東京モーターサイクルショーで衝撃のデビューを飾ったHAWK11(ホークイレブン)。
今年42歳の筆者よりも年上のライダーは「懐かしい」と感じたのではないだろうか?HAWKというネームは1977年に初めて使われたからだ。
最近では大人気漫画東京卍リベンジャーズに登場したことで知った人も多い事だろう。
6月7日~9日まで行われたHAWK11のメディア向け試乗会に参加したので、ディテールや走行した感想をお伝えしよう。
あふれ出るカスタム感がスゴイ
やはり最大の特徴はロケットカウルだろう。まずは素材に注目して頂きたい。
通常メーカーが外装に採用するパーツはABSを採用することが多いが、HAWK11のロケットカウルにはFRPが採用されている。
これはHAWK11が国内市場向けモデルとして予定されていることが起因している。
HAWK11は年間販売台数目標を1200台としているが、海外市場には販売しないことを考えれば製造数は少ない。そのため、高額な金型が必要となるABSを採用せず、FRPを選択したというわけだ。
これはホンダが手掛けるアーキテクチャーシリーズプロジェクトの考え方として、市場規模や設定台数に対応した作り方も検討し開発するという発想から生まれたものだ。
筆者はパーツメーカーに勤務していたが、車両メーカーがFRPを使ったパーツ採用するのは極めて異例だ。
FRPは高額な金型を必要としないが、ABSが射出成型によって製造できるのに対して、基本的に職人の手作業によって作らなければならない。
そのため生産数の少ないアフターパーツメーカーが採用することが多く、車両メーカーが採用するのは異例というわけだ。
ただ実際にHAWK11に装着されたロケットカウルを見てみると、かなり複雑な形になっており製造する職人の苦労がうかがえる。これを年間1200個作るのは大変そうだ。
ウインカーにはLEDを採用しているが、注目してほしいのはそこじゃない。なんとウインカーはロケットカウルに直接マウントされているのだ。
通常ウインカーはフレームや金属のステーを介して装着されることが多いが、FRPは弾性率が低く強度が高いために実現した装着方法と言える。
ミラーはなんとロケットカウルのステーにマウントされている。車体は基本的にNT1100やアフリカツインをベースとなっているが、ロケットカウル周りにHAWK11のデザインアイデンティティが集約していると言っていいだろう。
HAWK11の足つき
HAWK11のシート高は820mm、車両重量は214kg。
最近のロードスポーツモデルとしては平均的なシート高で車両重量は排気量を考えれば軽量と言える。
筆者の身長は164cm、体重は62kgの筋肉質の昭和体型だが、実際に跨ってみると両足はつま先ギリギリ、片足でも踵はつかず、つま先がべったりつく程度で、主観としては数値より足つきが悪く感じる。
NT1100やアフリカツインと比べると前後サスペンションが硬めに設定されていることから、ライダーの自重による沈み込み量が少ない。
加えてシートは絞り込まれているが、サイドカバーが少々横に出ているので股が広がってしまうのが要因だろう。
少し速いがコンセプトで街中の使い勝手も最高
メディア向けの説明会ではHAWK11は早くない、でも少し速いを目指したとのこと。
アフリカツイン、レブル1100、NT1100はHAWK11と同じエンジンを採用しているが、エンジンの特性としては「まさに」という感じだ。
速くないというと語弊があるが、スロットルを多少ラフに捻ったとしても自分の想像を超えるような加速はしないのだ。
そのため「何をいまさら」と思いながら試乗をスタートしたが、HAWK11はどの兄弟モデルよりアクセルレスポンスにパンチがあるように感じた。
ライディングモードはスポーツ、スタンダード、レイン、ユーザーから選択することが可能で、どのモードで走っても街中で扱いにくいという事はないが、スポーツはアクセルの開けはじめにパンチ力がある。
やはり自分の想像を超えるような加速は見せないのだが、少しラフにアクセルを開けると自分のスイッチがスポーツモードに切り替わるような感覚がある。
アクセルを多めに開けた時にマフラーの音が変わり、バリバリと迫力のあるサウンドになることも気持ちを盛り上げる。
街中でのストップ&ゴーで足つきが気になる場合には、リアサスペンションに採用されているリモートプロロードアジャスターを試してみるといいだろう。
サスペンションの初期縮みを工具なしで変更できる機構だが、簡単に言えばライダーが乗車時のサスペンションの沈み込み量を調整できるものだ。
ワインディングこそHAWK11の真骨頂
試乗会場となった山中湖からすぐのところに峠道があったので走行してみたが最高に楽しい。
最近のストリートファイター、スーパースポーツバイクはパタンパタンとビックリするぐらい簡単にバイクが旋回していくが、HAWK11は車体の倒しこみに多少手ごたえがある。
「多少」というところがポイントで、曲がらなくて怖いという感覚はないがライダーの意識が必要になるのだ。
どっしりとシートの真ん中にお尻を乗せて走っていくというより、積極的にお尻をずらして体重移動することで気持ちよく旋回していく感覚だ。
子育てが落ち着いてからリターンするライダーも多いと思うが、「昔のバイクはこうだった」と感じるはずだ。
高速道路の走行性能
試乗会場の近くに有料道路があったので走行してみた。
80km/hでの巡行では6速3000rpm程度で、振動も少なく快適に走行することが可能で、少々硬めに感じたサスペンションもダンパーがしっかりと効いているので、ライダーが突き上げを感じることもない。
HAWK11の開発チームによれば「必ずしも機能性のためのパーツではない」というロケットカウルは、見た目を第一に開発されたことを伺わせるが、首から下への風当たりが緩和され疲労が軽減される。
また6速80km/h巡行からアクセルを少し捻ると俊敏に加速することが出来るので、高速道路では6速キープで快適に走行することが出来そうだ。
HAWK11の燃費
HAWK11には燃費計が装備されており、2時間みっちり試乗することが出来たので、ある程度参考になる数値にはなっているはずだ。
今回の試乗で燃費計に表示されたのは23.6km/L。
アフリカツインやNT1100に比べると、ロングレンジのツーリングは想定していないとのことで、確かに比べればタンク容量は14Lと控えめだが、低燃費なので連続航行距離は300kmを超える。
加えて今回の2時間試乗ではお尻が痛くなることもなかった。ディテールをチェックしている時にはシートのあんこが薄く、長距離は厳しそうだな。。。と感じたがこれなら大丈夫そうだ。
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見た目のインパクト以上に楽しく使い勝手が良い
ファクトリーカスタムモデルといっても過言ではない見た目なので、どうしてもまず気になってしまうが、乗ってみれば走りが非常に楽しい。
そのうえロケットカウルのウインドプロテクション効果、乗り心地の良いサスペンション、クッション性に優れたシートはロングツーリングも問題なく許容する。
ホンダはグローバル企業なので、発売するバイクも世界に向けたものが多いが、HAWK11はあくまで日本市場向け。
日本の公道を走るのに最適化された一台と言ってよいだろう。
ただし、昭和体型、低身長の筆者的には、試乗後の開発陣とのやり取りで「足つきはもう少しなんとかしてもらいたい」と伝えたのは付け加えておこう。
文/写真:相京雅行