国内最大級の弁護士検索サイト「弁護士ドットコム」が、一般会員1380名を対象に電動キックボードに関する実態・意識調査を実施した。
調査結果によると、電動キックボードを知っていると回答した人が9割を越えた反面、実際に乗ったことがある人は約11.1%に留まり、また電動キックボードに乗ったことがある人でも、23.5%の回答者が飲酒運転が禁止されていると知らなかった。
電動キックボードの利用状況について調査
~利用者の25%が「飲酒運転禁止と知らなかった」~
都市部を中心に利用が進んでいる「電動キックボード」。小回りが利く乗り物として人気が高まっている。一方、飲酒運転の横行など交通ルールが守られていないという問題も指摘されており、飲酒の機会が増える夏を迎えて警察の取り締まりも強化されている。最高速度が時速20キロ以下の電動キックボードについては、16歳以上は運転免許がなくても乗れるとする改正道路交通法が成立し、2年以内に施行される予定である。こうした中で、弁護士ドットコム株式会社は、弁護士ドットコムの一般会員1,380名を対象に、電動キックボードに関する実態・意識調査を行った。
調査概要
調査方法:弁護士ドットコム一般会員を対象にアンケートを実施
調査対象:有効回答数 1,380名(1都3県の在住者が49.3%)
調査期間:2022年6月15日〜6月21日
※対象は、シェア型電動キックボード(政府の特例措置により、道路交通法上の小型特殊自動車にあたるもの)と個人所有の電動キックボード(道交法並びに道路運送車両法上の原動機付自転車にあたるもの)どちらも含む
【調査結果サマリー】
①電動キックボード、「知っている」9割、「乗ったことある」1割
電動キックボードを知っているか尋ねたところ、回答者の9割以上が「知っている」と、回答した。一方、乗ったことがあるか尋ねたところ、答えたのは11%と全体の1割程度だった。
②「危険を感じた瞬間ある」利用者の6割、利用者以外からも懸念の声「車を運転する側からみると怖い」
電動キックボードに乗ったことがある人に、電動キックボードを運転していて危険を感じた瞬間があるか尋ねたところ、6割が「危険を感じた瞬間がある」と回答した。
具体的にどのような場面で危険を感じたか尋ねたところ、「歩行者や自転車、車などと接触しそうになった」「思った以上にスピードが出るものの、段差や隙間の影響を強く受けるため転倒しそうになる」、「急ブレーキでバランスが保てなくなる」といった意見が複数あった。
・「地面にある小さな石など障害物とぶつかってもボードに大きな振動が伝わり、ボードのコントロールに影響する。場合によっては、ボードから降りてバランスを取り直さなければならない」(千葉県在住)
・「基本車道を走りますが、キックボードの車輪が樹脂のため、道がガタガタだと転倒しそうになる。また、私が所有するキックボードは、操作性が甘く急停止が出来ないので、突然飛び出してこられると対処できない」(大阪府在住)
・「スピードが出すぎてしまうので、安定性に不安があった。また、ブレーキのかけ方も難しく、人とぶつからないように十分注意する必要がある」(東京都在住)
電動キックボードに乗ったことがない人の自由回答では、「車を運転する側からみると本当に怖い。自転車ですらルールを無視した乗り方をする人は多く、事故が増えると思う」という車のドライバーからの懸念する声があったほか、「自転車と同じで、乗る人のマナー次第」と自転車とさほど変わらないという意見があった。
③未利用者の3割強「今後利用してみたい」
電動キックボードを利用したことがないと回答した方のうち、今後電動キックボードを利用したいと思うかを聞いたところ、「いいえ」が49.6%と半数近くにのぼり、「はい」が34.3%だった。
「利用したい」と回答した理由を尋ねたところ(複数回答可)、最も多かったのは「小回りが効いて便利そう」(68.9%)、次いで「乗っていて気持ちが良さそう」(55.3%)、「疲れなさそう」(33.5%)、「新しいツールが好きだから」(32.1%)と続いた。
「利用したくない」と回答した理由を尋ねたところ(複数回答可)、最も多かったのは「危ないから」(71.4%)、次いで「そのほかの乗り物で事足りるから」(63.8%)、「使い方やルールが分からないから」(20.7%)、「恥ずかしいから」(14.8%)と続いた。
④回答者の約4割「飲酒運転禁止知らなかった」
電動キックボードでの飲酒運転が禁止されていることを知っているか尋ねたところ、回答者の4割弱が「知らない」と回答した。電動キックボードの利用者に限って同じ質問をしても、23.5%が「知らない」と回答しており、交通ルールの周知徹底が課題となっている。
手軽な乗り物として注目される一方、飲酒して終電を逃したあと、タクシーに代わる移動手段として、電動キックボードを利用して帰宅するケースが問題視されている。シェア型電動キックボードも個人所有の電動キックボードも、飲酒運転は道路交通法違反にあたる。
電動キックボードでの飲酒運転が禁止されていることを知っているか尋ねたところ、回答者の4割弱が「知らない」と回答した。電動キックボードの利用者に限って同じ質問をしても、23.5%が「知らない」と回答しており、交通ルールの周知徹底が課題となっている。
交通事故事件にくわしい平岡将人弁護士のコメント
道路交通法の改正によって、最高時速が20キロメートル以下の電動キックボードを「特定小型原付自転車」との新たな区分に分類し、16歳以上であれば免許なく乗車ができ、時速6キロメートル以下なら歩道の通行も可能となります。人力や動物の力によって動くものではないため、軽車両には分類できなかったものの、自転車に近い気軽な乗り物として許可していくということでしょう。
今回のアンケートの結果を見ると、「飲酒運転が禁止」を知らない人が多いことに驚きました。飲酒をしたら、自動車はもとより、自転車も電動キックボードもダメです。また、電動キックボードに乗ったことがあり「危険を感じた瞬間がある」と回答した人の「急停止が難しい」というコメントは気になります。そのような性質をもつ乗り物であるならば、見通しの悪い交差路などの前では速度を落とすなど、急停止をなるべくしない運転スキルが求められることになるでしょう。
日々、交通事故の事件を手掛ける中で思うのは、利便性や技術革新のために、国家が新しい移動手段を許可するということは、新しい「危険」を許可するのと同じだということです。電動キックボードが街中を走れば、それに起因する事故は必ず起きます。ゼロにするのは難しいでしょう。そうであれば、必ず起きる事故に着目した制度設計(賠償確保、公道の安全を保護する諸制度等)をきちんとするのが国家の義務だと考えています。
平岡将人弁護士プロフィール
https://www.bengo4.com/tokyo/a_13102/l_128409/
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