1985年、ヤマハは、これまでにないブッ飛んだバイクを発売しました。ネイキッドスポーツでもクルーザーでもない独特なスタイル、鉄の塊のような水冷V型4気筒エンジンは排気量1198cc、最大出力145psを発揮し、当時最速を誇ったカワサキGPZ900Rの115psを凌駕しました。筋骨隆々なルックスから「マッチョバイク」と呼ばれたV MAXを深掘りします。
高見山もビックリ Vブーストで馬力が2倍!2倍!
V MAXには、唯一無二のシステム「Vブースト」が搭載されています。簡単に説明すると、ドッカーンとパワーを発生させることで、250㎏もある重い車体を弾丸のように加速させることができるシステムです。なぜ、こんな面倒なシステムを採用したかと言うと、ベンチャーロイヤルというツアラーのエンジンがベースになっているから。最大出力90psがVブーストによって2倍に引き上げられています。
鬼のような加速でありながら、クルーザーのようなホールドできないポジション、剛性の低い車体、シャフトドライブ特有の癖などスロットルを全開にすることは難しく「テストライダーすらフル加速出来なかった」という都市伝説が残されています。
♬C’mon, baby アメリカ
誰もが「そんなバイク、日本のどこで乗るんだよ!」と思うでしょう。それもそのはず、最初はアメリカのみで販売する予定でした。現地で市場調査した結果、大きくてパワフルなバイクがアメリカ人好みであることが分かり、V MAXが開発されました。
このデザインは天上天下唯我独尊
デザインは、ヤマハ発動機のモーターサイクルのデザインを手がけるGKグループの一条 厚氏が担当。V MAXと相反するスリムで可憐なSR-X600/400のデザインも一条氏によるものです。完璧すぎる造形は簡単に変えられるわけがなく、デビューから一度もデザイン変更することなく2007年に生産終了になりました。
翌年に2代目V MAXが登場しましたが、初代のような人気を得ることはできず。厳しくなる排ガス規制対策も難しくなり、2017年8月に生産終了。32年も続いたV MAXブランドは姿を消しました。
偽りだらけのマッチョマン
チョロバイはV MAXの細部まで再現されています。燃費は高速クルージング時で15〜16km/ℓ、街乗りで11〜12km//ℓ、Vブーストを使用した加速時では8km//ℓ以下と最悪。レギュラーガソリンが1ℓあたり100円の当時ならまだしも、暫定税率や消費税が追加されている上に、ガソリン代が上昇を続ける現在はキビシイですね。
フェールタンクはダミーでシート下に設置されています。サイドのエアダクトもダミー。中森明菜なら♫飾りでしかないのよダクトはホッホーと歌い出すことでしょう。最低地上高は140mmと低く、バンク角が少ない直線番長。乗りやすさは皆無ながら、唯一無二のスタイルが受けて根強い人気を博しました。
Mr,Bikeで活躍したライター「佐藤信哉」を思い出す
50代のライダーなら、V MAXと聞いて佐藤信哉氏を懐かしく思うでしょう。佐藤氏はモーターマガジン社で出版されていたバイク雑誌「ミスター・バイク」などで連載を持っていたライターです。スタントマンとしてのキャリアがあり、ライターでありながら愛車のV MAXを操るイメージビデオ「ワンスアンドフォーエバー」が発売されるなど、当時はすでにアラフォーながら人気を誇っていました。
血の気が荒いライダーの必須アイテム「バトルスーツ(KADOYA製)」は、スタントマン時代に佐藤氏が考案しました。フルオーダーで、全身14箇所に硬質プロテクターが装備されています。アルミ板をリベット打ちしたハンマーグローブやハンマーブーツ、デニムを多用したバトルスーツⅡなど、派生モデルも誕生しました。