本田技研工業株式会社は、ホンダのこれからがわかるメディア「Honda Stories」にて、二輪のカーボンニュートラルの実現に向けてのコンテンツを公開した。バイクの累計生産台数が4億台を越えたホンダが、今後どのようにカーボンニュートラル化を進めていくのかの追う。
【5分でわかる】バイクトップメーカーの責務、二輪車のカーボンニュートラル実現へ向けて
二輪車・四輪車・パワープロダクツを合わせて、年間約3,000万人のお客様と接点を持つ、世界一のパワーユニットメーカー※1であるHonda。そのうち、およそ3分の2を占めるのが二輪事業です。ここでも、2050年にHonda全体のカーボンニュートラル実現に向けて、歩みを加速させていかなければなりません。
しかし、バイクは世界各国でさまざまな用途で普及しており、クルマ以上に厳しい使用環境があることも事実。それを踏まえた、多面的なアプローチが必要です。累計生産台数は4億台を超え、バイクのトップメーカーであるHondaは、どのようにそのカーボンニュートラル化を進めていくのか。その未来を解説します。
※1 Honda調べ
二輪カーボンニュートラル化の現在地とビジョン
Hondaのバイクは、スクーターなどの小型コミューターから大型FUNモデルまで幅広いラインアップが揃い、新興国から先進国まで市場は世界中に広がっています。その使われる環境は、寒冷地から熱帯、そして未舗装路と千差万別。また、国や地域によって経済状況が大きく異なることから、身近な交通手段から趣味まで、人々にとってバイクの位置づけは多岐にわたり、求められる性能も多様です。
なかでも、新興国では、コミューターモデルを中心に、人々の生活に欠かせないライフラインとしての需要が高い一方で、CO2削減への貢献が期待される電動車については、重量や価格が上がるという点が課題です。また、その需要は、各国政府の規制と補助金や減税といったインセンティブ、そして、充電インフラ環境に大きく左右される点も、電動車普及の難易度を高めています。
これまでも、Hondaは、スーパーカブに代表される超低燃費エンジンをはじめ、数々の技術を通じて環境への取り組みを、バイク業界の先頭を走りながら進めてきました。しかし、全社を挙げて目指すカーボンニュートラル実現に向けては、従来の延長線上を進むだけでは不十分です。
そこで、ICE(内燃機関)※2のCO2削減も継続しながら、Hondaはバイクの「電動化」を進めます。2040年代に、全ての製品でのカーボンニュートラル実現を目指し、引き続き環境トップランナーとして業界をリードしていきます。
※2 Internal Combustion Engine・・・燃料を燃焼させて動力を生み出すエンジンのこと
では、具体的にその中身を見ていきましょう。
電動バイクは、その最高速によって、電動自転車(EB、最高速度25㎞/h以下)、電動モペット(EM、最高速度25~50km/h)、電動車(EV、最高速度50km/h以上)という3つのカテゴリーに分けられます。
現在、グローバルでの電動車の市場規模は、約5,000万台。現時点では、その大半を中国のEMとEBが占めていますが、その他の国でも徐々に市場は拡大しつつあります。例えばインドでは、価格や利便性が手ごろなEMとともに、政府のカーボンニュートラル推進策によってEVが飛躍的に増加。こうして広がる市場に対し、Hondaは幅広いニーズに応える電動車を投入していきます。
一方、ICE進化への取り組みについては、燃費改善にとどまらず、カーボンニュートラル燃料に対応したモデルにも取り組んでいます。
ガソリンにエタノールなどを混合した「フレックスフューエル」対応モデルを、すでに投入しているブラジルに加え、二輪車の主要市場の一つであるインドにおいても、2023年以降に発売していきます。
コミューターからFUNまで~電動車普及に向けたモデル投入戦略~
では、どんな電動車が、いつごろ登場するのでしょうか?Hondaは、コミューターとFUNモデルを合わせて、2025年までに合計10以上の新たな電動モデルを投入する計画です。
