マディコンディションで泥の付着を防ぐフェンダーマット。もはや定番となりつつある泥よけ対策を編集部が実践してみました
みなさん、マディ対策ってどうしてますか? マディ対策とひとくちに言っても、そのノウハウはライダーによってこだわる部分が異なり、実はかなり奥が深いトピックでもあります。そこで今回は、全日本モトクロス選手権で多く使用されている、フェンダーマットやスポンジに注目。装着することで泥の付着を防ぐ効果があるのですが、実際のところ、付けてなかった場合どれほど重くなるのでしょうか? 今回はあえてマディコンディションの中、編集部イナガキとイザワが身体を張って実践してきました!
全日本モトクロスライダーのマディ対策
泥が付着してマシンが重くなったり、シートやグリップが滑りやすくなったりと、マディコンディションはとにかく厄介なもの。苦手なら走らなければいい話ですが、マディであろうと開催されたレースに挑む全日本ライダーやメカニックたちはそんなことは言ってられません。マディ対策のプロフェッショナルである彼らは一体どんな対策をしているのでしょうか。マディ対策を実践する前に、まず全日本モトクロス選手権のパドックで撮影したマディ対策の一部を見てみましょう。
フェンダー裏は一番多く泥がつく部分。走行中にはねた泥がフェンダー裏に付着し、走行後に見てみると泥がたっぷり詰まっています……。また、かなりひどい状態になると、タイヤとフェンダーの間に泥がつまってホイールが回転しにくくなるなんてことも。全日本モトクロス選手権IA1クラスを走る能塚智寛選手のマシンを見てみると、フェンダー裏にスポンジ(フェンダーマット)が貼り付けてあります。やはり定番カスタムなのですね。
なお、フェンダーマットには泥が染み込むため、洗車をすると無限に泥が出てきたりします。レースでは練習走行、予選、決勝と走行後に必ず洗車を行うため、洗車時間削減のためにも、フェンダーマットは決勝のみつけるのだそう。
フェンダーマットの裏面には粘着テープがついているため、フェンダー以外の場所にもつけることができます。たとえばハンドガード。前を走るライダーから飛んでくる泥を防ぐためにつけるのですが、さらにフェンダーマットをハンドガードの表面に貼ることで、泥の付着を徹底的に防ぎます。
他にも、外装やラジエターなど、泥がつきやすい部分に貼ることで、マシンの車重がなるべく重くならないようマディ対策が徹底されています。シートも同様。シートそのものに滑りにくい加工をしているライダーやフェンダーマット等を貼るライダーなど、よーく注目してみると、各々のこだわりが感じられます。
編集部が実践。フェンダーマットで車重はどれだけ変わるのか?
全日本モトクロスの現場で行われているノウハウを見た上で、実際に最寄りのモトクロスコースがマディコンディションの日を狙って検証していきます。果たしてマディ対策はどれほど効果があるのでしょうか? マディ対策なしとありの状態で走行し、マシンの車重を比較してみました。
車重は体重計を使って計測。フロントタイヤとリヤタイヤを体重計に乗せ、なるべく力を入れないようにマシンを支えて測ります。走行前の車重を測ると、フロント45kg/リヤ48.7kgで合計93.7kg(ガソリン満タン)となりました。この状態からマディコンディションを走ると、一体何kg増えるのでしょうか。
泥をつけるぞ
マディ取材のために天気予報をチェックし続けて早1ヶ月以上……。ようやくそのタイミングが訪れました。待ちに待った雨が降った次の日にコースへ取材に行ったのですが、マディどころかベストコンディション。このまま気持ちよーく走って帰ろうか、とも思ったのですが、必ずどこかに昨日の雨が残っているはず、と執念でマディコンディションの場所を探し出し、ひたすら走行してテストにこぎつけました。
編集部イナガキがライダーを担当。愛車YZ125の外装を新しくしてから走るのは3回目とのことですが、早くもこんなドロドロになるとは思っていなかったでしょう……。
