近年、250ccクラス(以下:クォータークラス)が盛り上りを見せています。2020年にカワサキは30年ぶりとなる4ストローク4気筒エンジンのスーパースポーツモデル「Ninja ZX-25」を発売し、話題を呼びました。80年代のバイクブーム当時はクォータークラスでも4気筒が当たり前。最高出力45馬力を誇るバイクがゴロゴロしていました。1992年にヤマハから発売された異色のバイク「ZeaL(ジール)」を紹介します。
メーカー名:ヤマハ
車名:ZeaL
重量:164 kg
エンジン:水冷4ストロークDOHC直列4気筒
排気量: 249cc
最高出力:40ps/12,000rpm
レーサーレプリカの心臓部を持つネイキッド
1989年にカワサキから発売された「ゼファー400」によって、加熱し続けたレーサーレプリカブームに幕が引かれたことは広く知られていますが、クォータークラスも同様にカワサキが送り込んだ刺客によって勢力図が書き換えられました。
それが1991年に発売された「バリオス」です。ゼファーがひと昔前の空冷エンジンを搭載したのに対して、バリオスはレーサーレプリカモデル「ZXR250」の水冷4ストローク4気筒エンジンを搭載。キビキビ走るネイキッドとして爆発的な人気となりました。
メーカー名:カワサキ
車名:バリオス
重量:141kg
エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ4気筒
排気量: 249cc
最高出力:45ps/15000rpm(A1,A2)
1989年にスズキは「バンディット250」を発売していましたが、バリオスの後塵を拝していました。続くホンダはCBR250RRのパワーユニットを使用した「ジェイド」を発売するも牙城を崩すことができず。最後発となるヤマハが社運をかけて(なのかどうかは知らないが)発売したのが、”熱中”や”熱心”という意味を持つ「ZeaL」です。
メーカー名:ヤマハ
車名:FZR250R
重量:140kg
エンジン:水冷4ストローク直列4気筒DOHC
排気量: 249cc
最高出力:45ps/14500rpm
ジャンプするイルカをイメージ
GKデザインによる「ジャンプするイルカ」をイメージした斬新かつ流れるようなフォルムが特徴的で、レーサーレプリカ「FZR250R」ベースの直列4気筒エンジンを中低速重視にセッティングを変更して搭載しています。
ハンドルとタンクキャップの間に小物入れを設置したり、タンデムシート下にタンデムシートに固定可能なビニール製でA4サイズの雑誌が入る大きさの専用バッグを設けるなど、街乗りに便利な装備が備えられています。低重心エンジンと絞り込まれた735mmの足付き性がよいシートにより扱いやすく、主に女性ライダーやビギナー層をターゲットにしていました。
超絶人気のトレンディ俳優をCMに起用
嗜好性が強いスポーツバイクでありながら、テレビCMを放送していたことからも、ヤマハの力の入れ具合が伝わります。なんとイメージキャラクターは、坂本一生….いや、新・加勢大周…いや、本物の加勢大周が起用されていました。
加勢大周を知らない人のために説明すると、今でいう菅田将暉的な存在です(知らんけど)。1990年に桑田佳祐初監督の映画「稲村ジェーン」で主役に抜擢され俳優デビュー、その後も、吉田栄作・織田裕二とともに「トレンディ御三家」と呼ばれて大人気でした。主演の映画「シャイなあんちくしょう」では、ZeaLに乗るシーンもありました。
パンフレットを見ると、「高いギャラを払っているのだから、徹底的に使ってやれ」とばかりに、ZeaLよりも加勢大周の方が目立っています。当時はバイクに乗る女性も多かったので、イケメンの加勢大周を起用したのも納得です。しかしコンパクトなバイクに、身長183cmもある男を起用したのは、明らかにミスチョイス。ZeaLがポケバイのように小さく見えますね。
あんちくしょう!、こんちくしょう!、こんこんちくしょう!
マイナーチェンジをしながら1999年まで発売されましたが、結局鳴かず飛ばず。イメージキャラの加勢大周も、独立に伴う所属事務所とのトラブルで一時は芸名が使えなくなったり、事務所の嫌がらせによって別人が「新・加勢大周」という芸名でデビューするなど、「あんちくしょう、こんちくしょう、こんこんちくしょう」な状況に陥って人気が低迷。現在はワケあって芸能界を引退しています。
中古車相場は約43万円
ZeaLの中古車の相場は約43万円。ライバルのバリオス(バリオスⅡ含む)の中古車相場、約58万円と比較すると、15万円も安いことが分かります。気に入った方はトレンディに乗りこなしてください。
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