「GPZ」と聞いて、どんなバイクをイメージしますか。トップガンでトム・クルーズが乗っていた”GPZ900R”と答える人は一般人、かつて最速を誇った”GPZ1000RX”と答えた人はバイク通、”GPZ400S”と答えた人は変わり者、「GPZ400Sに乗っていた」と言う人は、ミラクルひかる以上にミラクル。そんな奇跡のバイクを紹介します。
メーカー名：カワサキ
車名：GPZ400S
重量：169 kg
エンジン：水冷4サイクルDOHC並列2気筒
排気量： 398cc
最高出力：50ps/10,500rpm
♪半分だけよ～大人の真似～
カワサキ・GPZ400Sは、1986年に発売されました。水冷4サイクル2気筒のパワーユニットは、GPZ900Rのエンジンを半分にしたようなイメージのため、「ハーフニンジャ」と呼ばれていました。カウルや操縦性が高いハンドル、重心が低く安定した走り、最高出力50馬力など、バランスよくまとめられたバイクでしたが、人気モデルになることなく、一度のマイナーチェンジで姿を消してしまいました。
敵は身内にあり
GPZ400Sの不人気の理由は、おとなしいデザインだけではありません。一期先輩に「GPZ400R」がいたのが災難でした。1985年にカワサキ初の水冷4サイクル4気筒エンジンを搭載してデビュー。大柄でゆったりしたポジションで、レーサーレプリカとは一線を画する人気を博しました。1986年にカラーリングが一新され、カウルサイドにNinjaの文字が入って人気を継続。同クラスで2年連続となるベストセラーに輝きました。
メーカー名：カワサキ
車名：GPZ400R
重量：176kg
エンジン：水冷4サイクルDOHC並列4気筒
排気量： 398cc
最高出力：59ps/12,000rpm
ツーリングに最適なうえにGPZ400Rに比べて10万円近く安いGPZ400Sでしたが、そのよさが理解されず、鳴かず飛ばずでフィニッシュ。同胞の息の根を止めたGPZ400Rは、その後もGPX400RやZX-4などの後輩たちを返り討ちにし、1990年にZZ-R400が発売されるまで、我が世の春を謳歌したのでした。
しれっと車名を変えて再デビュー
息の根を止められたGPZ400Sでしたが、1994年に「EX-4」と名を変えて復活します。排気量や最大出力はそのまま。カラーリングは落ち着いた単色に変更されたものの、デザインはほとんど変わっていません。目の上のタンコブだったGPZ400Rはすでに引退。「今度こそ」と意気込みましたが…
メーカー名：カワサキ
車名：EX-4
重量：177kg
エンジン：水冷4サイクルDOHC並列2気筒
排気量： 398cc
最高出力：50ps/10,500rpm
またしても邪魔者がいました。ほぼ同時にZRXが発売。しれっと車名を変えただけのEX-4とは違い、水冷エンジンなのに空冷風のシリンダーフィンが刻まれるなど、カワサキの本気度がビンビン伝わる一台です。
メーカー名：カワサキ
車名：ZRX
重量：185kg
エンジン：水冷4サイクルDOHC並列4気筒
排気量： 398cc
最高出力：53ps/11,000rpm
発売当時に、EX-4とZRXを試乗する機会がありましたが、腰高のZRXに対し、EX-4は重心が低く安定感たっぷり。最高出力はZRXよりも3馬力下回りますが、パワー不足はまったく感じません。「玄人受けするバイクが受け入れられる時代が到来すればいい」と思ったものです。
ホンダに隠し子が発覚！
とても地味な存在のGPZ400S/EX-4ですが、ホンダにドッペルゲンガー的にそっくりなバイク、「ゼルビス（1991年）」が存在していました。一世を風靡したVT250Fの末裔に当たるバイクで、水冷・V型2気筒エンジンを搭載しています。ゼルビスが489,000円なのに対し、EX-4は499,000円と、その差は1万円ポッキリ。EX-4がメチャクチャお買い得だったことが分かりますね。
メーカー名：ホンダ
車名：ゼルビス
重量：172kg
エンジン：水冷4サイクルDOHC・V型2気筒
排気量： 249cc
最高出力：36ps/11,500rpm
ツインエンジンが認められる時代が到来
日本では全く評価されないGPZ400S/EX-4でしたが、質実剛健な気質のヨーロッパでは人気を博していました。その後もカワサキはER-4n/ER-6n、Z400/Z600など、ツインエンジンモデルを定期的に発売しています。カワサキの開発者は、長い時間をかけ、国内に2気筒の良さを広めたかったのかもしれませんね。
