名車となることが宿命づけられた650ccの排気量
カワサキというメーカーにとって900ccという排気量は大きな意味を持っている。Z1からスタートし、GPz900Rニンジャ、ZX-9R、そして近年ではZ900RSと、一時代を創出したモデルは全て900ccエンジンを採用している。
次に思いつくのが650ccの排気量だ。こちらはバーチカルツインのW1があまりにも有名であり、それに続いたのが1976年に登場したZ650、愛称“ザッパー”だ。その後、1999年にはW650が発売されており、やはりカワサキというメーカーにとって特別な意味を持つ排気量と言えるだろう。
そして今年、Z650ザッパーの再来と言われるZ650RSが登場する。
約半世紀の時を経て歴史は繰り返す!
70年代にZ1に続いてザッパーが登場したように、Z900RSに続く形で姿を現すZ650RS。半世紀近くを経て令和に再現されたその流れにカワサキファンは感涙ものではないだろうか。
エンジンが四気筒ではないのが非常に残念なところではあるが、往年のザッパーの持ち味である軽量かつ切れ味鋭い走りが受け継がれているのであれば、人車一体、ビッグバイクを意のままに操ることができる楽しさを有するモデルとして大きなヒット作になるのは間違い無いだろう。
そんな新生ザッパーへの期待を込めて、今一度初代ザッパーというモデルを懐古してみたい。
身軽で鋭い走りが欧米市場へインパクトを与えた
ホンダ CB750Fourに続いて4気筒エンジンをパワーユニットとしたカワサキZ1。そのZ1と同じくZ650がメインマーケットに見据えたのが北米市場だった。
先にデビューしたCB、Zは速く快適に長距離を走り切る高性能を有していたが、重量があるため、気軽さという面では650ccクラスの英国車に軍配が上がっていた。そこで市場のニーズから開発にあたり課せられたのが軽量コンパクトで意のままに操ることのできる4気筒モデルだった。
エンジンは750ccのZ2後継とされていたが、プレーンメタル支持のクランク、インナーシム式タペット、一次伝達にハイポイドチェーンを採用するなど、現在のエンジンに通じる近代化が図られていた。
このようなカワサキの先見性は、このザッパーのエンジンがその後次々に様々なニューモデルに搭載されていった歴史からも見てとれる。最終的にはゼファー750のエンジンとしてその歴史を終えるまで、30年近くに渡り生き続けたのだ。
これはZ1の空冷4気筒にしても、GPz900Rニンジャの水冷4気筒にしても、GPz250Rの水冷2気筒にしても同じようなことが言える。基本設計をそのままに、とにかく同系エンジン搭載車が多く、エンジンの息が長いのがカワサキの特異な点といえる。
軽量、コンパクト、高出力のパワーユニットを心臓にした車体は211kgという軽さで、ゼロヨン14.5秒、輸出仕様の最高速は 190km/hを達成。また、身軽な車体とハイパワーエンジンの生み出す、軽快感溢れる走りは多くのライダーを魅了することになる。
国内市場はもとより、海外の目の肥えたバイクファンからの高い評価を集めることになったのだった。
ビッグバイクと中型クラスの間を埋めるミドルクラスの愉悦
90年代に大型バイク教習がスタートした辺りから国内でビッグバイクブームが巻き起こった。そこから魅力的なモデルが各メーカーから登場。パワーウェイトレシオを競うように開発合戦が続いたスーパースポーツや、最高速300km/hを超えるメガスポーツツアラーなど今も記憶に残る名車が生まれたのは事実である。
ただ、ビッグバイクのパワーを公道上で発揮させるのはまず不可能である。その影で密かに人気を集めたのが600cc前後の排気量を持つミドルクラスのマシンだった。
特にヨーロッパ向けに各メーカーラインナップが多かったミドルクラス車は、400ccクラスの車体に600ccクラスのエンジンを積むことで、俊敏な動力性能を有していた。
直線加速や高速巡航ではビッグバイクが圧倒的優位にあるものの、ワイディングや市街地走行、そして何よりバイクを操る楽しさをミドルバイクに見出すライダーは多かった。
そんなミドルクラスに誕生したニューモデルに期待せざるを得ない。
ザッパーの名の由来となった通り「風を切り裂く」ような走りを体感したいものだ。
Kawasaki Z650RS
Z650RS 50th Anniversary モデルも追加発表!
カワサキZシリーズ50周年のアニバーサリーイヤー特別仕様ということで初代Z1に採用された火の玉カラーモデルが発表された。
900ccのZ1火の玉カラーモデルのエンジンはブラックだったので、Z650RS 50th Anniversaryと同じ組み合わせとなる。