1980年代、北海道にはたくさんのライダーハウスが存在していました。その多くは「若いライダーに格安で旅をしてほしい」という地元の方々のご厚意でした。若年ライダーの減少とともに消えてゆくライダーハウスが多い中、今もなお進化し続けるライダーハウスがあります。三笠市の「ライダーハウス 旧萱野駅」を紹介します。
日本で3番目に開通した鉄道の駅
三笠市は札幌から約60㎞の場所にあります。良質な石炭が採れるため、1882(明治15年)に北海道で最初(日本で3番目)の鉄道が、幌内(三笠市)~手宮(小樽市)に開通しました。
萱野駅は、国鉄(民営化後はJR北海道)・幌内線の駅として1913(大正2)年9月11日に開業しました。当時は萱や葦が密生していたことから、地区名になったと言われています。
幌内線の駅の多くが石炭輸送の必要性によって開業したのに対し、萱野駅は地元住民の嘆願によって開業しました。1987(昭和62年)7月12日に幌内線全線が廃止された後は荒廃していましたが、地元町内会による修繕を受けて、2000年代からライダーハウスとして使用されています。
ゲストハウスのようなクオリティ
ライダーハウスは、駅の向かいに住む坂梨宣行さんが管理しています。かつてはライダーだったそうで、「萱野駅をもう一度人が集まる場所にしたい」との思いから、旅人が集うライダーハウスにすることを思いついたそうです。
宿泊料は1泊千円と格安なうえに、キッチン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、シャワールームを完備。しかもすべて料金に含まれているというから驚きです。
以前は数量限定で寝具を無料貸し出ししていましたが、さらにレベルアップして二段ベッドが常設されました。もはやライダーハウスを超えてゲストハウスのレベルです。
女性専用室も完備
ホームには長らく錆びついた車掌車・ヨ8103が置かれていましたが、これもきれいに整備されて女性専用室に生まれ変わっていました。
中には二段ベットが一組と、ゲストベッドがひとつ。テレビは設置されていますが、ほかの備品は駅舎のものを使用します。衰退していくライダーハウスが多い中、進化し続ける萱野駅と坂梨さんには、感謝しかありませんね。
毎年7月の最終日曜日に「萱沼駅まつり」を開催
毎年7月の最終日曜日に「萱野駅まつり」を開催しています。全国から集まったライダーと一緒に焼肉パーティーが行われます。予約不要で飛び込み大歓迎。地元の名産品を持ち込むライダーも多く、当日はグルメ催事場と化すそうです。チャンスがあればぜひ参加してください。
ライダーハウス 旧萱野駅
住所:三笠市萱野534-2
電話:01267-2-7497 さかなしさん宅
三笠には昭和の匂いが漂っている
「三笠なんて何もない」「札幌から富良野に向かうために通り過ぎる街」と思っているアナタ、それは間違いです。三笠はタイムスリップしたような街。昭和の面影が色濃く残されています。
幸せの黄色いハンカチの世界に迷い込む「炭住」
炭住とは炭鉱に従事していた方々の住宅です。すでに市内の炭鉱は閉山していますが、今でもいくつかの炭住に高齢の方が住んでおり、取り壊されることなく残されています。高倉健さんの名作「幸せの黄色いハンカチ」のような世界を体験してみてください。
「三笠鉄道村」でSLに乗ろう!
幌内駅跡地にオープンした鉄道に特化したテーマパークです。北海道の鉄道の歴史を後世に伝える博物館や、実際に道内を走行していた車両を多数展示しています。土・日・祝には、1939(昭和14)年に製造された蒸気機関車「S-304」が、お客さんを乗せて短い距離を走っています。力強い鼓動を感じてください。
三笠鉄道村
住所:三笠市幌内町2丁目287
電話:01267-3-1123
開館時間:9時~17時
休館日:月曜日
100年続いた味が引き継がれる「更科食堂」
「更科食堂」は、約100年の歴史を持つ老舗食堂です。かつては炭鉱夫たちのお腹を満たしていました。2020年に店主の高齢と過疎化を理由に惜しまれながら閉店しましたが、その後東京で飲食店を経営する男性が店舗と親しまれてきた味を承継しました。上品な更科蕎麦は立ち寄る価値があるおいしさです。
更科食堂
住所:三笠市幾春別町1丁目174
電話:01267-6-8323
営業時間:11時〜15時
定休日:火曜定休(祝日の場合は営業)
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他にも、高校生が実習の一環として料理を提供する「三笠高校生レストラン」、アンモナイトの化石が豊富に展示されている「三笠市立博物館」、「三笠天然温泉 太古の湯」や、「湯の元温泉旅館」などの温泉、数々の炭鉱遺産など見どころがあふれています。旧萱野駅ライダーハウスに連泊して、三笠を堪能してください。