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ハーレーの新型スポーツスター「ナイトスター」試乗インプレッション

※記事内容は全て執筆時点の情報です。

エンジンが水冷化したハーレーダビッドソンの新型スポーツスター「スポーツスターS」に続き、またまた新たなスポーツスター「ナイトスター」が登場しました。颯爽と新たな息吹を吹き込んでくるこのニューモデルに早速試乗し、そのライドフィールはもちろん、ナイトスターの特徴についても細部まで解説します。

目次

ナイトスターのキャラクター

ハーレーダビッドソンの新型スポーツスター・ナイトスター(エンジンガードは別売です)

「ナイトスター」というネームを耳にして懐かしい気持ちになったハーレーフリークもいることでしょう。この呼び名が最初に用いられたのは2007年に登場した先代スポーツスター(いわゆるラバーマウント・スポーツスター)XL1200N ナイトスターでした。それまではどちらかと言えばクロームメッキを配したモデルを豪華版としていたハーレーが一転、マシンの随所をブラックアウトしたダークなカラーリングのモデルとしてドロップした初モデルがナイトスターだったのです。以降、XL883N アイアンやXL1200X フォーティーエイトなど、ダークカスタムモデルが人気を博するようになりました。ナイトスターはそんな時代の先駆けとも言える存在として、2011年までラインナップされました。

2007~2011年のスポーツスターファミリーにラインナップされた”ラバーマウントスポーツスター”XL1200N ナイトスター

昨年(2021年)水冷化した新型Vツインエンジン「レボリューションマックス」とともにデビューした新型スポーツスター「スポーツスターS」に続く第2弾モデルのナイトスター、排気量は975ccと リッターオーバーのスポーツスターSよりもパワーを抑えた排気量違いの同タイプエンジンを心臓に持ちます。

ハーレーダビッドソン・スポーツスター「ナイトスター」レフトビュー

ヘッドからリアエンドにかけて流れるような美しいシルエットに フロント19 / リア16インチという、往年のスポーツスターらしさを取り入れているナイトスター。なかでも驚かされたのはツインショック型の構造になっていることでしょう。先代スポーツスター(ラバーマウント・スポーツスター)まで当たり前だったツインショック構造が、先のスポーツスターSよりシート下部に備わる1本のサスペンションで支えるモノショック構造へと変わった矢先の、このツインショックフレーム。エンジンこそ同タイプながら、フレームやスイングアームを刷新するという驚きのモデルでもあるのです。

ハーレーダビッドソン・スポーツスター「ナイトスター」フロントビュー・リアビュー

バッテリーがラジエター下部へと移動したことから、ぽっかり空いたシート下にサスペンションが備わったスポーツスターSに対して、再びツインショック型となったナイトスターのフューエルタンクがなんとシート下に。一見するとフューエルタンクにしか見えないエンジン上部のボディパーツは、電子機器のカバーになっているのです。オールドファンには懐かしい”水冷ハーレー” Vロッドと同じ構造というわけです。懐古主義モデルかと思いきや、しっかりと先端技術を取り入れた正常進化版スポーツスターと言って差し支えないでしょう。

それではナイトスターのディテールを見ていきましょう。

ナイトスターの特徴

エンジン

エンジンは水冷Vツインエンジン「Revolution Max 975T」(排気量975cc)。スポーツスターSと同じエンジンながら、排気量は抑えめに設定された仕様に。60°クランクが、Vロッドから受け継がれる水冷ハーレーエンジンの歴史を感じさせてくれます。ブラックアウトしたマシン全体に合わせたグレーのカラーリングがほどよい主張になっていますね。

フロントマスク

スポーツスターSとは打って変わってクラシカルなラウンド型LEDヘッドライトが採用され、エアインテークを備えるロケットカウルを備えるフロントマスク。ネイキッドにしてもサマになるのか、(カウルを)外した表情を見てみたいところです。

フロントフォーク

フロントフォークはSHOWA製41mm径の正立フォーク「Dual Bending Valve コンベンショナルフォーク」が備わります。スポーツスターSとは異なる このクラシカルな組み合わせは、往年のスポーツスターそのものと言っていいでしょう。

ホイール

フロント19 / リア16インチという往年のスポーツスターと同じ設計のキャストホイールが備わり、フロントブレーキはブレンボ製シングル仕様となっています。リアだけで180mm、フロントは160mmとかなりマッシブな幅のタイヤが履かされているスポーツスターSに対して、リアのタイヤ幅が150mmと、旋回性の高さを期待させるチョイスになっています。

コックピット

ちょうどスポーツスターSと横並びになっていたことから見比べられたコックピット、マルチファンクションLCDディスプレイが埋め込まれる直径4.0インチの丸型アナログスピードメーターとハンドルバーはスポーツスターSと同じもののよう。ミラーも同じくバーエンド型に。

スポーツスターSと違っていたのはスイッチボックス。サイズそのものは変わらないようですが、スイッチ周りがシンプルな仕様に。同じく「レイン」「ロード」「スポーツ」という3つのライディングモードも備わっていて、この手元のスイッチで変更可能。

ボディライン

まるでかつてのフューエルタンクそのままのようなこのボディパーツは、フューエルタンクにあらず。内部にはECMなど電子機器が備わっており、これはそのカバーパーツなのです。スポーツスターの名を冠することから 人気のシルエットを再現せんと”らしさ”を匂わせるパーツをここに配したわけですね。

シート

シートはマシン全体のシルエットを考慮した流麗なソロシートと、タンデム用シートを分割したタイプが備わります。かつてのスポーツスターのようにボルトオンで外せるものではなく、片方にオープンするタイプ(次ディテールの写真を参照)であることから、ナイトスター用のシートを考案するシートメーカーは土台から新設計で作らなければならなさそう。そう考えると、サードパーティ系シートの価格が高くなりそうな気がします。

