道の概要
北海道の東端に位置し、オホーツク海に突き出た知床半島は2005年に世界自然遺産に登録された。1964年に全国で23番目の指定を受けた知床国立公園でもあり、半世紀以上にわたって自然環境が保護されている。「知床」は、アイヌ語のsir・etok(シリ・エトク)に由来し、大地の突き出たところ、鼻先を意味する。知床半島の先端部は自動車道がないため、徒歩か、船を使って海側からアプローチするほかは近付けない。海岸線はほぼ手付かずの状態で自然環境が保護されており、日本最後の最北の秘境である。
この知床半島のウトロと羅臼をつなぐ約30kmの道路が『知床横断道路(国道334号)』で、北海道はもとより日本を代表する屈指の高速山岳ワインディンロードだ。景色と走る楽しさのすべてを満足させてくれる道といっても過言ではない。路面の舗装状況も素晴らしく、道幅も広く設計してあるのでバイク・車を問わず快走できる。
ウトロ側からは、知床自然センターを過ぎたあたりから本格的なワインディングがはじまり、途中から羅臼岳を眺望しながら知床峠をめざす。北海道らしいRの大きいゆったりとしたカーブと直線道路が続き、大型バイクの本領発揮という感じだ。知床峠手前の連続する大きなカーブあたりから見るオホーツク海と道路の美しさは絶品で、草原と林が混在する景色は素晴らしい。
知床峠展望台からは迫力ある羅臼岳が間近に迫り、国後島方面が一望できる。太平洋から昇る朝日も素晴らしいので、早朝に走るのもよいだろう。知床峠から羅臼方面はカーブの多いワインディングが続くが、本州の山岳スカイラインのようなヘアピンは皆無である。途中国後島を眺望するポイントがある。道路脇ではエゾジカやキタキツネなどに出会うこともある。人を恐れず逃げないので撮影も比較的楽にできるが、突然の出現で交通事故という危険もあるので、運転は充分に注意したい。ヒグマも当然いるので、発見したら近づくことなく立ち去るようにしたい。
豊かな生態系が残っている原生林の中を突っ切る知床横断道路は、羅臼岳に向う登りも海に向う下りも、日常を完全に忘れさせてくれる絶景快走道路だ。
知床半島ツーリングでは、天気はもちろんだが気温にも注意したい。道東は千島海流(寒流)の影響で、夏は海岸沿いは海霧が出やすく、気温が低下し昼間で20℃を切ることもある。知床半島では東側の羅臼周辺がそれにあたる。ところが、西側のウトロは影響を受けないので気温は5℃くらい上がるのはざらである。ウトロで晴れて暑いなあと思っても、知床峠から羅臼方面に雲海が出ていたら覚悟がいるということである。日々の天気予報のチェックはあたりまえだが、そうした気象の知識を持って北海道ツーリングには出かけたい。
お薦めのシーズン
- 冬季閉鎖期間が長いので夏から秋がお薦め。
周辺立ち寄りポイント
◆知床世界遺産センター
道の駅うとろ・シリエトクに隣接する施設で、ヒグマやエゾシカなどの知床に住む動物の実物大の写真や、ヒグマの爪痕など動物の痕跡の模型を展示し、知床の自然の素晴らしさと利用にあたって守るべきルール・マナーを紹介している。
◆知床五湖展望台
知床五湖駐車場を起点とした全長800mの高架木道の終点にある展望台。道産のカラマツ材使用の展望テラス。展望台からは一湖越しに羅臼岳などを眺望できる。
◆知床羅臼ビジターセンター
人と自然を結ぶための拠点として環境省が設置している施設。知床の自然、歴史、文化、利用に関する展示や映像・解説を通して知床国立公園を知り、その自然を楽しむために必要な情報の提供を行っている。