2021年の夏は気温が非常に高かった。だが各社ヘルメットメーカーの新製品を試してみると、ベンチレーション機能が強化されており、夏でも快適に使うことができた。とりわけ、デザイン・価格・機能性のバランスが良く、記憶に残ったのが日本では新興ブランドとなるLS2のコプターであった。
日本のヘルメットメーカーでは見たことがないような大型ダクトを採用しており、一目でベンチレーション効果を期待させるシェルデザイン、シールド下部にもベンチレーションを設ける独特な機構の効果が高く、加えて軽量なABS防体、脱着が楽なクイックリリースバックル、日本仕様にだけ採用されているDリングなど「お値段以上」の性能と使い勝手を感じせる逸品だったのだ。
そのLS2が2022年春にリリースするのがFIM/MFJ公認レーシングフルフェイスヘルメット、『THUNDER C GP』だ。帽体には軽量で強度に優れたカーボンが採用され、高い空力性能を感じさせる迫力のあるエアロ形状が取り入れられている。驚いたのは価格でカーボンが71500円(税込)、ブルーカーボンイエローが74800円(税込)となっている。
カーボン帽体のヘルメットとしては破格なのは間違いないのだが、SHOEIやARAIのレーシングフルフェイスヘルメットと同等の価格帯は消費者の目も厳しくなる。忖度なく消費者代表として感想をお伝えしたいと思う。
THUNDER C GPの付属品は1万円以上の価値あり!
THUNDER C GPの発売日は2022年2月1日。タイミングよく発売前ながら総代理店の株式会社セイデンからサンプル品を借りテストすることができた。早速開封してみると箱に帽体がプリントされている。赤と黒の配色はいかにもレーシーな感じで気持ちがあがる。
箱を開けてみると、ヘルメット以外にも入っているものが多くて驚かされた。同梱されていたのは、
- ダークスモークシールド
- レーシングノーズディフレクター
- 簡易ヘルメット台
- ティアオフフィルム5枚
- ピンロックシート
- 六角レンチ
- ヘルメットバッグ
- ヘルメット袋
合計8点だ。
色々なメーカーのヘルメットインプレをしてきたが、ここまで多くの付属品が入っているのは初めてだ。スモークシールドは3000円ぐらいで別売りしていてもおかしくないと思うし、ヘルメットバッグは4000円~5000円ぐらいで売られていても違和感がないほど質感が高い。
簡易ヘルメット台はヘルメットを磨くときやシールドの付け替えなどのメンテナンス、インカムの取り付け時などに便利。筆者はアマゾンで購入したヘルメットメンテナンスリングを使っているが2000円ぐらいだった。そう考えると付属品の金額を概算しただけで合計1万円程度の価値があると言っても過言ではない。
THUNDER C GPのデザインをチェック
先に申し上げておくことがある。筆者が一番好きな色はブルーで、ブルーと蛍光イエローの組み合わせが最高だと思っている。そのため THUNDER C GPのブルーカーボンイエローの配色は最高すぎるのである。だからLS2のツイッターアカウントで THUNDER C GPのブルーカーボンイエローを見かけた時には、担当者に「サンプルが来たらすぐにインプレをやりたいので貸してください!」とお願いするぐらいの勢いであった。
実際に製品を見てみてみると、ブルーと蛍光イエローの配色部分のクオリティはイメージ通りのものだった。だがカーボン部分に関しては、想像以上に高い質感を感じられた。写真で見る限りカーボン部分はマットな感じなのかと思っていたが、カーボンシートの上にブルーのクリアが張ってあるように見える。
レーシーなイメージが強い綾織りカーボンをヘルメットの頂点部分で張り合わせてあるものの、他の部分は切れ目がない。安価な製品だとあちこちに継ぎ目が目立つものもあるが、THUNDER C GPは「うまい職人が張ってるな」と実感した。
ベンチレーションは額に一か所と頭頂部左右に一か所ずつ、そして口元に一か所配されている。口元はシールドの曇りを取るためのデフロストの他に、口元に直接風を取り込むことができる。以前テストしたSHUMAは最高のベンチレーション性能だったので、 THUNDER C GPも試すのが楽しみだ。
後頭部には風が抜けるためのエアロダクトがついているが、真ん中のエンド部分は金属のような質感を演出しマフラーのように見せるためにシルバーに塗装されている。更にエアロ効果を生み出すためにカナードのようなリブが後頭部下の方に密集して配されている。横から見ると後ろに張り出したエアロとカナードの迫力が半端じゃない。
Dリングを触ってみると軽いことに気が付いた。軽量に仕上げるためにアルミが使われているのだろう。更に赤のアルマイトで仕上げていると予想される。パーツ一つとっても一切の妥協を感じない。
THUNDER C GPの内装は質感が超高い!
