早くも第5回を数える好評DIYメンテの連載。モータークリニック ストラーダの渡辺健さんが警鐘をならすのは、オイル交換です。オイル交換って、メンテ教本の最初にのってそうな内容ですが、実はすごく奥が深いものなんです。今回は、渡辺さんの知識と編集部がこれまでいろんな活動で得てきた「オイル」の新常識を交えて、オイル交換の勘所をお伝えしましょう。
そもそも、オイル交換ってどのくらい必要か…知ってます?
渡辺健さん/藤波貴久・小川友幸選手をはじめ、トライアルのトップライダーとの交流も深く、自身もトレールをつかったオフロードバイク遊びを提案したり、ライテク講座を開催してきた、オフロードの伝道師。現在は、バイク修理専門の「モータークリニック ストラーダ」を運営中
オイル交換の頻度は、昔と変わらず…シビアコンディションの場合は、早めに交換が吉
まず、トレールバイクの場合はオイル交換の頻度について2種類。セロー250の取り扱い説明書には、3000kmに1回。WR250Rの取り扱い説明書には、6000kmに1回と表記されています。新型のCRF250Lも6000kmに1回ですね。おおよそ空冷バイクは3000km、水冷バイクは6000kmといったところでしょう。
注意すべきなのは、シビアコンディションの場合。具体的に言うと、オイルの温度が上がってしまうような走行をした場合は、早めに変えるべきです。オフロードバイクで言うと、たとえばガレ場などで走行風が当たらないのに高回転を多用するような時。あるいは、クロスカントリーレースなどでレブに何度もあてるような激しい走行をする場合です。
あるいは、オイルレベルがロワーレベルよりも下回っていたら、補充が必要ですね。ちなみに! このオイルレベル窓から見えているオイルが黒いかどうか、は全然目安になりません。オイルは、交換してから100mも走れば真っ黒になります。こんな風に綺麗なオイルは、交換直後だけ。丁寧にフラッシング(洗浄用のオイルを入れて、何度かエンジン内をすすぎ洗い)すれば、キレイになりますけどね…。
では、普通の公道走行を繰り返したセロー250のオイルをみていきましょう!
セローのオイルは、こちらクランクケースの下側にあるドレインボルトを外して抜き取ります。ボルト頭は、12mm。メガネレンチよりもソケットレンチのほうが、フレームに干渉しづらく操作しやすいでしょう。オイルが暖まっているほうが、オイルの流動性が高く、しっかり抜けきってくれます。とはいうものの、熱すぎるとやけどの元。オイルを抜く前に、ほんのちょっと暖機するのがベスト。
オイルを受けられるバットを用意しておきましょう。オイルが抜けてくる直前は、手でゆっくり回すとドレインボルトをバットの中に落とさずに済みます。
どばーっと。オイルが出ます。
このタイミングで、ドレインボルトをパーツクリーナーで脱脂してキレイにしておくといいですね。
ドレインボルトには、銅のワッシャーがついています。こちら、銅かアルミでなくてはダメです。なくしちゃったので適当な鉄ワッシャーをつける、なんて暴挙に出ると、オイルが100%漏れてしまいます。この銅ワッシャーがつぶれることで、オイル漏れを防いでいるのです。ちなみに、このワッシャーは毎回交換がのぞましい、といわれたりもしていますが、傷がついていなければ再利用可。セロー250の説明書にも書いてあります。締め込んだときにつぶれればOKですよ。
で、ドレンボルト締め込みます。トルクレンチを使うような必要はないと思います。締まりきってから、もう一押し45度くらい増し締めすればOKでしょう。
こうして締め込んだボルトにマーキングしておき、頻繁にまわっていないかチェックすることが大事ですね。
オイルはエンジンの健康チェック!
編集部は、こまめなオイルの交換よりも、オイルをちゃんと見ることのほうが大事だと考えます。
オイル処理できるパックに染みこませなかったのは、そのためです。オイルをサンプリングして、不純物がないか、みるためなのです。こうやって、ペットボトルを切って、光にすかしてみるとわかりやすいでしょう。
黒いのは、普通です。ヤバイ兆候は、3タイプ。1つは、金属片が混じっていること。これは、エンジンの内部でどこかが削れてしまっている証拠です。大きめの場合は、何か部品が破損している可能性もあります。バイク屋へ持っていくのが吉・
2つめは、濁っていること。これは、水が混じってしまっている時におきる現象です。セローのような空冷の場合は、水没などが原因ですが、水冷の場合はクーラントがエンジン内に漏れ出すこともあります。これは結構な重傷です…。古い2ストトレールなどは、ウォーターポンプまわりが原因なことが多いですよね。
3つめは、甘いにおいがすること。この場合、クラッチが焼けてしまっていることが多いですね。おそらくクラッチのフィーリングも変わっているはず。少し腕に覚えのある人は、クラッチプレートをチェックしてみましょう。
ちょっと余談ではありますが、オイルにまつわる技術は年々向上しています。四輪では、0W-20などの超低粘度オイルを使うことで低燃費を実現するようになって久しいです。二輪も、材料研究やコーティング技術があがったことで、昔よりも潤滑以前に金属同士の摩擦がおきづらくなっています。
さらに! たとえばプロのラリーでは、毎日変えるオイルを分析することで、ある程度どの部品が消耗しているのか把握できるようになっているのだとか。もちろん、僕らにはそんな芸当はできませんが、オイルがエンジンの健康チェックにつながるのは同じ話。人間の血液検査よろしく、バイクのオイルチェックはしっかり目を光らせるべきなのです。
オイルフィルター&オイル交換でリフレッシュ
オイル交換時、セロー250の場合は3回に1回はフィルターも交換するよう、説明書に書かれています。
気をつけたいのは、Oリング。こちらも傷が付いていたら、交換すべきです。よくあるミスは、このリングがずれたままボルトを締め込んでしまって、傷つけてしまうもの。じわじわオイルが漏れてきちゃいますね。
ここにも、Oリングがありますよ!
ちなみに、フィルターの外側をみても汚れはわかりません! 内部で汚れをキャッチするタイプです。
フィルターを交換したら、3本ともながさが違うボルトを間違えないように組み付けます。
オイルは、ジョッキに移して量をはかって注入するのが吉ですね。ここでオススメしているのは、マキシマのプロプラス10W-40。4ストロークのハイスペックエンジンにも使用できる、化学合成オイルです。セローなら、1年を通して不満も出てこないでしょう。
規定量を入れたら、エンジンをかけてから1分ほどオイルがエンジン内になじむのを待ってから…
オイルレベルをチェックして完了です! お疲れ様でした!!
text&photo RIDE-HUCK
RIDE-HUCK掲載日:2021年11月26日