モータークリニック ストラーダの渡辺健さんが教えるDIYメンテの連載、早くも3回目です。渡辺さんが特に気にかけるところは、どこだと思います? クラッチレバーですよ! 特にトライアル遊びが好きな渡辺さんは、クラッチの操作感をとても大事にしています。目からうろこのチェック&メンテ術を、ぜひごらんくださいませ!!
渡辺健さん/藤波貴久・小川友幸選手をはじめ、トライアルのトップライダーとの交流も深く、自身もトレールをつかったオフロードバイク遊びを提案したり、ライテク講座を開催してきた、オフロードの伝道師。現在は、バイク修理専門の「モータークリニック ストラーダ」を運営中
実は、あなたのレバーもガタが来てるかも!!
クラッチレバー、どんな観点で見てますか? ほとんどの人は、クラッチの引きが軽いか重いか…そこだけだと思います。あまり気にしませんよね。でも、ここって常に金属同士が摩擦している部分なので、いろんな箇所が減りやすいんです。で、一番気になるのは縦方向のガタ。
はい。クランケのセローは、通勤バイクとして約20000km活躍してきたマシンですが、これだけレバーの縦方向にブレがありました。はっきりいって、このままでも全然乗れちゃいます。たぶん、50000km乗っても気づかない人は気づかないでしょう。ですが、このレバーがしゃきっと思い通りにガタなく動いてくれることが、どんなに気持ちいいか。さらに、正確なレバー操作でどれだけバイクを操りやすくなるか。一説には、トライアルのプロライダーはクラッチをおおよそ10段階くらいで無意識に使い分けているそうですから。
レバーをすんなり外せる人は、メンテ上手に見える
クラッチレバーの交換って、ちょっと構造がわかっていないとすんなりできないところです。
まず、ゴムカバー類を外したら、クラッチの引きを調整するダブルナットを締め込んでから、ワイヤーを通す合口の部分をホルダーの合口と合わせましょう。
そして、クラッチレバーを引きます。
クラッチワイヤーを矢印方向に引きながら、クラッチをパンと離します。すると、クラッチワイヤーに余裕ができるのです。
あとは、ワイヤーを通す合口から、ワイヤーを抜けばOK。実に簡単な作業なんですが、知らずにワイヤーをエンジン側も緩めたりしながら外している人を見かけます。覚えて下さいねー。便利です。
クラッチレバーは、下側のナットを外してから…
上側からボルトを緩めます。ボルト穴にねじ切ってあるのに、ナットで締め込んであるような構造は、レバーの取り付けくらいでしょう。
丁寧なグリスアップで、快適に。ZETA CPピボットレバーの組み付け方
まずは、清掃とグリスアップをしていきます。レバーホルダーは、パーツクリーナーで汚れを吹き飛ばしておきます。
アジャスターも外して、グリスアップしておきましょう。
ここがすんなり回ってくれないと、出先でクラッチトラブルになったときなどにストレスになりますよね。ラジオペンチなどの工具がないと回せなくなってしまっているアジャスター、よくあります。
問題は、やっぱりココです。クラッチレバーの付け根と、ホルダーとの摺動面、そしてボルト。使い込んだレバーだと、このボルト穴が痩せて拡大してしまったりもしますね。あとは、メーカーによってはこの穴に鉄製のスレーブが入っていることもあります。アルミは削れやすいからです。セローの場合は、スレーブは入っていません。20000kmで、このくらい。まだ再利用はできる範疇かもしれませんが、レバーの摺動面とホルダーが痩せてしまって、上下のガタが出てしまっています。
レバーを交換してしまいましょう。純正もいいのですが、今回はZETAのピボットレバーを導入します。転倒時に逆側へ倒れてくれることで、破損を防いでくれる優れものです。削り出しで精度もグッド。組み付け前に、摺動面にグリスアップします。
価格: ¥7,040(税込み)
グリスの量はこんなもんです。薄めで十分。たくさんつけても、溢れて泥やほこりを招いてしまうだけ。まめなグリスアップこそが、マシンをいたわるのです。
逆手順で組み付け
クラッチレバーを装着するには、まずワイヤーを先にアジャスターに通しておきます。外す時の小技は必要なし。
このまますっとホルダーに通します。
ホルダーとレバーの位置をあわせて、ボルトを通します。
で、上下締め込めば完成! しゃきっとしたクラッチの操作感がよみがえると共に、ピボットレバーで転倒への安心材料も手に入れることができました!
text&photo RIDE-HUCK
RIDE-HUCK掲載日:2021年9月10日