走った路面はもはや沼。でも、こういう状況も楽しめちゃうのがモトクロスですよね。
走行後のマシンがこちら。土は水分を多く含んでいたため、土が詰まるというよりはべっとりとこびりついている状態になりました。
重量を測ると、フロント54kg/リヤ56.6kgで合計110.6kg。走行前と比べて約16.9kgの増加となりました。
マディ対策を実践
次に、マディ対策ありの状態を作っていきます。先ほどドロドロになったマシンを一度洗車し、マディ対策アイテムである「ZETA フェンダーマット」と「DRC スキッドプレートフォーム」を取り付けていきます。
なお、フェンダーマットは一度貼ると取り外すことが難しいため、予備の外装につけていきます。晴れの日用の外装と雨の日用の外装を作っておくと、コンディションに合わせて外装を付け替えるだけで対応できるのでおすすめです。
「ZETA フェンダーマット」はスポンジの裏面に粘着テープがついていて、そのままフェンダーに貼り付けることができます。真ん中と左右の3カ所が剥がせるようになっていて、最初に真ん中のみを剥がして貼り付けることで、位置をずらすことなく装着できます。
貼り付ける位置を決めたら、左右に残った台紙も剥がしていきます。
全面に貼り付け終わるとこんな感じ。もちろんこれで完成ではなく、フェンダーからはみ出した部分をカッターで切っていきます。
今回、イナガキはこの取材のためにカッターの刃を切れ味の良いものに付け替えてきていました(気合十分!)。スルスルと切れていく感覚は「まるで、いいパン切り包丁で食パンを切っているかのよう」とのこと。食パン好きのライダーなら伝わるはず……。
また、余談ですが、カッターの刃には切れやすさを重視したタイプと丈夫さを重視したタイプの2種類があります。今回は切れやすさを重視したカッターの刃を使ってみたのですが、その切れ味の良さはストレスフリー。フェンダーマットを取り付ける時は、カッターの刃を切れ味の良いものに付け替えることをおすすめします。
デーン。完成です。少し皺寄せが目立つ部分もありますが、なかなか良い出来ではないでしょうか!
切れ端は外装などに余すことなく使用します。前方から泥を受けるサスペンション付近も、多くのライダーが保護している部分。
エンジンの下など、泥が詰まりそうな隙間には「DRCスキッドプレートフォーム」を詰めていきます。スポンジに粘着テープはついておらず、隙間にはめるだけと装着方法は簡単! ただし、はめるだけでは走行中に落ちてしまう可能性もあるので、ワイヤーやタイラップで固定しておくと安心です。
また、撥水効果があるシリコンスプレーを吹きかけることで泥の付着を軽減します。外装やタイヤなど、マシン全体に吹きかけていきます。
そして再びマディの地へ
マディ対策を入念にしたところで、再びマディコンディションを走っていきます。
一度洗車したマシンをまた汚していく……。イナガキからも一体何をしているんだという気持ちが伝わってきましたが、ここで正気に戻ってはいけません。ひたすら走り続けて取材を全うしていきます。
先ほどと同様、マシン全体ドロドロです。ただ、フェンダーマットなしの状態では土が「塊(かたまり)」で付いていたのですが、、フェンダーマットを装着した今回はその塊が見られません。泥の付着がかなり抑えられている効果を実感します。
車重を計測してみると、フロント54kg/リヤ48.3kgで合計102.3kg。マディ対策なしの状態と比べると、約11kgほど軽い結果となりました!
今回走った路面はかなり水を含んだマディコンディションでしたが、もっと水分量が少ない土質の場合は、さらに車重が増し、マディ対策の効果も増大するでしょう。選手権を走るライダーはもちろん、マディが苦手なサンデライダーやモトクロス初心者の方も、マディ対策をすることでマディコンディションの楽しさを掴むことができるはず。ぜひその効果を実感してみてください。
text&photo RIDE-HUCK
RIDE-HUCK掲載日:2023年5月31日