苫小牧港から全道各地に走り出すライダーに向けて「苫小牧近郊の市町村にだって見どころがある」と、足を止めさせる企画の第2弾。前回は札幌から苫小牧を紹介しましたが、今回は室蘭から苫小牧の間にある街を紹介します。このルートには名だたる観光地が多く含まれていますが、メジャーな情報は旅行サイトにお任せすることにして地元ライダーでも知らない情報をお伝えします。
【室蘭市】栄枯盛衰の歴史
室蘭は北海道有数の重工業都市です。1887年に英国2社と北炭による合弁企業「日本製鋼所」が創立。続いて輪西製鐵場(現・新日鐵住金)も設立され「鉄のまち」として発展しました。1892年には北海道炭礦鉄道が夕張や空知の炭鉱から石炭を運ぶ室蘭本線が開通。小樽に並ぶ石炭積み出し港として繁栄するなど、活気づいていました。
かつては室蘭と本州を結ぶ航路も多く、室蘭フェリーターミナルは「北海道の玄関」としてライダーにも親しまれていました。八戸・大畑(青森県)、大洗(茨城県)、直江津(新潟県)を経由して博多までフェリーが就航していましたが、相次ぐ航路休止により2008年にフェリーターミナルは休眠。2018年に川崎近海汽船が宮古航路を開設し、10年ぶりに一般利用を再開するも、利用率低迷により2020年に休止されます。航路を八戸発着に変更しても状況は変わらず、2022年の航路休止によって再び閉鎖されてしまいました。3度目の復活は難しいでしょうね。
徹の街にふさわしい銘菓が誕生
せっかく室蘭を訪れたのなら「鉄の街」にふさわしいお土産が欲しいもの。ぜひ購入して帰りたいのが「鐵の素クッキー」です。室蘭工業大学(以下:室工大)の清水一道教授が「国内外へ出張する際に持参できる室蘭らしい菓子があったらいいな」と考案。室蘭市中島町シャンシャン通りにある「ナニナニ製菓」が商品化しました。
ホンモノと比べても区別がつかないクオリティで、鉄鉱石・石灰石・石炭を再現しています。材料にこだわり、化学調味料や人工甘味料を一切使わない体に優しいお菓子で、とてもおいしいです。
現在、室工大オリジナルジンギスカン鍋をモチーフにした「ジンギスカン鍋クッキー」も販売中。割れやす形状のため市内のみの発売でしたが、最近ではパッケージを改良して「東室蘭駅内の四季彩館」や「道の駅みたら室蘭」以外に「新千歳空港」でも販売しています。バイクでの持ち運びもOKですよ。
ナニナニ製菓 本店
■ 住所:室蘭市中島町1-38-5 1F
■ 電話:0143-83-6854
■ 営業時間:毎週火曜日~土曜日11:00〜19:00
■ WEB:https://7272.me
※Instagram、Twitter、Facebookあり
【登別市】約1万5千種類のモノを展示 「古趣 北乃博物館」
登別は温泉や地獄谷、クマ牧場など見どころが多い観光地ですが、「そんなところは見飽きた」という方に「古趣 北乃博物館」をお勧めします。場所は国道36号線沿い、JR登別駅からスキップで約5分。市内で玩具店を経営する若木さんの施設博物館で、1階には骨とう品や古い映画のポスター、2階には昭和40年代以降を中心とした玩具が約1万5千点も展示されています。
「目に見えない概念や音楽など無形のモノを有形にすることで芸術となる」と若木さんは言います。「この世のモノすべてが文化的資産である」という信念のもと、一般的な価値にとらわれず、あらゆるモノを収集。日本のスミソニアン博物館を目指しています。2階の玩具に興味を持つ人が多いそうですが、1階には名品や珍品が並べられています。「ほほう」と感心するモノから思わず赤面するものまでバラエティに富んでいます。一見すると価値がわからないものが多いので、若木さんに説明を求めてください。
古趣 北乃博物館
■ 所在地:北海道登別市登別東2丁目27番地3
■ 電話:0143-83-1730
■ 入館料:大人500円 高校生以下200円
■ 開館時間:10:00~16:00
■ 休館日:毎週水曜日、12月~2月は土・日のみ開館
ヒーローが迎えてくれる地元に愛された食堂
「おいしいラーメンを食べてホットしようヨ」という看板に誘われて登別駅前の「味の美和」でランチ。正面に食品サンプルが飾られているなど、昔ながらの雰囲気の食堂です。
店内に入るとウルトラマンAが出迎えてくれました。ちなみにこのウルトラマンエースは、廃品業者が「北乃博物館」の若木さんに売りに来たもの。価格が合わずに断ったところ、プライスダウンされたのちに美和さんに買い取られたそうです。
みそラーメンに次いで2、3番目に人気だという「あんかけラーメン」をオーダーしました。「あんかけ焼きそば」との違いは麺が固焼きでないこと。皿からこぼれ落ちそうなほど具だくさんで味も確か。チェーン店にはない素朴な味でした。
味の美和
■ 住所:北海道登別市登別東町2丁目25-1 ·
■ 電話:0143-83-3217
■ 営業時間:11:00 – 18:00
■ 定休日:火曜日
【白老町】倶多楽湖に隠された悲劇
そんな白老で、ぜひ立ち寄ってほしいのが「倶多楽湖(くったらこ)」です。登別温泉東側約2kmに位置する周囲約8kmの円形の湖です。流入・流出する川がなく水質はきわめて良好。摩周湖に次いで2位の透明度を誇っています。
湖の近くには廃墟と化したレストハウスがあるだけ。ロープが張られ湖畔に近づくことすらできません。何もなさ過ぎてほとんどの人が3分くらいで立ち去ります。落胆せずに10分ほど湖を眺めていてください。澄み切った空気の中で鳥の声だけが聞こえ、大自然に包まれているような感覚になります。焦らず慌てず飲み物でも飲みながら、ゆっくりと流れる時間を楽しんでください。
白老町唯一の景勝地と言える倶多楽湖ですが、実は登別側からしか行くことができません。湖の観光道路は登別温泉につながっているので「白老で観光した客が登別で金を使う」という悩ましい問題を抱えています。
北海道を離れる瞬間、港灯りが涙でにじむ
苫小牧フェリーターミナルに到着です。ここからどんな思い出を持ち帰るのでしょうか。館内には北海道最多のコンビニエンスストア「セイコーマート」が入店しています。スイーツやカップ麺など、オリジナル商品が豊富です。中でも「山わさび塩ラーメン改」がおすすめ。わさびの刺激に、去り行く港灯りを見つめながらむせび泣くことでしょう。