バイクでもっとも大事なのは、ブレーキですよね。当たり前ですけど、止まれない以上の恐怖などありません! モータークリニック ストラーダの渡辺健さんに、今回はちょっと踏みこんだブレーキのクリーニングを教えてもらいましたよ!
渡辺健さん/藤波貴久・小川友幸選手をはじめ、トライアルのトップライダーとの交流も深く、自身もトレールをつかったオフロードバイク遊びを提案したり、ライテク講座を開催してきた、オフロードの伝道師。現在は、バイク修理専門の「モータークリニック ストラーダ」を運営中
トレールバイクのブレーキは、かなり傷んでいる!!
乗るたびに洗車され、屋内保管されるレーサーとはちがい、日々ブレーキにとっては過酷な道路を走り続けているトレールバイク。そのほとんどが、ブレーキが傷んでいるのをご存じでしょうか。メーカーが絶対にトラブルを起こさないよう設計しているだけあって、そのままでも十分な性能を発揮するのですが、クリーニングしてあげることで引き摺りが少なくなったり、動きがスムーズになります。ただし、他人所有の自動車のブレーキ整備は、整備士の資格が必要なのでご注意を…。ご自身のバイクを整備する方も、十分な注意と共におこなってくださいませ!
まずは、ブレーキキャリパーから見ていきましょう。ブレーキキャリパーが固定されているうちに、スライドピンのボルトを回しておくとグー。
そして、ブレーキキャリパーを留めているボルトを外していきます。
セロー250の場合、2本外せばブレーキキャリパーを外せますね。
あ…。ブレーキパッドが瀕死でしたね…。清掃以前の問題でした。
上が新品のブレーキパッド。下がセロー250につけられていたものです。下、溝がなくなっていて使用限界を超えています。少しは余裕をもってブレーキパッドを設計してありますが、もうすんでのところでブレーキパッドがなくなり、鉄の部分でブレーキローターを削ってしまうところでした。だいたい、鉄があたりはじめるとシャリシャリという音が鳴り始めます。鳴り始める前にきづくべき案件です…。
ちなみに、上のパッドは新発売のZETA ジグラムパッド ダートシンタード。レーサー、トレールバイク、どちらも同じ品質でリリースされました。つまり、オフロードレースに必要なレーシングスペックを持ったブレーキパッドなのです。とはいうものの、ロードバイクのカーボンパッドのような扱いづらさはありません。むしろ、効き始めでしっとりした感触があって、とってもコントローラブル。林道好きには、特におすすめしたいところ。
ZETA
ジグラムパッド ダートシンタード
素材: シンタード材
価格: ¥4,950(税込)
スライドピンを抜くと…
キャリパーサポートがこんな感じで開きます。パッドは、このまま取り外せばOK。
キャリパーサポートは、もう片方のスライドピンからすっと抜いておきましょう。
で…最大のお題目はここです。キャリパーピストン。見ての通り、トレールバイクの場合はブレーキパッドの交換サイクルが長いこともあって、ピストンが出たまま放置されがち。なもんで、こんな感じで錆や汚れがたまっていってしまうのです。パッドを変えるためには、このピストンをキャリパーに押し込むのですが、このぐさぐさな部分をキャリパーに押し込むわけですか? いいわけないですよね! このピストンとブレーキキャリパーの間にはシールがあるんですが、もちろんシールが傷みます。ってことは、ブレーキフルードが漏れる原因になっちゃいます。ブレーキピストンの動きもよくないので、ブレーキコントロールがしづらくなっちゃいます。最悪です。
ブレーキキャリパーを徹底オーバーホールするの術
まずは、あたりが汚れないようにウエスで保護しましょう。
ここからは、禁断。ブレーキパッドを交換する時に、レバーを握っちゃダメって言われましたよね。ここぞとばかりに、握りまくります。そう、ピストンを押し出してしまうのです。
再利用を考えない場合は、ペンチで抜いてしまってOK。大抵の場合、ここは新品に換えたほうがいいですね。コツは、2つのピストンは同じように押し出されるわけではないので、レバーを握るたびにピストンの出方を調整し、両方同じようにでるようにすることです。運が良ければ、両方一緒に外れてくれます。
だばーっと出ているのは、ブレーキフルードです。ブレーキキャリパーに滞留していたブレーキフルードが一気に流れ出しました!
左/新品。右/使用済み。スムーズに動くようになることは、素人目から見ても明らかです。たのしみですね!
キャリパーの内部とご対面。溝が2つ、ここにシールが2つずつ。つまり、両方で4つのシールが入っています。
ブレーキキャリパーを傷つけないように、そっとピッカーなどの先の細い工具でシールをかきだしてやります。
パーツクリーナーで汚れを入念におとしておきましょう。
新品のシールに交換するのが吉です。ブレーキフルードで、湿らせておきましょう。
新品シールをインストール。
そしてピストンを入れます。フルードで滑るようにしておけば、すーっと入っていきます。この動きなら、ブレーキがスムーズに動くことは疑いの余地がありません!
バッチリ!
可動部分には、耐熱性のあるグリスを塗布します。
ブレーキパッド、キャリパーサポートなどを組み直します。Z−WHEELのロゴがしぶい!
ピストンも全部はいった形であれば、これだけクリアランスが開くんですね。
ブレーキキャリパーは、絶対に外れてはいけない部分。ボルトにマーキングしておきましょう。
仕上げにブレーキフルードを入れていきます
ブレーキキャリパ−からブレーキフルードを出してしまったので、補充しなくてはなりません。
ブレーキマスターのキャップを開けます。フルードには攻撃性があるので、ウエスでまわりを保護しておきます。
ブレーキキャリパーのブリーダーに、径のあうホースを差し込み、フルード受けを用意しておきます。で、ブリーダーボルトを開放。すると、キャリパーのフルード通路が開放されるわけです。で、ブレーキマスターのレバーを握ると、フルードが圧送されてきます。通路にはエアがはいってしまっているので、このエアをブリーダーから出し切ってしまいましょう。
ブレーキフルードを補充し、ブレーキマスターからブレーキフルードでエアを押し出す形です。激しく操作すると、エアが細かくなってしまい、いわゆるエア噛みをおこしてしまいます。ゆっくりブレーキフルードを圧送していけば、すっとエアが抜けてくれますよ。
ブリーダーからエアが出てこなくなったら、ブリーダーを閉めます。ブレーキレバーを握ってしゃっきりしたフィーリングなら成功!
レーシーなブレーキパッドがちらみえしますね!
text&photo RIDE-HUCK
RIDE-HUCK掲載日:2022年6月17日