フューエルタンク

そのシートをこのように外すと、真下にフューエルタンクの口が現れます。バッテリーもエンジン前部のラジエター下に設置され、全体的に低重心による安定したボディバランスの実現に成功しているのです。

新フレーム(ツインショック)

ナイトスターでもっとも注目したいツインショック構造の新フレーム。デュアルアウトボードエマルジョンテクノロジーショックアブソーバーと名付けられた、コイルスプリングとプリロード調整用のネジ式カラーを備えたサスペンション2本が備わります。スイングアームは見た目こそラバーマウント・スポーツスターのそれに酷似していますが(あまりの細さに「爪楊枝」などと呼ぶ人もいたほど)、こちらのスイングアームは頑強・高剛性なものになっていました。よりスポーティなライディングを支えるのにふさわしいスイングアームですね。

リアエンド

かつてラバーマウント・スポーツスターにラインナップされたXL1200C(後期版)に酷似するテールライトを備えたチョップドリアフェンダー。全世界共通タイプで、ナンバープレートがマウントしているところから下が追加のカバーのようになっているので、ここをよりショート化しようと考えたらテールライトごと移植させる形になりそうです。

エキゾースト(マフラー)

新型エンジンに備わるエキゾーストは2in1タイプのスポーティなものに。かといってメガホンマフラーのように上向いていないので、サドルバッグを備えたい人は問題なくリアの両サイドに設置できそう。

試乗インプレッション

ハーレーダビッドソン・スポーツスター「ナイトスター」ライトビュー

まずまたがってみた際のポジションですが、シート高がスポーツスターSの755mmよりもさらに低い705mm(1G時)ということから、身長174cmのライダーには十分すぎる足つき性、もちろんベタ足でした。かつてのラバーマウント・スポーツスターで難点とされた「サイドカバーの出っ張り」(サイドカバーが太ももに干渉して足が外向きになる = 足つき性を阻害する)は当然ながら解消されており、一方で真下に来るマフラーが足に干渉します。ガードが付いているので火傷の心配などはないですが、社外マフラーを検討する際はこの接触にご注意ください。

気になったのは、ハンドル位置の遠さ。前述したとおりスポーツスターSと同じローライズハンドルバーで、座位置とミッドコントロールステップ、そしてローダウンスタイルな点から、腕がやや伸び気味な印象を受けました。ナイトスターでの楽しみ方にもよりますが、スポーツバイクとしてライディングを楽しむならステップ位置をもう少し後方に、クルーザーとして用いるならプルバックしたアップライトハンドルにしても良いかもしれません。

ちょうど自身のスポーツスター XL1200R(2008年式)で試乗ディーラーまで行っていたことから 比較のような試乗ができたのですが、空冷のエボリューションエンジン(排気量1,202cc)と比べると、スロットルレスポンスと走り出しの速さは「さすが水冷」と言わしめるほどシャープなもの。車重も221kgと、平均260kgと言われたラバーマウント・スポーツスターより40kg近く軽量化されており、スムーズなギアチェンジとともに軽やかに加速していってくれます。BMW R nineTやトライアンフ・ボンネビルといった競合となる水冷ツインモデルと遜色ないパフォーマンスを味わえること間違いなしです。

「ライダーセーフティエンハンスメント」と名付けられたハーレー独自のトラクションコントロールシステムがよりしっかりかかる「レインモード」での走行は、どちらかと言うとナイトスター本来の性能にほんの少し重ったるさを感じさせる仕様で、好天に恵まれた際は「ロードモード」もしくは「スポーツモード」で その能力をしっかり解放しながら走ってあげて欲しいと思います。

スポーツスターS試乗時、そのあまりに凶暴な走りに驚かされた「スポーツモード」も、排気量との相性かニュートラルなスポーツバイクとして楽しめるキャラクターになっていました。リッターオーバーのハイパワーマシンの性能をめいっぱい引き出して操ろうと思うと、それ相応のライディングスキルが必要になります。ゆえに「このバイクの性能を引き出しきれるライダーは日本でもそう多くないはず」と スポーツスターS試乗時に感じたのですが、スポーツモードに入ったナイトスターであれば、”必要にして十分”な性能でワインディング走行を楽しめるでしょう。

またまたの比較で恐縮ですが、スポーツスターSと比べて好印象だったのが旋回性の高さ。フロント160mm幅タイヤとフォワードコントロールステップがバイクの旋回性を損なわせてしまう点がスポーツスターSの難点なのですが、パワーが抑えられている側面があるとはいえ、100mm幅の細みタイヤにミッドコントロールステップという組み合わせだけで こうもライディングパフォーマンスが向上するものなのか、と感心させられましたナイトスター。

特にリア側ですが、ブレーキングの甘さが少し気になったところ。個体差なのかもしれませんが、ナイトスターオーナーは前後ブレーキをバランスよく使いながらコントロールするよう心掛けられると良いかと思います。

まとめ

人気モデルであったフォーティーエイトをフォーカスしたスポーツスターSに対して、新型の水冷エンジンでありながら往年のスポーツスターをモディファイしたシルエットで姿を現したナイトスター。特にリアエンドのツインショックとフレームの組み合わせなど、クルーザーとしての側面を持ち合わせていたラバーマウント・スポーツスターの良いところを備えていることから、スポーツクルーザーとして正常進化したマシンだという印象を強く受けました。ツーリング向きかスポーツライド向きか、どちらにも振り切れるし どちらに振っても楽しませてくれる懐の深さがあるナイトスター。オールドファンであっても、これに乗れば新しいハーレーダビッドソンに対する印象が変わるはず———ぜひ一度実車に触れてみてほしいと思います。

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