1953年よりオーストリアでオートバイの生産を開始したKTM。
オフロードモデルを得意とし、ラリーやモトクロス、エンデューロなど数々のオフロードレースカテゴリーでタイトルを手中に収めてきたメーカーだ。
近年は魅力的なロードモデルも輩出し、ロードレース世界選手権のMotoGPクラスにも参戦しているほど。
そんなオフロードを得意とするKTMの最新アドベンチャーモデルの最大排気量マシンが、『1290スーパーアドベンチャーR』だ。
大きさに圧倒されるも、意外に優しい!?
重心の低さからくる取り回しの良さ
取り回しはイメージしていたのよりずっと軽かった。ガードとかいろいろ重そうなものが付いてるバイクだから身構えていたけれども、重心が低く設計されていることもありバイクを傾けた時に“グラッ”とくることが少ないのだ。加えて、車高自体が高くハンドルの高さも高いため、腰を屈めたりする必要もなく力をハンドルに伝えやすい。大型バイクに普段から乗っている人ならば、問題なく取り回しできるはずだ。
足着きは他のアドベンチャーモデルと同等
女性目線というのではなくて、普通に日本人ライダーから見てもやっぱり大きなバイクなのは変わりない。真っ平な路面ならば、両足のつま先が届く(身長167cm)程度。
ただし、この手のシート高のあるモデルでは無理に両足を着いてつま先ツンツン状態より、お尻を少しずらして片足をしっかり着地させた方が安定する。この足の着き方に慣れてさえしまえば問題はないはず。事実、この1290スーパーアドベンチャーRで片足をしっかり着ければ恐怖心を抱くことはなかった。
あとは跨る時が結構大変かも。スタンドを払ってからバイクに跨るか、それとも跨った後にスタンドを払うのかは人それぞれだとは思う。ただし、1290スーパーアドベンチャーRなら跨ってからスタンドを払うよりも、先に車両を起こしてスタンドを払ってから跨ったほうがスムーズに乗ることができるのでオススメ。
車格に見合った楽なポジション
大きな車格のとおりリラックスしたライディングポジション。アドベンチャーマシンならではの大容量タンクはボリュームがあって、着座するときに前寄りだと足は若干開き気味になった。目線は高く視野がひらけているから、街なかからツーリングまで周囲の状況を確認しやすい。
扱いやすい160馬力!
さっそく試乗してみた。160馬力と聞くとさぞかし暴れん坊なんだろうと思いきや神経質にならずに乗れる! 最新のABSとトラクションコロールなど電子制御がふんだんに盛り込まれ、ライディングモードはストリート、スポーツ、レイン、オフロードから選択可能。限られた場所で試乗したこともあってストリートを選択。低速域ではスロットルレスポンスは思いのほか穏やかだ。エンジン回転数が上がってパワーが立ち上がってきてからも、そんなにグイグイ行く感じがなく、逆に160馬力も力があるとは思えないくらい。でも、大きくスロットルを開ければしっかりと頼もしい加速をしてくれる。エンジン回転を上げればパワーが出るのは当たり前だけど、スロットルの開度を大きく操作するか程々に開けるかでパワーの質が違ってくる。力が必要な時だけ意識して大きくスロットルを操作し、普通はほどほどの開度に抑えておくような使い方がいい。そうやって使いこなせばすごく扱いやすいエンジン。
軽い走りに驚き
車重は228kgあり決して軽くないはずなのに(このクラスのアドベンチャーモデルとしたら軽いけど)、走り出すと重さがフッと消えてしまう。切り返しも軽くて、リーンさせれば自然にバイクが曲がる。勝手に行きたい方向にスイスイと流れていくようなフィーリングで走れるのには驚いた。オフロードバイクで定評のあるKTMだから、アドベンチャーマシンといえどもダートでのコントロール性を重視し、それが結果としてあらゆる路面や状況での扱いやすさにつながっている。
ダートを考慮した足回りは舗装路でも快適
乗り心地がとても良い。路面の凸凹を乗り越えても強い衝撃が全く伝わらず、ふわっとした走り心地。さらには快適な座り心地のシートに標準装備でクルーズコントロールも付いているから、長距離ツーリングへいっても疲れないだろう。
なめらかな走りを実現するクイックシフター+
オプションのクイックシフター+がすごく滑らかで、低回転域でも高回転域でも引っかかりや衝撃がなく、アップ/ダウン共にスムーズに繋がる。この滑らかというのがポイントで、ストレスがないからより走りに集中できるし疲れない!
気は優しくて力持ち
アドベンチャーモデルは大きいから乗る人を選ぶように感じるかも。でも、実際に乗ってみるとそんな気むずかしいことはなく、ライダーにしっかりと寄り添ってくれる。これは最新の電子制御技術がふんだんに盛り込まれていることや、長いスイングアーム、独特なガソリンタンク形状による低重心化など、KTMの持つさまざまな技術が投入されているから。
見た目の大きさに尻込みせず、ぜひ一度乗ってみてほしい。大柄でパワフルなのに、実はイージーで扱いやすい1290スーパーアドベンチャーRにきっと驚くことだろう。
KTM 1290 SUPER ADVENTURE R 詳細
エンジン型式:水冷4ストローク 75°V型2気筒
動弁型式:DOHC 4バルブ チェーン駆動
排気量(㎤):1301
内径×行程(mm):108×71
圧縮比:13.1:1
最高出力(kW[PS]/rpm):118[160]/9,000
最大トルク(N・m /rpm):138 /6,500
燃料タンク容量(L):約23.0(含む予備約5L)
潤滑方式:ドライサンプ(3ポンプ式)
潤滑油量(L):3.6
軸距(mm):1578
最低地上高(mm):242
シート高(mm):880
車両重量(kg):228(半乾燥)
乾燥重量(kg):221
乗車定員(人):2
燃料消費率(L/100km):5.7(17.5km/L)
タイヤ(前/後):90/90-21 M/C 54V TL / 150/70ZR-18 M/C 70W TL(チューブレス)
サスペンションストローク(前/後mm):220/220
フレーム形式:クロムモリブデン鋼管製トレリスフレーム。パウダーコート塗装