トヨタ自動車株式会社は、日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社、F-WAVE株式会社と共同で開発した「太陽電池向け加飾フィルム」の実証展示をSHIBUYA109(東京都渋谷区)前で、2022年8月26日(金)まで行っている。
加飾フィルムは、半透明で幅広いカラーバリエーションを持ち、軽量な太陽電池に装着すれば、店舗や建物壁面、さらにはモビリティの外板など、景観を損なわずに発電が行える技術で、幅広い実用化が期待されている。SHIBUYA109前の展示では、実際に加飾フィルムを使って発電した電力で扇風機を動かしており、トヨタの取り組むサステナビリティ実験を間近で見学できる。
変身する太陽電池!?「トヨタのサステナビリティ実験 #発電中を広告中」 を、渋谷で8月24日(水)から実証展示
〜街に溶け込み、場所を選ばず発電できる未来へ〜
トヨタ自動車株式会社は、日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社とF-WAVE株式会社と共同で、太陽電池の表面をデザインできる太陽電池向け加飾フィルム(以下、加飾フィルム)を活用した、カラフルな太陽電池を、2021年3月に発表した※1。
この度、多くの方に加飾フィルムの技術を知って頂くべく、2022年8月24日(水)から26日(金)まで、SHIBUYA109店頭イベントスペースにて「トヨタのサステナビリティ実験#発電中を広告中」と題した展示を実施する。
カーボンニュートラル実現に向けた動きが加速する中、再生可能エネルギーのさらなる普及拡大を目指し、従来の黒色や紫色だけでなく、周囲の景観に合わせてデザインできる太陽電池のニーズが高まってきている。2018年に開発をスタートさせた太陽電池を覆う加飾フィルムは、2021年3月〜継続中の熊本県での実証実験により、発電量を大幅に損なうことなく、太陽電池をカラフルに彩れることが実証された。
今回、多くの方が行き交う渋谷で、「トヨタのサステナビリティ実験 #発電中を広告中」と題し、景観に溶け込みながら本当に発電できることを実証実験。発電した電気で扇風機を動かすことで、発電の見える化を図る。加飾フィルムの技術を通して、SDGs貢献につながるトヨタの取り組みを知ってもらう目的で展示を行う。
この加飾フィルムは、幅広いカラーバリエーションを持つため、軽量な太陽電池に装着すれば、店舗や家屋壁面、モビリティの外板などへの搭載が期待される。また、シート状の太陽電池に装着すれば、将来、衣類や鞄、アウトドアグッズに搭載し、歩きながら発電することも期待できる。
発電量については、青色の加飾フィルムを搭載した太陽電池で、1m2当たり63W程度の発電量を測定した。
※熊本県に設置した10m×10mサイズの加飾太陽電池の場合は、6.3kW程度の発電量を試算
幸せの量産をミッションに掲げ、自動車をつくる会社からモビリティカンパニーへの変革を進めるトヨタ。様々な領域でSDGsへの取り組みを広げている。
トヨタのサステナビリティ実験WEBサイト(8月24日公開):https://toyota.jp/info/sdgs/?padid=from_release_qr_solar
トヨタSDGsへの取り組みWEBサイト:https://global.toyota/jp/sustainability/sdgs/
F-WAVE株式会社:https://www.fwave.co.jp/
日本ペイントホールディングス:https://www.nipponpaint-holdings.com/news_release/2021033001/
※1:T.Masuda他IEEEJournalofPhotovoltaics8(5),1326-1330,2018
T.Masuda他Coatings8(8),282,2018
加飾フィルムの概要
1-1.開発背景
再生可能エネルギーのひとつ太陽電池の普及が進むなか、その設置場所が建物の屋根上から壁面、モビリティなどへと広がりが見られてきている。そのため従来の黒色や紫色などの太陽電池に加えて、周囲の景観に合った高意匠の太陽電池のニーズが高まっている。通常、太陽電池をフィルムで覆うと太陽光が透過せず発電しなくなる。今回トヨタとNPACが開発した加飾フィルムは太陽光の大部分が透過できるため、太陽電池の発電量を大幅に損なうことなく、ピンク、ブルー、グリーンなどカラフルな色で太陽電池を加飾できるという特長がある。
1-2.発色方法について
人が物体の色を知覚するのは、光源からの光が物体にあたり、その物体が反射した光が網膜上の視細胞を刺激することによって「色(反射物体色)」として認識するためである。今回トヨタとNPAC、F-WAVEが開発した加飾フィルムに含まれる顔料は特定の波長の太陽光を反射することで人に「色」を認識させつつ、残りの太陽光は透過することができる。
従ってこの加飾フィルムを太陽電池に装着すると、太陽電池の発電を確保しつつ、太陽電池を加飾することが可能である。
具体的には、加飾フィルムに使用している顔料は、特定の波長を反射して発色する半透明の自動車塗装向け顔料を利用している。この顔料は鱗(うろこ)のような形状のため、色ムラなく均一な発色を実現するには、顔料が同一方向を向くよう配列させ、塗膜の厚みを高精度に均一(数マイクロメートル)にコントロールする必要がある。そこで、自動車外装を加飾ラッピングする樹脂フィルムの製造技術を応用し、透明樹脂の中に顔料を浮遊させ、顔料が同一方向に配列されるよう透明樹脂をシャープな刃で一方向に伸ばすことで、色ムラなく均一に発色する加飾フィルムを実現した。
加飾フィルムの色は、使用する顔料の選定によって幅広く変化させることが可能で、印刷技術と融合することで木目やレンガ調、迷彩柄など意匠を表現することも可能である。
1-3.発電量への影響について
今回開発した加飾フィルムは太陽光を透過するため、太陽電池に装着しても発電できるというメリットがある。ただ発色のため加飾フィルムの表面でわずかに光が反射するため、約10%ほどの発電量低下が発生する。例えば、加飾フィルムを装着した太陽電池は、加飾フィルム無しの場合と比べて、木目調(写真左)では約90%※2、緑色(写真右)では92%※2の発電量が確認されている。発電量の低下率は発色の濃さや色相によって異なる。
※2 複数の測定結果の平均的な値を示している。
1-4.加飾太陽電池の応用先
加飾フィルムは、幅広い色のバリエーションを持つため、周辺環境と調和した色や意匠性を再現することが可能である。例えば、軽量な太陽電池に加飾フィルムを装着すれば、店舗や家屋壁面やモビリティの外板などへの搭載が期待される。またシート状の太陽電池に装着すれば、いままで太陽電池を設置できなかった衣類や鞄、アウトドアグッズなどへの活用が期待される。
迷彩柄の加飾フィルム(左)を活用し、迷彩柄の太陽電池を製作。
屋外や非常時にスマートフォンに直結して充電でき、ポータブル電源を充電できるようなアウトドアグッズ(右)を試験的に製作。
リリース提供元:トヨタPR事務局