どうしてバイクが空を飛ぶのか、そこまでは誰でもわかると思います。でも、どうしたらうまく着地できるのか……それが、なかなかわかりませんよね。今回はそんなジャンプの基本理論を、FMXの大御所である鈴木“DAICE”大助さんによるセロー250の大ジャンプから学びましょう
本日の先生 SUZUKI DAICE DAISUKE（ダイス）
どんなバイクだってジャンプを飛べる？ 下り斜面に着地すればOK
自分のバイクはエンデューロバイクだから、トレールバイクだから、ジャンプは飛べないんだ、というよく聞くセリフ。これは「失敗したら大変な目に遭うから」という意味では合っています。サスペンションが短い、あるいは柔らかいということに起因していますね。でも、バイクではなく自転車に注目してみると、モトクロッサーのような長いフルサスペンションのダウンヒルバイクより、フルリジッドのBMXのほうが壁のような尖ったジャンプをピョンピョン飛んでいるではありませんか。これは、ざっくり言うと下り斜面をうまく使っていることが理由です。
忘れちゃならん当たり前の事！
当たり前のことですが、バイクが着地面に対して垂直に当たると、100％の衝撃を受けます。ここに角度を加えていくと、だんだんとその衝撃が弱まっていきます。直角に当たるとエネルギーの逃げ場がありませんが、角度があると逃げ場がありますよね。前方に進んでいる力が加わって、前に滑る方向へ力が変化するからです。モトクロスや自転車のジャンプは、前方に進んでいることでエネルギーが逃げ、着地に角度がつくことでさらにエネルギーが逃げます。どれだけデカイジャンプでも、その大きさに合わせた下り斜面に着地すれば理論上生還できるわけです。とか書いてみても、よくわかりませんね。もっと物理的に説明してもいいんですが、ここは実践で見てみましょう。
ここにFMXランプと、セロー250と、鈴木大助がいます。さぁ、飛んでみてもらいましょう。
下り斜面に着地できなかった場合、大きな衝撃がバイクとライダーを襲います。1度にとどまらず、何回かリバウンドしてしまっています。ライダーがダイスでなかったらと思うと……怖い！ もしこれが上り斜面に着地してしまっていたら、サスペンションが折れかねません。
しかし！ 無事下り斜面に着地できた場合、この短く細いサスペンションでもすっと衝撃を吸収できていることが、わかりますでしょうか。完璧に合わせられれば、市販トレールであるセローでも、リバウンドは起こさないんです。
ダイスが教える、着地の合わせ方
下り斜面に着地すればいいのはわかりました。でも、どうしたらうまく下り斜面に着地できるのでしょうか？ それがわからずにジャンプを飛び出すなんて怖すぎる……。早速ダイスに聞いてみましょう。
「ジャンプは、いろんな要素が飛距離や角度を決めています。ジャンプ台を飛び出す速度、サスペンションの使い方、ジャンプ台の角度、ジャンプ台の大きさ、スロットルの開け具合などなど。僕らは、身体でどうしたらどのくらい飛ぶのかを理解しているので飛び出せるんですよ。こればかりは、経験を積んで感覚を身につけるしかありません。言語化は難しいですね！
おすすめ練習方法
練習方法としてオススメしたいのは、二連じゃなくて、まずは飛びやすそうな小さなテーブルトップから始めることです。最初は小さめに飛んで、ちょっとずつスピードを上げて距離を伸ばしていきます。ボディアクションは飛び出す瞬間はいりません、バイクの真ん中に立ち、身体は地面に対してまっすぐにしましょう。前傾・後傾は危険。ちょっと頭が前くらいが正しい姿勢です。あとスロットルは開けっぱなしで加速しながらジャンプすることは避けましょう。ステップがジャンプ台から抜ける瞬間にスロットルを戻すことで、リアタイヤにわずかにエンブレがかかり、フロントが下がります。戻しすぎると前転するので、この感覚も何度も練習して掴むといいと思います。
だんだん下り斜面に近づいてきたら、着地側をのぞきこみましょう。バイクは前におさずに、頭だけでのぞき込みます。ハンドルを着地の前に押して下り斜面に合わせることができれば完璧です！ 飛ぶ瞬間にのぞきこむと、前に回ってしまう可能性があるので注意ですね。ちなみに、顎が上がってしまうと腰が引けてしまい、下り斜面に合わせられません。ふいにフロントが上がってしまったときも、対処できないので危険です」とのこと。
まとめ
ちなみに……「僕らでも怖いことはありますよ。僕と英吾君（※故佐藤英吾、日本のFMXの創世記を担ったレジェンド）は一緒に日本で初めてバックフリップを成功させたんです。世界でもまだ珍しかったので、僕と英吾君はすぐにバックフリップ成功者としてフランスのショーに呼ばれたんですね。ところがそこで用意されていたジャンプは日本で試行錯誤して僕らが作っていたモノとはまるで違ったんです。そんなジャンプでバックフリップなんてしたこと無いけど、もうやるしかないってことで二人でめちゃくちゃびびりながら飛んだんですよ、英吾君はたぶんあのときが一番寝れなかったんじゃないかな。FMXってみんなクールな顔してるけど、コンテストの前なんかはすっげぇシリアスなんですよ。飯食えないなんてザラですもん」とダイス。ビギナーが感じる恐怖感とは少し違うかも知れませんが、とはいえど共通点はあるのかもしれませんね！
text&photo RIDE-HUCK
RIDE-HUCK掲載日：2024年7月17日
