筆者は2021年4月まで、東京のはずれにあるバイクパーツメーカーに勤務していた。毎日往復50キロ、2時間バイク通勤し、更にパーツの強度や性能テストでもバイクに乗っていた。ここまでバイク漬けだと、いくら好きでも休みの日には少し距離を置きたくなる。冗談抜きに年間で300日以上バイクに乗っていたのだ。
だが現在は仕事でバイクに乗ることはあっても、通勤というものがない。おそらくバイクに乗っている日数は当社比2/3程度に減っているはずだ。2021年後半ごろからプライベートでもバイクに乗りたいという気持ちが芽生えてきた。
今年は初日の出ツーリングに行ってみようか・・・
そう思い始めた時に、沼にどっぷりはまっているアウトドア用品メーカー、モンベルのホームページであるものを見つけた。ダウン製品の保温性チャートである。
アウトドア用品メーカー最強のダウンを着て、極寒の初日の出ツーリングに出かけたら暖かいのだろうか?
好奇心に火が付く。
チャートや商品紹介ページでは
- 厳寒地や高所登山にも耐え得る保温性
- 南極観測隊や極地冒険家の意見を取り入れた
胸躍るキーワードが盛りだくさんである。
計画実行予定日は2022年1月3日。年末の忙しい時期に無理を言って、モンベル広報に最強ダウンをお借りした。準備は整ったのである。
モンベル最強ダウン ポーラーダウンパーカを着てみる
保温性チャート最強ダウン、ポーラーダウンパーカーを着用してみた。今回は同じコンセプトのオーバーパンツ、ポーラーダウンビブもお借りしている。
バイク関係者の3人に1人は、このワードを口にするだろう。
「ビバンダムみたいだね」
ビバンダムとはミシュランの歴史あるキャラクター。正式名称ムッシュビバンダムである。彼はよくモコモコフォルムの形容に使われる。
筆者は身長164cm、62kg。ジャケットはSサイズ、デニムは28インチを愛用している。お借りした製品はSサイズだが、ダウン、ビブどちらもサイズ感には余裕がある。
気温3度のなかを走り出す
1月3日5時40分自宅を出発。外気温は天気アプリによれば3度ぐらいだ。上半身はメリノウールのロンT、ニット、下半身は防風デニムの上にそれぞれダウンを着用した。外気温3度、そう感じさせないのはダウンの保温性が素晴らしいからだろう。だがインプレ用に借りていたホンダ、CRF250Lで走り出して、しばらくして想定外のことに気がついた。
チートと言っても過言ではないぐらい体はポカポカしている。だが走り出してしばらくすると、腕の部分が少し冷えてくるのだ。腕の部分は立体裁断で動きやすいパターンとなっているが、前身ごろと比べて縫い目が多い。そのため多少風が入ってきているのではないかと思う。薄着なのも要因の一つだろう。
前身ごろは前立てが二重になっており、ファスナーからの風の侵入がなく、縫い目からの侵入も感じない。体の真ん中がポカポカなので致命的に体が冷えてくることはない。南極観測隊の意見も取り入れているというから、一定の防風対策がされていることが予想されるが、バイク走行での風圧は想定以上ということだろう。
海風に30分さらされても体はポカポカ
混雑した所に行くのはコロナ禍につき避けたいところ。インターネットで調べてみると、川崎の東扇島が穴場のようだったので目的地に定める。自宅から40分程度で行ける手軽さもありがたい。到着したのは6時20分ごろだ。
1月3日の日の出は6時50分頃が予想されている。駐車場には2台ほど車が止まっており、日の出を待っているようだ。ヘルメットホルダーにD管をかけると、撮影スポットに向かう。カメラが趣味と思われる初老の男性と筆者の貸し切り状態であった。
海風が強く吹き付け、グローブを外した手が途端に冷たくなる。気温3度+強い海風は、体感的には更に寒く感じるシチュエーションだが、顔と手以外はずっとポカポカなままだ。かなり強い風が吹いていたが、走行中に風の侵入を感じた腕部分も含めて冷気は感じられない。
脇のファスナーを開けると裏起毛になっておりハンドウォーマーとして使うことができる。手を突っ込むと冷え切った手の感覚が少しずつ戻ってきた。この状態なら30分間快適に待っていられそうだ。
予想の時間と変わらず太陽が姿を見せてくれた。気が付くと、さっきまで初老の男性と二人で貸し切りだった撮影スポットには4組ほどの人が集まっていた。10分ほど撮影して立ち去る。都合40分間ほど海風にさらされていたことになるが、体はポカポカなままだ。アウトドア用品メーカーが本気で保温性を考えて作ったダウンは伊達じゃなかったのである。