雪道をあまり走ることのない人にとって、スタッドレスタイヤをどうしようかと悩むことも多いはず。費用面を考えるとタイヤチェーンも候補に挙げられますが、着脱が難しいイメージを抱く人も少なくないかもしれません。
では、スタッドレスタイヤとタイヤチェーンにはそれぞれどのような特徴があるのでしょうか。
スタッドレスタイヤとチェーン、どっちがいい?
スタッドレスタイヤもチェーンも雪道に欠かせない装備ですが、じつは、それぞれ使用するシーンが異なります。
スタッドレスタイヤ
スタッドレスタイヤは乾いた舗装路のほか、雪道や凍った道路を快適に走行できるタイヤ装備のこと。
冬の気候にあわせて0度以下の低温でも固くならないゴムでできており、表面には溝が細かく刻まれています。これにより路面に応じて柔軟に変形してグリップ力を発揮できるため、とくに踏み固められた雪道の走行を得意とします。
またスタッドレスタイヤのいちばんのメリットは、その都度つけ外しする手間がない点です。ただ、駆動輪だけをスタッドレスタイヤにするとバランスが崩れるので、4本すべてに装着する必要があります。
また、溝の形状によりノーマルタイヤより排水性能が劣るので、雨が降ると滑りやすくなってしまうというデメリットもあります。雪道でなくても雨天時に運転する際は注意が必要です。
現在は、多くのメーカーからさまざまなタイプのスタッドレスタイヤが販売されています。購入する際は、ライフスタイルや住んでいる地域に合ったものを選ぶとよいでしょう。
たとえば、豪雪地帯や道路が凍りやすい地域であれば、雪上性能と氷上性能が高いもの。反対に、あまり雪が積もらない場合は経済性を重視してもよいかもしれません。
タイヤチェーン
一方タイヤチェーンは、タイヤの外側に取り付ける滑り止め装備です。とくにふわふわの柔らかい雪上や、アイスバーンのようなつるつるした道路を走行するときには欠かせません
チェーンを装着することでタイヤ表面に凹凸がつくられ、高いグリップ力を生み出すことができます。そのため、スタッドレスタイヤよりも確実にクルマを動かせる点がメリットです。さらに価格も比較的安価で、3000円程度から購入できるものがほとんど。
一方で、チェーンを装着しながら装着すると凹凸により「ガタンガタン」と音をたて、振動が起きるので乗り心地が悪くなります。また安全のため、チェーンを装着時は出せる速度が30km/hから50km/hに制限されてしまいます。
ちなみにタイヤチェーンは金属製や樹脂製、布製などさまざまなタイプが販売されています。最近は取り付けが簡単な樹脂もチェーンが多いようですが、比較的安価な金属製のものも人気なようです。
またノーマルタイヤに組み合わせるよりも、スタッドレスタイヤに取り付けたほうが効果が高くなり、安全に走行できます。
交通規制によってチェーン装着が必須になることも
雪の影響で立ち往生や事故が多発した区間では、すべてのクルマを対象に「チェーン規制」がしかれることがあります。この期間中は、スタッドレスタイヤを履いたクルマも、チェーンを付けていなければ通行できないので注意が必要です。
国交省によるチェーン規制は、チェーン規制の標識がある区間で、大雪特別警報や大雪に対する緊急発表があった場合に実施されます。
また、高速道路では、異例の降雪がある場合に「冬用タイヤ規制」や「チェーン規制」がしかれる場合も。
冬用タイヤ規制が実施されている間は、スタッドレスなどの冬用タイヤか、タイヤチェーンなどの滑り止めを装着したクルマなら通行できます。しかし、さらに路面が悪化しチェーン規制に移行すると、チェーンなくしては走行できなくなってしまいます。
そのため、こうした区間を走るのであれば、タイヤチェーンを用意しておくと安心です。
ではずっとチェーンを装着していればいいかというと、そうした行為は事故につながるためおすすめできません。
じつは、タイヤチェーンは、通常路面で使うと切れてしまう可能性が高まります。実際、走行中にチェーンが切れて車体やホイールを大きく傷つける人は少なくなく、切れたチェーンがブレーキホースに巻き付く恐れもゼロではありません。
さらにNEXCOも、長いトンネルなどの前後ではこまめにチェーンを着脱するよう推奨しています。「ちょっと走るだけだから、そのままでいいだろう」という意識は謹んだほうがよさそうです。
なお高速道路上では、雪が深くなる手前の地点や長いトンネルの前後、SA・PAにチェーン着脱所が設置されているので、必要なときに利用するとよいでしょう。
チェーンが必要になる場面は急に訪れるものです。しかし、経験のない人がうまく装着できることは稀なこと。チェーンを購入したら、何度か着脱を練習しておくと安心できます。
このように、冬場の足まわりの選択はケースバイケース。雪が降る地域の場合は、日頃はスタッドレスタイヤで走行し、突然の大雪やチェーン規制のときにタイヤチェーンを装着するなど、両方を併用すると便利です。
一方で、冬に何度か雪が降る程度なら、通常タイヤで過ごしながら、必要な時だけ樹脂製や布製チェーンを利用する方法も考えられます。