数多あるカスタムスタイルのなかでも、アメリカのモーターサイクルカルチャーを色濃く伝えるスタイルがこの「ディガー」です。レーシングスピリットとチョッパーが絶妙に組み合わさったストリートドラッガーとも言えるディガーカスタムを解説します。
ディガーカスタム
ディガーとは
ディガー(Digger)の語源は英語の「dig」(掘る)で、1970年代アメリカで人気の火付けとなった、直線コースでの最速スピードを競い合うレース「ドラッグレース」に参戦するドラッグレーサーから。「バーンアウト」(バーンナウトとも呼ばれます)という、スタートダッシュ時に必要なタイヤのグリップ力を高めるホイールスピンでもメルト(溶かし)アクションが、まるで路面を掘っているように見えることから その名の由来になりました。
この由来にあるとおり、ディガーはドラッグレースに原点を持つチョッパーカスタムの派生スタイルです。ドラッグレーサーにフォーカスしたロー & ロング(低く、長く)スタイルを極めたナローなフォルムが特徴で、それでいてレーサーのようにスピードを追求するのではなく、ストリートバイクとしてゴールドリーフなどを用いたデコラティブな仕上げがその特徴とされます。ネイキッドバイクを低くてナローなスタイルにするストリートドラッガーにも通ずる部分がありますが、それ以上に1970年代のチョッパーカスタムテイストを色濃く取り入れたのがディガーと言えるでしょう。
ディガーというストリートドラッガースタイルを確立させたのが、アメリカのカスタムカルチャーを語るうえで欠かせない重要人物アレン・ネスその人。ライバルであるロン・シムズと1970年代から1980年代にかけてディガースタイルのカスタムバイクを多く輩出し、新たなカスタムジャンルの確立に成功した御仁です。彼らの情熱なくしてディガーというカルチャーは存在し得なかったでしょう。
ディガーカスタムの特徴
ディガースタイルを象るうえで欠かせないディテールをご紹介します。
ドラッグバー
真一文字のパイプで形成されるハンドルバーがこのドラッグバー。文字どおりドラッグレーサーにルーツを持つシンプルな形状は、旋回性に欠けるもののナローなフォルムを実現するうえで重要な部位でもあります。いわゆる直線番長系カスタムの王道パーツですね。
ディガーの解釈はさまざまあり、このハンドル形状ひとつとっても「ドラッグバーでなければいけない」などということはありません。ポイントはナローなシルエットを生み出せているか。ロー & ロングであることがディガーのアイデンティティです、無駄を削ぎ落としシェイプされたシルエットであることが求められます。それが実現できていたら、ハンドルバーの形状はどのようなものでも良いと言えます。ドラッグバーはあくまで代表格という位置付けです。
ロケットタンク
コフィン(棺桶)タンクとも呼ばれる角張ったフューエルタンクもディガーのマナー。こちらもドラッグバー同様、「角張っていなければいけない」というわけではなく、シルエットをナローにできていれば基本的にOK。本気のディガーカスタムはグースネックフレームとタンクが一体型になったものがありますが、究極系としてご覧ください。
好みと目指す年代によりけりですが、ディガーが生まれた1970年代という時代をフォーカスすると、ゴールドリーフなどを用いたサイケデリックなグラフィックが施されているのがベストと言えます。グラフィックの選定時に重要なのか、どの時代背景を思い描いているか、になるでしょう。
フリスコテール
ディガーらしいリアエンドと言えば、英国生まれのルーカステールランプが埋め込まれたフリスコテール。ちなみにフリスコとは、サンフランシスコで流行したナローなストリートバイクカスタムの呼称のこと。アレン・ネスが拠点としていた米サンフランシスコを中心にクリエイティビティなカスタムバイク制作が繰り広げられていたからこそのチョイスと言えます。
もちろんこちらもマストではありません。「テイスト的に似合っているか」「独自の解釈に基づいて描けているボディメイクか」さえ握れている ナローで美しいリアエンドなら言うことなしです。
ディガー向きなバイク
ハーレーダビッドソン・ストリートボブ
ハーレーダビッドソンの現行モデルでディガースタイルに近いモデルで思いつくのが このストリートボブです。ディガーの軸となるロー & ロングスタイルのキモ Vツインエンジンを中心に、「シンプルなシルエット」「リジッド型フレーム」であることからディガー向きだと思います。調べてみると、ディガースタイルにカスタムされたストリートボブが海外で生み出されていました。新たなテイストを吹き込みたいストリートボブ オーナーは是非挑戦を。
ハーレーダビッドソン・ブレイクアウト
ストリートボブと同様に「無駄のないシンプルなシルエット」と「リジッド型フレーム」を持つブレイクアウトもディガー向きと言えます。1970年代のマシンよりはより現代的に進化しているストリートドラッガーなので、今風の味付けでディガースタイルを実現できる一台ですね。
ヤマハ ボルト
リジッド型フレームが条件とも言われているディガーですが、ツインショックフレームのハーレー・ダイナやスポーツスターのカスタムも存在するので、それならばと可能性を示す意味でヤマハ ボルトを候補にお出ししました。同じく「Vツインエンジン」であることもマスト条件ではないのですが、アメリカ生まれのカスタムカルチャーであることから 親和性をもたらすVツインエンジンモデルとしてご覧ください。前述の2モデル同様、シンプルなスタイルなのでカスタムにはうってつけと言えます。
まとめ
パッと見て「あ、ディガー」とツウに気づかれるディガーカスタムは、フレームやフューエルタンク、その他のディテールなどなどかなりやり切った究極系のフルカスタムマシンがほとんどですが、既成概念に囚われず、目指すべき自分流のディガースタイルの”あるべき姿”を思い描いたうえで、段階を踏みながらカスタムを進めていくのもオススメです。進化の過程であっても、ディガースタイルは”らしい”匂いを放ってくれるので 完成までいろいろと味わいながら進めていけるでしょう。