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今なお輝きを放ち続けるZ1!ゼファーもZ900RSもすべてのルーツはここにある!?【70s旧車バイク戦国時代】

※記事内容は全て執筆時点の情報です。

絶版バイクファンならずとも、多くのライダーにその名を知られるのがカワサキZ1である。

デザイン、メカニズム、走りと三位一体となって完成しつくされたパッケージは凄まじいインパクトがあり、特にZ1の初期型に採用された「ファイヤーボール(火の玉カラー)」は、カワサキを象徴するカラーとなった。

Z900RS 50th Anniversary

火の玉カラーは、ゼファーでもZ900RSでも採用され、人気を博している。

ゼファー750 ファイヤーボールカラー
目次

Z1誕生の影にホンダCBがあり!

1960年代カワサキにはバーチカルツインエンジンのWシリーズ2ストローク3気筒エンジンのマッハシリーズの2台の人気モデルが存在していたが、どちらも大陸横断をするような大型ツーリングバイクとしての素養は持っていなかった。

そこで、アメリカ市場に向けたバイクを新規開発していくことになるのだが、それは奇しくもホンダCB750Fourと同じベクトル上を進む結果となったのである。

68年に姿を現したホンダCB750Fourはカワサキ開発陣の度肝を抜くことになる。

エンジンこそ、CBのOHCに対しカワサキはDOHCと技術的に先行していたが、堂々としたスタイリングや豪華な装備は明らかに凌駕されていた。

強烈なライバルの登場により、カワサキは開発をストップ。CBを研究して、ライバルを超えるニューモデルの開発に向けて仕切り直しを行った。

この事実こそが、カワサキZ1の完成度に拍車をかけた理由である。

排気量は当時、ハーレーのスポーツスターに合わせて900ccし、車重や寸法はホンダCB750Four以内に収めることになった。

Z1の凄さはメカニズムにあり!

50年前のバイクが現代の道路環境に於いて不足無く(というか十分速い!)乗れてしまうという事実は、冷静に考えると恐ろしいことである。

また、50年を経て、未だに高性能バイクと共に草レースで活躍しているという事実も、よく考えると驚愕ものだ。

つまり、カワサキZ1のエンジンは、先進性にあふれており、その後の排気量アップを見据えてマージンを持った設計がなされているのである

Z1のパワーユニットはその後GPz1100Fまで存続されたのがその証明とも言えるだろう。

耐久性を重視し、コストを度外視した設計

ホンダCB750Fourのクランクシャフトは四輪エンジンの技術を転用したコストが安く、騒音の少ないプレーンベアリング支持が二輪車として初採用されていた。

それに対しカワサキZ1は排気量が大きく、高発熱&高出力に対応するため、当時としては信頼性に優れた組み立て式クランクシャフトをあえて採用する。

こうした設計思想がエンジン各部に通底しているからこそ、Zのエンジンは圧倒的な耐久性を有すると共に今でも補修やレストアが現実的に可能となっているのである。

高い整備性も多くのファンを生む秘密

ホンダCBのエンジンはヘッドカバーを外すにもフレームからエンジンを降ろさなければならない。

しかし、Z1のエンジンは、ヘッドからシリンダーまで、フレームに載った状態で整備が可能だ。そうすることで整備やメンテナンスの時間を大幅に短縮できることになる。

テールカウルを有した洗練のデザイン

ホンダCBはテールカウルを持たず、今見るとよりクラシックなイメージがある一方、カワサキはマッハシリーズからテールカウルのあるデザインを採用。現代にも通づるデザインである。

また、ティアドロップタンクからテールまで流れるようなフォルムや、堂々とした4本マフラーなど理屈抜きで美しい姿はいつ見ても惚れ惚れする。

カワサキZ1が今も販売されている理由とは?

日本では排気量の自主規制から正規販売が行われなかったZ1。しかし、非常に高額ではあるが、まだ中古車を買うことができる。

それは、海外市場でベストセラーになったからに他ならない。

KAWASAKI Z1RもカワサキZシリーズの派生モデル

日本より湿気が少なく、道路事情が良いアメリカ市場で販売されていた車両はサビが少なくコンディションが良い。それが大量に残っていたのが幸運だった。

また、日本のレストア技術や、日本のリプロダクションメーカーの下支えもあり、多くのZ1が日本へ里帰りしてレストアされて販売されることが可能となっている。

劇的な乗りやすさに感動するカワサキZ1の走り

私もZ1には数度乗ったことがあるが、感動するほどいたって癖なく普通に乗れるのだ。

確かにクラッチやスロットルなど操作は重いし、ブレーキの効きも今ひとつ。しかし、フロント19インチホイールから生み出されるハンドリングはどこまでも素直かつ穏やかで、思ったラインをしっかりトレースすることができる。

パワーの出方も必要かつ十分で、パーシャルで走っても、フルスロットルで走ってもエンジンの鼓動感は爽快だ。

現代のバイクは乗り手の意思以上の加速やクイックなハンドリング、ブレーキの効きを発揮し、想像以上の乗りやすさと想像以上の速さを誇るが、乗り手の意思とは乖離してきている感は否めない。

そう考えると、Z1は十分エキサイティングでありながらも、乗り手と近い走りが堪能できる。

それは大変楽しくて気持ちの良いものだ。

デザイン、メカニズム、走り、その3つの超絶バランスがいきなり最初から成功してしまったのが痛快である。しかし、以降のZがすべて比較対象になってしまったのが不幸なところでもある。

まるで偉大な親を持つ二世政治家とか二世タレントのようなものかもしれない……。

角型ヘッドカバーなど各部を熟成させたZ1000Mk2

Zの呪縛はもはや過去のもの!? 快進撃を続けるZ900RS

しかし、Z1を強く意識しているにも関わらず、そんな先祖の呪縛などどこふく風で快進撃を続けるのがカワサキZ900RSだ

乗りやすく、コンパクトな車体と、必要にして十分なエンジンパワー。また、カスタムの素材として手を入れる余地が残された車体は、老若男女幅広いバイクファンの心に火をつけた。

また、パーツコンストラクターもその素養に注目。Z900RSのカスタムパーツは新鮮なニュースで溢れている。

私もZ900RSのイベントに取材に行き、多くのオーナーの話を聞いたが、みな、Z1のことはよく知らないし、特に好きでもないし、憧れも持っていないというのが特徴だった。

Z900RSオーナーはZ1など関係なく、あくまでZ900RSが好きで、乗って、カスタムしてSNSなどを通じて交流してバイクライフを楽しんでいるのである。

Z1は確かに偉大なバイクであり、その“バイブス”と“エッセンス”は今後のカワサキ車にも引き継がれていくかもしれないが、すでにZ900RSは独立した人気を誇り、多くのファンを抱える名車の素質に溢れている。

Text 丸山淳大

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