このほど、原付免許で125ccに乗れる「新基準原付」が警察庁で承認されました。かつては各メーカーから様々なタイプの125ccバイクが販売されていましたが、今では寂しい状態です。また小排気量の4ストロークは2ストロークに比べてパワー不足が否めません。モトクロスコースを緑一色に染めたカワサキの2ストロークモデル「KDXシリーズ」の中から、競技用モデルに保安部品を取り付けた生粋のレーサー「KDX125SR」を紹介します。
2ストロークは、とてもパワフルなエンジン
最初に2ストロークエンジンの仕組みを説明します。4ストロークエンジンは、吸入・圧縮・爆発・排気という4つの行程を1つずつ行うのに対し、2ストロークエンジンは、ピストンが上昇する時に吸入と圧縮、ピストンが下る時に爆発と排気を行う2つの工程しかありません。また、クランクシャフトが2回転で1回爆発する4ストロークに対し、2ストロークは毎回爆発するため、同じ排気量でも2ストロークの方がハイパワーになります。そのため、1990年代までのレースは2ストロークマシーンが主流でした。
ハイパワーすぎるオフロードバイクは乗り手を選ぶ
当時、モトクロスやエンデューロを圧巻していたのが、カワサキKDXシリーズです。競技用車両には「R」、公道用車両には「SR」の名称が付けられ、排気量によって「KDX200SR」「KDX250SR」「KDX220SR」「KDX125SR」の4つのモデルが存在するなど、カワサキの力の入れ方が伝わります。
中でもKDX250SRは、最高出力が40psもあり、腕がないライダーが林道を走った日には、デンジャラスクイーンと呼ばれた北斗晶以上にデンジャラス。「こんなバイク乗りこなせない」という声が多く、排気量やパワーを下げて扱いやすくしたKDX220SRにスイッチしました。
KDX125SRは小型車なのに燃費が最悪
KDX125SRは、KMX125の後継として1991年に発売されました。KDX125SRには競技用車両が存在せず、モトクロッサーのKX125に保安部品を取り付けて公道仕様にしています。つまりレーサーそのものと言えます。しかしタンク容量が9ℓと少ないうえに、燃費は約15km/ℓと最悪。トヨタのヤリスWLTCモード燃費(2WD)の36.0km/ℓと比べるとお話にならないレベルです。2ストロークらしくオイルを吐き出すため、白いTシャツを走った日には、背中が油じみだらけになります。
火花を散らしたライバルたち
ライバルは、スズキTS125R(最大出力22ps)、ヤマハDT125R(最大出力22ps)です。エンデューロレースなどで熱いバトルが繰り広げられました。ちなみにホンダはすでに4ストロークに力を入れており、ライバルと呼べる関係ではありませんでした。
KDX125SRでロシア領サハリンを走る
実はワタクシ、かつてKDX125SRを所有しており、3度もサハリン(ロシア領)に連れ出しました。国内のチンケな林道では、KDX125SRの実力は発揮できません。当時のサハリンは、州都のユジノサハリンスク付近以外はダート天国。幅広いフラットダートが続き、日本の林道よりも快適に走ることができました。なお、稚内とコルサコフを結ぶサハリン航路は、1995年に開設し、2019年に休止されています。
排気量124ccながら、最高出力は22psを発揮。4ストロークモデルであるKLX250(2008年以降のモデル)の24psと比べても、ハイパワーであることが分かります。スロットルを回すと一気に加速し、時速130㎞に達します。フレームや足回りがしっかりしているので車体がブレることはなく、安定した走行が可能です。
バッテリーレスのため、乾燥重量は117㎏と軽量。大相撲の力士、翠富士関と同じくらいです。サハリンでは寝台車に連結された貨車にバイクを積んで移動することがありましたが、終着駅のノグリキにはホームがなく、まわりの方に手伝ってもらいながら高い場所から降ろす必要があったので、軽量で助かりました。
今のうちに乗ってほしい!
最大トルクが1.9kg-m/8000rpmで、マディに弱いですが、軽量なおかげで足を使って抜け出すことも容易です。タマ数は少ないですが、KDXシリーズは中古価格が30~40万円台とお安くないですが、ふざけた価格まで吊り上がっているNSR250Rに比べれば手に入れやすいと言えます。一度は2ストロークに乗ってみたいという方におすすめです。