THUNDER C GPの内装を外してみた。チークパッドはボタン3点、トップは2点で固定されている。ボタンは国内ではあまり見たことがないようなものが使われているが、SHUMAでも一度見ているので取り外しは迷わなかった。
トップ内装はカーボンの平織りのような柄がプリントされておりレーシーな雰囲気がある。差し色の赤で「GP THUNDER C」と製品名が入っている。触ってみるとゴムのような感触で質感の高さを伺わせる。前側のプラスチック部分には「ALWAYS AHEAD(常にさきへ)」というLS2のキャッチコピーが刻印されている。
THUNDER C GPの重量をチェック
筆者はフルフェイスヘルメットを使い続けているが、 THUNDER C GPのようなレーシングフルフェイスは使ってこなかった。なぜかと言われれば理由は二つあるのだが、一つは身長が低いのでエアロパーツが付いて帽体が大きいヘルメットを被ると頭が目立つから、そしてもう一つは重いからである。
だがカーボンを採用すればFRPやABSベースよりも軽くなる(強度と厚みを出すために多少FRPは使っている)。更にカーボンの柄が美しいので本来は塗料もクリアを塗る程度で済んでしまうのである。塗料なんて微々たるものだろうと思うかもしれないが、意外とヘルメットの重量中で塗料がしめる割合は小さくない。
今回はグラフィックモデルをお借りしたので塗料分は多少重量オンされているわけだが、実際に重量を測定してみたところ、なんと重量は1396gだった。筆者が愛用しているSHOEIのZ-8(グラフィックモデル)は国内のフルフェイスモデル中でも軽量であることがセールスポイントだが1398gなのである。(どちらもMサイズ)これは衝撃的な軽さだ。
※Z-8はピンロックシート付、THUNDER C GPはピンロックシート無し
THUNDER C GPのサイズ感
ヘルメットは基本的にMサイズを購入している。ARAI頭・SHOEI頭なんて言葉があるが、ARAIでもSHOEIでもOGK KABUTOでもMサイズでピッタリだ。 THUNDER C GPは海外メーカーだがサイズ感は日本メーカーと一緒といってよい。
かぶり口は少々狭いので顎ひもを引っ張って広げながら被る。内装を外した際にチークパッドを見たところ「M-L」という記載があったので恐らくMとLサイズは共通なのだろう。クッション性に優れているのでサイズ感は上々だ。
個人的にはレーシングフルフェイスは帽体が大きい印象があるが、着用して写真を撮影してみると思っていたよりコンパクトで驚いた。筆者のように身長が低いライダーもヘルメットが目立ちすぎることはないだろう。
THUNDER C GPを被って走行してみた
レブルに跨り走りだす。軽いことを理解していたが、ヘルメットは重量バランスなどの影響で数値上は軽くても重く感じてしまうこともある。だがTHUNDER C GPは体感的にも超軽い。チークパッドのフィット感が良好で頬や頭全体でしっかり保持できているからだ。
他ヘルメットメーカーではオプション扱いになっていたり、脱着可能だったりするチンカーテンが標準装備で静粛性も優れている。他ヘルメットメーカー製品のツーリングヘルメットで、更に静粛性に優れた製品は知っているが、比べたらの話で性能的には上々といえるだろう。
試乗は2022年1月に行ったが数日ぶりに最高気温が二ケタ台になり、厚着していたこともあり撮影中に寒さを感じることがなかった。30分ほど全てのベンチレーションを閉めて走行していると頭が蒸れてきたので、すべてオープンにしてみる。
THUNDER C GTにはピンロックシートが付属されているが、今回はシールドに装着せずに走行していたため、信号待ちの度に曇っていたが、顎のベンチレーション開閉後はデフロスト効果で曇らなくなった。更に口元に直接外気が入ってくるので涼しい。額の部分のベンチレーションも下道の低速走行であっても効果を充分に感じることができた。
念のため高速道路で空力を確かめてみたが、サーキットなどでの走行を視野に入れているヘルメットなので問題があるはずがなかった。また頭頂部のベンチレーション効果も、高速域だと体感しやすい。冬場はベンチレーションを全部開けて走ると寒さを感じるほど。特に口元は風の流入量が多いので閉めておくことをお勧めしたい。
動画では走行しながら性能を検証しています
レーシングフルフェイスだけど、下道走行でも使い勝手最高の商品
レーシングフルフェイスは大きく重いという印象だったが、まんまと覆される結果となった。軽いので首や肩への負担も小さく毎日使う方にもお勧めできる。
ただ一点気になることもあった。最近ではインカムを使うライダーも増えてきていると思うが、FIMなどのレースの適合を取るためにインカムのスピーカーを収めるスペースは設けられていない。耳と帽体の隙間は大きくないため、薄手のスピーカーであっても微妙なところだ。
レーシングフルフェイスだから仕方がないと言われてしまえばそこまでだが、一般道での使い勝手も最高という印象だけに残念に感じた。なお筆者のようにモトブログをする場合には、外部マイクを口元にクリップで固定することになるが、ノーズガードにピッタリ装着することができたので追記しておこう。