インドのロイヤルエンフィールドは空冷エンジンを主戦力とするクラシカルなデザインを得意とするバイクメーカーだ。現在、同社では空冷SOHCの350/411cc単気筒、水冷DOHCの450cc単気筒、空冷SOHCの648ccの並列2気筒のモデルをラインナップ。今回発表されたのは、その名のとおりミドルクラスのモデルでは最もクラシカルなスタイルを持つClassic350(クラシック・サンゴーマル)の2025モデルだ。
試乗・文:谷田貝 洋暁
写真:河野 正士/谷田貝 洋暁
ヘッドライトのLED化などさらに魅力がアップしたロイヤルエンフィールド・クラシック350
2025年モデルにおける最大の改変ポイントはヘッドライトとポジションランプが、従来のバルブ式からLED光源に変更されたこと。また右スイッチボックスにUSBタイプCのを備え、一部の機種はターンバイターン式のナビゲーション表示システムのトリッパーやLEDウインカーを装備することになった。
<SPEC>
●全長/全幅/全高:2,145mm/785mm/1,090mm
●装備重量:195kg
●シート高:805mm
●燃料タンク容量:13ℓ
●エンジン型式:空冷4サイクル単気筒SOHC 2バルブ
●総排気量:349cm³
●最高出力:14.9kW〈20.2PS〉
●最大トルク:27N・m〈2.7kgf・m〉
●変速機: 5速
●ブレーキ形式:前φ300mmディスク、後φ270mmディスク/ABS
●タイヤサイズ(前/後):100/90-19/120/80-18
●価格:694,100円〜728,200円税込(税込)
ロイヤルエンフィールド・クラシック350のは5タイプ7色。カラーによる仕様の違いをどこよりも詳しく説明するぞ!
・ヘリテージ・シリーズ
2025モデルのクラシック350のスタンダードモデルに位置付けられるのがヘリテージ・シリーズ。ヘッドライトにはロイヤルエンフィールドが好んで採用するキャスケット(ツバ)が付き、ワイヤースポークホイールを採用するなどクラシックなスタイリングを追求。国産メーカーをはじめクラシカルなモデルはたくさんあるが、ここまで本格的なレトロ感を持ったバイクはロイヤルエンフィールドくらいである。
というのもロイヤルエンフィールドでは、2005年まで1955年に発売したブリットシリーズの基本構造はそのままに、モデルチェンジを繰り返しながら50年間売り続けていたくらいである。1955年といえば、ヤマハが二輪車第一号機のYA-1を発売した年である。そんなことから、2005年以前のロイヤルエンフィールドは“新車で買える旧車”とか、“走る化石”なんて呼ばれていたくらいだ。
・ヘリテージプレミアム
ヘリテージシリーズよりも4400円高のメダリオン・ブロンズは、ブラックカラーのシートに加え、フェンダーやタンク、サイドカバーなどに凝った装飾を施すなどさらなるクラシックテイストを追求している。
・シグナルズ・シリーズ
もともとイン・パ戦争時に軍用車としてイギリス本国からインドへ輸出。その後、1955年からOEM生産がインドでスタートしたという経緯を持つロイヤルエンフィールド。シグナルズ・シリーズのコマンド・サンドは、そんなロイヤルエンフィールドの歴史を感じられるミリタリーテイスト仕様。
・ダーク・シリーズ
他のモデルとは違い、キャスト&チューブレス仕様のホイールを装備し、ダーク系のカラーリング&ブラックアウトエンジンを採用するダーク・シリーズ。このほか、メーターにトリッパーを採用したり、レバーに調整機構が付いたりとヘリテージ&シグナルズシリーズとは差別化がされている。
・クローム・シリーズ
シリーズの最高級モデルに位置付けられているのがクローム・シリーズのエメラルド。タンク、サイドカバー、前後フェンダーなどに高級なクロームメッキが施されており、クラシック350シリーズの中でも最もクラシカルテイストが強調されている。装備面でも最上級モデルらしく、メーターにはトリッパーを備え、ウインカーもLED化されるなどヘリテージシリーズとは差別化されている。
走る化石!? 2025モデルのロイヤルエンフィールド・クラシック350をインプレッション
エンジンや車体を含む大きな改変を行なった2005年以降のロイヤルエンフィールドは、シフトチェンジとブレーキーペダルの配置が現代の一般的なバイクと一緒になると共に、セルスターターやディスクブレーキ、そしてその少し後にはインジェクション化などなど、装備が一気に近代化。この20年の間にものすごく使い勝手がよく、乗りやすいモデルに進化した。
ロイヤルエンフィールドのモデルには、シフトペダルとブレーキペダルのレイアウトが逆だった2005年以前のモデルから歴代の車両を試乗させてもらっているが、毎度驚かされるのがエンジンの鼓動感だ。
このクラシック350も同じで、ロングストロークかつ重めのクランクマスを採用することで、慣性モーメント(イナーシャ)を強くしており、スロットルを開けると「ドッ、ドッ、ドッ……」という強い鼓動感とともに、後輪が力強く路面を蹴り進む感覚が味わえるのだ。
決してレスポンスのいいスポーティなフィーリングのエンジンではないので速くはないが、 街中で多用する極低速から中速までの速度域では、この重めのクランクマスを活かしたテイスティな力強い走りが楽しめる。
車体に関してもクラシックな見た目どおり、決してコーナーを攻めるようなキャラクターではなく、エンジンの鼓動を感じながらゆったりのんびり流すくらいのペースで走るのが面白い。フロント19インチホイールのおかげで極低速から安定感が出るので交差点の右左折もスムーズに行えた。
このクラシック350シリーズは、349ccのバイクということで普通自動二輪免許で乗ることができることもあり、免許取り立ての初心者がファーストバイクとして購入を検討することも多いと思うが、低速トルクが強くてエンストしにくいキャラクターは十分、ビギナーにもおすすめできる。
ひと昔前のロイヤルエンフィールドというと、外車であること以上にちょと手を出しにくいクセの強いメーカーであったのも事実だが、現行モデルのロイヤルエンフィールドならそんな乗りにくさなどは皆無で普通に乗りやすい。それでいて本格的な旧車のスタイルや強めのエンジン鼓動を楽しめるのだから嬉しいかぎり。しかも、なんとインド本国の意向で“3年間の距離無制限メーカー保証”が全車についていることもあり、誰もが安心してロイヤルエンフィールド車を選ぶことができるようになっている。