「このバイクは重い」「軽いぞ!このバイク!」という感覚は、概ね現在乗っているバイクを基準にして判断しているのかもしれません。何台か乗り継いだライダーであれば、そのような重量の違いに覚えがあると思います。
大型=上級者 普通=初心者??
大排気量のバイクは重くて難しく、小さければ軽くて運転しやすい!・・・そういった考え方を否定するわけではありませんが、決して「そうするべきだ!」と決め付けるような考えは少々危険かもしれません。私たちライダーが本質的に注意すべきはその車両の扱い方ではないでしょうか。
少々トゲを感じる「◯◯量マウント」という言葉。扱い方に差あれど、ライダーや技量の優劣を測る意味をもたせるのは危険かも・・・。皆さんはどう思いますか?
二輪車事故の致死率と速度
二輪車事故の過去データや統計によると、ブレーキ・ハンドル操作等の事故回避行動をとる直前の速度(危険認知速度)が30km/hになると死亡事故発生の可能性が高くなるといわれています。
さらに50km/h以上になると、死亡率が急激に高まることが知られています。端的に言うと、どれだけ運転技術が優れたライダーでも衝突ダメージの軽減にはならないということになります。
ライダーの皆様には釈迦に説法になりますが、速度の出しすぎは運転操作を引き起こす原因となるため危険です。
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/jiko/R02bunseki.pdf
警視庁交通局
「令和2年 交通事故の発生状況等について」
重かったバイクが軽く感じる??
例えば、一時的にウエイトを巻いたバットをスイングした後に通常のバットを使用すると、急に軽くなる・・・という練習法の効果があります。スポーツの分野ではこれを「筋運動感覚残効(きんうんどうかんかくざんこう)」と呼ぶそうです。 この現象はライダーにも当てはまり、時と場合によって運転操作に悪影響を与えてしまうかもしれません。
重いバイクに身体が馴染んでいる場合、その直後に軽量な車種を運転すると「筋運動感覚残効」により、バイクがおもちゃの様に感じ、運転中「いつも以上」に車体をバンクさせスロットルを回すなど、乗り手の気が大きくなる恐れがあります。
しかしながら、排気量にかかわらずバイクはオモチャではありません。「軽くなった」という気持ちは十分理解できますが、運転に対する弛んだ心構えは重大事故の可能性を大いに高めます。軽く感じても「やり過ぎ注意」です。
指定教習所の大型二輪教習には、大型二輪(750㏄)で走行した直後に、普通二輪(400㏄)による走行体験を行う「比較体験」という感覚残効を体験するカリキュラムがあります。
重さ以外にも原因が?
重量差による錯覚だけでなく、二輪車においてはトルクやエンジンパワーによる影響も加味しておく必要があります。
- 大型バイク → 中型バイク
- 中型バイク → 原付 等
上記のように、一時的な乗り換え時であっても「感覚残効」は少なからずライダーに影響します。したがって、安易なバイクの貸し借りはスポーツ学的な観点からみてもオススメできないのかもしれません。
教習車の恩恵、卒業後に感じる?
二輪教習車はバンパーガードや教習用ランプユニットが搭載されており、かつエンジンパワーが抑えられているという特徴があります。教習所を卒業した後も、身体には教習車の「感覚残効」が残存していることが考えられます。市販車(マイバイク)が運転しやすいと感じる理由の一つかもしれません。ライダーデビュー後に「案外バイク乗りこなしてるじゃん!わたしw」