の名モデル R80G/S をインスパイアした R nineT Urban G/S も合わせて展示。ハーレージャパンのブースと並び立って存在感を放っていました。
インディアン
名だたるカスタムショップに囲まれるようにそびえ立つインディアンジャパンのブースは、人気モデルをずらりと揃えつつ、ホットドッグカスタムサイクルズやチーターカスタムサイクルズ、アスタリスクといったショップが作ったフラットトラックグループ「HAVE FUN!!」と並ぶブース位置で、チーターによるカスタムモデル FTR1200s も展示。
キャバレロ
イタリアのバイクメーカー・キャバレロは人気のスクランブラーを中心に出展。インディアンのブースと「HAVE FUN!!」を挟む形で、ダートトラッカーの世界を演出するコーナーを形成していました。
『仮面ライダー BLACK SUN』公式バイク「バトルホッパー」が展示
仮面ライダー生誕50周年を記念して立ち上がった 名作「仮面ライダー BLACK」のリメイク版「仮面ライダー BLACK SUN」に登場するバトルホッパーがホットロッドカスタムショーにて展示。この一台はBMW R nineTカスタムプロジェクトやハーレーダビッドソン・ストリート750カスタムプロジェクトにも携わった屈指のカスタムショップ「Cherry’s Company」(チェリーズカンパニー)が依頼を受けて制作。
まずはマシンのディテールカットとスタイリングを大きな写真でご覧ください。
近代のプロモーションだと、メーカーからの車両提供を受けてカスタムするケースが多いが、公式でメーカーが関わっていないことから、選ばれた車両がホンダの旧車 CB750Fというところが この一台を味わい深いものにしています。
1987〜1988年に放映された「仮面ライダー BLACK」に登場したバトルホッパーは、スズキ・AR125というオフロードバイクをベースにした その名の通りホッパーだったわけですが、2021年に蘇ったバトルホッパーはカフェレーサーという点も興味深いところ。都会を駆け抜けるシーンがあるのでしょうか、そんなイメージが膨らみます。
「仮面ライダー」という強烈なキャラクターを備えつつも、チェリーズカンパニーならではのメタルワークによる流麗なシルエットはビルダー黒須嘉一郎さんの手腕に他なりません。細部にまでこだわる同ショップだからこその造形美があらゆるディテールから感じ取れる一台です。新しい仮面ライダーの疾走シーンが今から楽しみです。
UNBELIEVABLE JAPANESE CHOPPERS
チョッパーカスタムやディガースタイルなど、毎年テーマのあるコーナーを設けるホットロッドカスタムショー。今年のテーマは「UNBELIEVABLE JAPANESE CHOPPERS」。国産メーカー車チョッパーカスタム展!
展示車両は先ごろレポートしたカスタムバイク60台一気見にてお見せ中です!
ベンダーブース
カスタムシーンをこよなく愛するファンにとって、日本中の人気アパレルブランドが集結するホットロッドカスタムショーのベンダーブースは垂涎の的。コロナ禍ゆえ出展ブースの数は例年より少なかったですが、それでもオーディエンスの多くがお財布握りしめて物販エリアを行き来していました。
初のコラボ!崎陽軒 x ムーンアイズ シウマイ弁当
今年のホットロッドカスタムショーでは、意外にも初となるコラボが実現。横浜名物である崎陽軒と主催のムーンアイズがタッグを組み、会場内でコラボ弁当が販売されたのです。
ピックアップ!カスタムバイク
展示されたどのカスタムバイクも魅力的で 絞るのが難しいのですが、皆さんにぜひ見て欲しい珠玉のカスタムバイクをご紹介します。
神奈川・川崎に居を構える人気カスタムショップ HIDE MOTORCYCLE、通称ヒデモはリジッドショベルを投入。ヒデモの真骨頂たるナロースタイルが特徴的な一台。ロングフォークチョッパーながら、フロント19/リア16インチの純正ホイールとビッグツインのダブルブレーキングシステムを備える 走りをとことん楽しめるショベルなのです。これ乗ったら絶対楽しいやつ。
ハーレーダビッドソン・ストリート750カスタムプロジェクトにも加わった京都のカスタムショップ LUCK MOTORCYCLEは王道を貫くかのようなメタルワークが冴えるメタリックチョッパーを持ち込みました。フレームまでメッキ仕様とすることでギラつき具合が最大化。エンジン周りの彫刻は東京の人気ショップで懇意にお付き合いされているチーター大沢さんによるもの。完成度の高さにため息が出ます。
LUCKと同じく京都を拠点とするHOT CHOP SPEED SHOPは、これまでさまざまなカスタムショーでアワードに輝いた実力者。ショベルヘッドをベースにスキニーなスプリンガーチョッパーがここに爆誕。ハンドルバーやリアエンドのフレームなど、随所にねじれ加工が施されたパーツが顔を覗かせ、グラフィックは全体的にインパクト強めながらそのスタイリングは鉄板チョッパーという一台です。
屏風に甲冑という和風テイストな演出でマシンを彩ったのは、BMW R 18 カスタムプロジェクトで世界の注目を集めた滋賀のCUSTOM WORKS ZON。同ショップお得意のボディメイクが独創的で唯一無二のスタイリングを生み出しています。スクエアヘッドライトが備わるオリジナルのガーターフォーク、実はヘッドライトの裏側にサスペンションが仕込まれている特注品なんです。こちらもまた、ただ造形美を追求しただけでなく高いライディングパフォーマンスをも兼ね備えたマシンなのです。
