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【hit-air】バイクレースで装着義務化が加速する“着用するエアバッグ”の有用性

※記事内容は全て執筆時点の情報です。

近年、ライダーの安全意識は数十年前とは比べ物にならないほど高まっている。これは、バイクが成熟したオトナの趣味として社会に根付こうとしているからでもあるのかも知れない。しかし、ライダーが着用するタイプのエアバッグシステムに関しては、まだまだ一般ライダーの間に浸透している状態にはほど遠い。

一方でロードレースの世界では、エアバッグ装着義務化の動きが近年に加速中。例えば、2018年にはロードレース世界選手権(MotoGP)の全クラスでレザースーツへのエアバッグ装着が義務化され、全日本ロードレース選手権でも2020年から18歳以下の装着が必須となった。そんな全日本でレーシングサービスも展開する、着用型エアバッグシステムのパイオニアが、無限電光の「hit-air」だ!

目次

hit-airのエアバッグシステムとは?

無限電光は1995年にバイク用エアバッグシステムの研究開発をスタートして、今から四半世紀近く前の1998年に世界で初めてバイク用のエアバッグジャケットを発表。翌年にはこのシステムを欧州のバイクウエアブランドにOEM供給し、2001年にはオリジナルとなるhit-airジャケットの販売も開始した。

その後、hit-airはレースの世界にも進出。レザースーツの上から着用するベストタイプの市販製品(RS-1)に加え、現在は各レザースーツメーカーにOEM供給するスーツ内蔵型ネックサポートタイプのエアバッグシステム(RW-01)も展開している。2020年から、全日本ロードレース選手権で18歳以下のエアバッグ着用が義務化。これを受けてhit-airでは、2021年からレーシングサービスを開始して、レースの現場で作動チェックや補修などのサポートに当たっている。

シンプルかつ安価。しかしその効果は非常に高い!

hit-airのエアバッグシステムは、一般公道用でもレース対応製品でも、すべて同じ仕組みによって作動。バイクの所定された位置に伸縮ワイヤーを装着し、乗車時に着用したエアバッグシステム側のコネクターと接続。転倒時にライダーとバイクが離れ、ワイヤーに規定以上の力がかかると、システムに内蔵されたCO2カートリッジボンベが作動してエアバッグが展開する。

ロードレースでは、ライダーがいわゆるハングオフのようにカラダを大きく動かしながらマシンを操縦。そのため、それらを考慮したワイヤーの長さに調整する必要がある。ただし、ワイヤーが長すぎれば転倒時の作動が遅れるため、余裕を持たせればよいというものでもない。また、車体側のワイヤーは強固なフレームに装着することが前提だが、マシンによってはシートフレームがない(または極端に短い)こともあるため、車体側ハーネスの装着位置に工夫が必要になる場合もある。hit-airでは、レーシングサービスを全日本ロードレース選手権の全戦で実施することで、適正な装着の相談や作業サポートも請け負っている。

上江洲葵要選手が語るhit-airの信頼性

現在16歳の上江洲葵要選手は、2022年の全日本ロードレース選手権に「41Planning With PENSKE」からフル参戦するライダーだ。全日本はすでに3年目で、今季はアジアロードレース選手権のUB150(アンダーボーン150)クラスにもフル参戦。通信制のN高等学校で学びながら、地元である大阪府羽曳野市をはじめとした多くの応援を受け、全日本初優勝とアジアでの活躍を目指す。

「父も全日本などに参戦するレーサーだったのですが、自分がレースをはじめたのは10歳くらいで、今のライダーとしては遅め。じつは幼い頃は、バイクのエンジン音が怖かったんです。レースはミニバイクからスタートしたのですが、その後に地方選手権となる鈴鹿サンデーロードレースのCBR250Rドリームカップに参戦。この際に着用義務があったことから、そこからhit-airのエアバッグシステムを継続的に使用しています」

2022年シーズンは、アジアロードレースとの掛け持ちにも苦しんで全日本開幕戦は12位、2戦目ではマシントラブルにより決勝出場をキャンセルと、不本意な結果が続いてしまっている。とはいえ、その鋭い走りには将来的に世界で活躍することも期待されている、若手有望株のひとりだ。

「地方選参戦時は、ベストタイプのhit-airを使用していましたが、J-GP3にステップアップした一昨年からはスーツ内蔵型のネックサポートタイプを使っています。これは、少しでも空力特性を高めることが目的。ベストタイプのほうが安全性はより高いと思いますが、バタつきなどで空力に影響を与える可能性があるため、内蔵型ネックサポートタイプを選択しました。現在は、練習走行時も内蔵型で走行。RSタイチさんが、本番用と練習用のレザースーツを同じ寸法で仕上げてくれていることもあり、いつも同じフィーリングで走りたいという狙いがあります」