EV普及のためには、航続距離や充電時間、価格が課題です。その解決手法の一つが、バッテリー交換システムの共通利用化。特に小口配送などのビジネスユースは、走行範囲が限定され、集配センターなどにバッテリー交換の設備を設置できることから、このシステムとの親和性が高いと考えています。そこで商用利用をターゲットに「Honda e:ビジネスバイク」シリーズを投入。日本の街中で見かけた方もいるでしょうか?実は、これらのモデルは既に日本郵便で活用されており、さらにベトナムの郵便配達でも展開され始めています。
世界各地で、企業の環境意識は一層の高まりを見せているので、こうしたビジネスEVを海外でも展開。日本、ベトナムにとどまらず、タイランドポストとの共同実証も開始しているほか、この9月にはタイで「Benly e:」の生産・販売を開始します。
一方、個人のお客様向けには、市場ニーズに合うように付加価値を持たせたコミューターEVを2モデル、2024~2025年に、アジア・欧州・日本で投入する予定です。さらに、将来に向けては、市場環境や電動バイクの用途、技術進化なども十分予想されるので、交換式バッテリー以外の選択肢も視野に入れて、さらなる検討を進めていきます。
続いて、EM/EBカテゴリーは、最大市場の中国にスピーディーな現地開発体制を築けているというのが、Hondaの強み。これを活かし、現地合弁企業のブランドで複数のモデルを展開していきます。さらに、中国のみにとどまらず、今後はグローバルで需要が拡大していくことを踏まえ、よりコンパクトで求めやすい電動車をアジア・欧州・日本へ投入。今年から2024年までに、EMとEBで計5モデルを展開する予定です。
そして、コミューター領域のみならず、「FUN領域」と呼ぶ、中・大型スポーツ系バイクも積極的に電動化を進めていきます。
現在、FUN EVのプラットフォーム開発が進行中。このプラットフォームを用いた大型FUN EVを2024~25年に日本・米国・欧州で計3モデル投入予定です。さらには、こうした操る喜びを次世代につなげるキッズ向けモデルも投入します。
このような電動モデルの展開を実現するためには、バッテリーや充電インフラについても取り組んでいかなければなりません。
電動化においてカギになるは、バッテリー。Honda全体でのリソースを積極的に活用していきます。現在クルマ向けに開発中の全固体電池は、有効な選択肢の一つ。二輪車への導入も目指していきます。
充電インフラについては、すでに世界各地で取り組みをスタートさせています。モバイルパワーパック(MPP)の活用やバッテリーシェアリング事業によって拡充を目指しています。
インドネシアでは、MPPとその搭載車を活用したバッテリーシェアリングを普及するための合弁会社を設立し、現在はバリ島にて小規模バッテリーシェアリングサービス事業を展開。インドでも、今年中にリキシャ(三輪タクシー)向けバッテリーシェアリングサービス事業を開始する予定に加え、パートナー企業とともに交換式バッテリーの規格共通化を推進しています。アジア各国で同様の取り組みを計画中です。
日本においても、2020年4月にENEOSと国内二輪4メーカー(Honda、KAWASAKI、SUZUKI、YAMAHA)で株式会社Gachacoを設立しており、今年の秋には、二輪車向けバッテリーシェアリングサービス事業の開始を予定しています。
さらに、こうしたバッテリーや交換システムの仕様を共通化すべく、日本と欧州でバッテリーコンソーシアムにも参加。日本では、交換式バッテリーとシステムの相互利用に合意したほか、インドでも現地企業とともに規格共通化を推進するなど、各地域で積極的なアプローチを図っています。
この二輪電動化への歩みでは、バイクの未来を切り開くため、電動車ならではのソフトウェアとの親和性の高さを生かし、新価値を持つ商品を提供していきます。
例えば、EVの航続可能距離を踏まえた最適ルートや、充電スポットの案内、安全運転コーチングやアフターサービスの支援など、コネクテッドにより移動時間の質を持続的に豊かにするUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供すべく、2024年発売のモデルから順次適用していきます。
そして、“Hondaらしさ”も忘れてはいません。従来のICE搭載車と同様に、電動車でも“操る喜び”をお届けしますので、楽しみにお待ちください!
リリース提供元:本田技研工業株式会社