アメリカのスピードアタックレース「ボンネビル・ソルトフラッツ」にかつて挑んだ神戸のカスタムショップ SHIUN CRAFT WORKS(シウンクラフトワークス)は2台のショベルヘッドとともに参戦。その一台”SWEET MIX”を「カスタムの道を研鑽して30年、酸いも甘いも知るビルダーとして、その甘い部分だけお客さんに堪能してもらいたい。そんな思いを込めた一台」と代表の松村友章さんは語ってくれました。ロングスプリンガーにインベーダーホイール、隙のないフレームワークとシウンらしさが滲み出るオレンジ x パープルのフレイムグラフィック、スエードが仕込まれたキング&クイーンシート……甘いとこだらけの一台です。
スタイリングの美しさが際立つショベルヘッド・ドラッガーは広島のカスタムショップ SATOMARI MOTOR CYCLEによるもの。フロントブレーキを備えない23インチというフロントホイールから成るスーサイドスタイルの存在感もさることながら、メタリックとパープルという絶妙なコントラストを意識したカラーリングが、無駄のないボディラインに彩りを与えています。この妖艶なセンスに脱帽です。
2017年、2018年とホットロッドショーで連覇を達成した広島の平和モーターサイクル、今年のマシンはトライアンフ T150。前後ホイールをファットタイヤと組み合わせることで真っ黒に統一しつつ、平和MCらしいスタイリングでまとめたなかで、一層際立つ3発エンジンのエキゾーストパイプ。ダークなマシンとのコントラストか、ポリッシュ仕上げのエンジンが主張してくるような一台です。フロントヘッドからリアエンドにかけてのシルエットの美しさたるや、さすがと唸らされます。
BEST of Show | SURE SHOT ハーレーダビッドソン 1997 FXDL “DST”
個性的な出展バイクのなかから BEST of Show | 最優秀カスタムバイクに選ばれたのは、千葉・八街のカスタムショップ SURE SHOT(シュアショット)のフルスクラッチ・ローライダー! 一昨年の王者が連覇達成です!
無駄を削ぎ落としたロー&ロングスタイルの流麗さに異論を持つ方はいないでしょう。フロント19/リア16というハーレーダビッドソンのマナーとも言えるサイズをオリジナルホイールで表現する心憎さ。そしてこのマシン、ここからさらに深く潜っていくのです。この写真で「ん?」と気づいたあなたは間違いなく変態玄人です。
そう、ベース車両がツインショックフレームのダイナ・ローライダーにもかかわらず、独自のリジッドフレームへと生まれ変わらせているため、1960年代以前のリジッドチョッパーのようなスタイルを形成できているのです。
いずれの細部も煮詰められているのですが、なかでも一際目を引くのが、フューエルタンクとシートの間から覗くサスペンション。ハーレーの他 さまざまなメーカーバイクのサスペンションを手がける大阪のレーシングブロスの協力により実現したこのマシン専用の駆動システム。ベースはダイナフレームとしながら、リジッドのシルエットを実現しつつも高いライディングパフォーマンスを併せ持つマシンとすべく、独自設計のスイングアームを開発し、この高性能サスペンションでダイナフレームと接続して組み上げたと言います。チョッパーとレーサー、両方のカルチャーが組み合わさったSURE SHOTにしか生み出せない渾身の一台と言っていいでしょう。BEST of Show受賞も納得です。
「カスタムに不向きだと言われる無骨なダイナフレームに挑戦したかった」と語るのは、SURE SHOT代表の相川拓也さん。ショーの直前まで徹夜続きで間に合わせた一台は、まさに彼をはじめとするスタッフや協力者の賜物と言える完成度。日本のハーレーカスタムの真骨頂を見せつけられた思いです。Congratulation!
まとめ | ホットロッドカスタムショー2021開催の意義
30周年を迎えた YOKOHAMA HOT ROD CUSTOM SHOW。私も通算10度目の取材参加となり、近年のカスタムブームとシンクロするかのように 年々ファンと規模を拡大してきた同ショーを現場で見続けた者(大御所の皆様にとっては大した年月ではございませんが)として、”人を集めてはいけない”新型コロナウイルスの影響が計り知れないものだったことを今年のショーで痛感しました。ビジネス面においても主催のムーンアイズにとって昨年の開催中止は苦渋の決断だったに違いありません。
海外ゲストの来日が不可になり、これまでとは打って変わってスモール開催となることが予想されていたはず。そのなかで開催を決定したムーンアイズには感謝の意を表したいです。毎年1万人以上のオーディエンスで賑わうホットロッドカスタムショーですから、感染動向次第で中止という可能性も消えないなかでの実施は勇気のいる決断だったはず。ただでさえ世間から厳しい目で見られがちなイベントなだけに、この状況下で何か問題でも起これば、それこそ今後二度と開催できなくなることも有り得ます。厳戒態勢とするのはもちろんながら、世界が注目する日本のカスタムシーンの火を灯し続けようと開催を決意し、開催に漕ぎつけた主催者に心からの賛辞をお贈りします。
世界中を飲み込んだパンデミックが今後どのように状況を変えていくか想像もつきませんが、カスタムカルチャーをこよなく愛する人たちが笑顔で集える YOKOHAMA HOT ROD CUSTOM SHOW がまた来年、再来年と開催されることを願って病みません。