着用は意外と気にならず、プロテクション効果は抜群

現在の若手ライダーとしては、レース歴が短めの上江洲選手だが、それを補うかのようにアグレッシブなライディングと密度の濃いレース活動を続けてきた。そのぶん、やはり転倒は多くなりがち。だからこそ、hit-airの有用性を実体験として知っている。

「初めてベストタイプを装着したときも、違和感などはとくにありませんでした。ミニバイク時代はハイサイドによる転倒が多く、肋骨を頻繁に痛めていたのですが、CBR250Rで同じような転倒をしたときに、まったくケガをしなかったことが印象的。これまで、数えきれないくらいエアバッグを作動させました……。ちなみに、『膨らんだときにスゴい衝撃なのでは?』などと思われるかもしれませんが、実際にはまるでそんなことはなくて、『あ、いつの間にか開いて守ってくれたんだ……』という感じです。SRS-Motoに在籍していたときは、ボンベ交換などの簡単な補修は自分で実施していました。でも最近は、練習で転ぶことは少なくなり、レースウィークに入ってからはhit-airのレーシングサービスがあるので、とても助かっています」

なお上江洲選手は、「プロテクション性能だけで考えるならベストタイプのほうが上なので、一般ユーザーがサーキット走行会や地方選手権などで使用するならこちらがオススメ」という。ただし全日本ライダーの場合、ベストを装着することでレザースーツのスポンサーロゴが隠れるとか、空力に多少の影響を与えるなどのデメリットもある。hit-airは、両タイプを用意することで、各ユーザーが自分にとって最適な製品を選べる体制を構築しているのだ。

アグレッシブに攻められる安心感

これまでhit-airを使用してきた上江洲選手にとって、もはやライディング時のエアバッグ装着はヘルメットを被るのと同じくらい当然のこと。「普段、ミニバイクで練習するときもあるのですが、この際もエアバッグは必ず着用」しているという。

「2022年の2戦目は、マシントラブルにより予選でハイサイドのように転び、頭から地面に落ちたのですが、エアバッグがしっかり作動して首まわりを保護してくれたので、足はケガしたけど首まわりのケガはまったくありませんでした。僕自身は、転倒のリスクが少しでもある走行時にエアバッグなしで走るというのはとても不安です。逆に、エアバッグがあることで心理的にはちょっとアグレッシブになれると思います。レギュレーションでの義務化がなくても、継続的に使いたいアイテムです!」

「義務」ではなく「当然」になるように

全日本ロードレース選手権でレーシングサービスを展開するhit-air。しかしその理由は、18歳以下への装着が義務化されてhit-air製品を使用するユーザーが増えたからだけではない。「過酷なレースでの活動は技術の蓄積にもつながりますが、そういう要素を抜きにしてレースということだけで考えても、レーシングサービスとしての活用は意味を持つ」と、同社の竹内さんは話す。

「例えば上江洲選手のような、現在は義務化により装着している若いライダーたちが、エアバッグシステムの有用性を心から感じて、着用義務年齢を超えてからも使用してもらいたいんです。もしかしたらそのときに選ぶのは海外の他社製品かもしれませんが、うちとしてはそれでも別にいいんです。

とにかく、ライダーの安全意識がこれまでより高まってくれることが第一。

そういったライダーが増え、今後レース界の中心となってくれれば〝エアバッグは当然〟という雰囲気になってくると思います。そのために、現場でのサポート活動を続けているのです。

安全という面からしか貢献できませんが、それがレース業界、バイク業界の発展に繋がっていくと信じています。もちろん他社に負けないワイヤレス製品なども開発中で、今後より多くのライダーの安全をサポートできる機会を広げていくことが責務だと考えています」

実際に上江洲選手は、着用義務がないアジアロードレース選手権UB150参戦時にも「hit-airを使いたい!」と話していて、現在はレーサーとしては特殊な車体形状と“ぶつかり合い”が普通のレース環境に対応するため、ワイヤー装着方法についてhit-air側も検証を続けている。前述のように、上江洲選手にとってhit-airは、120%の力でアグレッシブに戦うときのマストアイテム。上江洲選手のような若い選手権ライダーはすでに多くいるが、彼らが育っていくことで、将来的にライダーの安全意識は確実に向上するだろう。そしてhit-airは、その一翼を担っているのだ。

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