手や足を骨折してしまうと、日常生活が一気に不便になりますよね。普段何気なくできていたことが、突然「どうやってこれをするんだ?」と悩む瞬間に変わることも。家事や仕事はもちろん、通勤や通学、趣味なども制限されてしまい、想像以上に困る場面がたくさん出てくるものです。
ではここで素朴な疑問ですが、もしも足を骨折してしまってもクルマを運転してよいのでしょうか。
骨折した足で運転するのは、違反?
結論から言えば、「足を骨折した人が運転してはいけない」といった内容は法律に明記されていません。しかし、状況によっては交通違反になる可能性もあります。
これは、ドライバーには道路交通法第70条による安全運転義務、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」があるため。
つまり足を骨折した状態での運転が、安全を確保できるものかどうかが判断の分かれ目というわけです。
前述の道路交通法をわかりやすく噛み砕くと、ハンドルやブレーキなどを確実に操作し、状況を適切に判断して、人やほかのクルマなどを害さないよう運転しなくてはならないということ。
また安全運転義務に違反する場合、「操作不適」「前方不注意」「動静不注視」「安全不確認」「安全速度違反」「予測不適」「その他」の7つに分けられることになり、このうち骨折した足で運転する行為は「操作不適」にあたる可能性が高いです。
「操作不適」とはブレーキ操作とハンドル操作の不具合のことをさし、アクセルとブレーキの踏み間違いや、ハンドル操作ミス、片手運転などが挙げられます。
骨折の症状は人それぞれですが、いずれにしてもその足で確実にブレーキ操作できるかがポイントになってきます。確実に操作できるとは認め難い状態で運転し、もしも事故を起こすと違反に問われることになります。
もし安全運転義務違反が適用された場合、違反点数2点に加え普通自動車であれば反則金9000円が科されます。また、事故を起こした際に骨折した足での運転が明らかになれば、過失の割合が変わる可能性もゼロではありません。
そのため、足を骨折しいつもどおりに動かせないと感じたら、運転しないという選択肢を選ぶのがベストと言えるでしょう。
普段やりがちなこの行動も、安全運転義務違反になるかも!?
また、普段の運転でしがちな行為で、安全運転義務違反になる可能性はあります。
たとえば夏場は、履き替えるのがめんどうだからと、ハイヒールやサンダルで運転する人も少なくないでしょう。
道交法70条でも、クルマを運転する際にハイヒールやサンダルを履いてはいけないとは定めていません。しかし、続く71条にドライバーは各都道府県の交通規制に従うという規則があり、各地の条例では運転中の履きものを規定しているものも少なくありません。
禁止する履きものとしては下駄やサンダル、スリッパが多くみられ、また滋賀県ではハイヒールやスパイクシューズを挙げています。
これを踏まえると、脱げやすい、滑りやすい、ペダルを踏みにくいといった運転操作に支障がある可能性のある履きものが該当していることがわかります。
実際に過去には、ハイヒールのドライバーが、駐車の際に足元を滑らせてアクセルを踏み込み、人身事故を起こした例もありました。
また、飲食やメイクをしながら運転する”ながら運転”。これらの行為は、安全運転義務違反の「前方不注意」に該当する可能性があります。
ながら運転といえば、走行中のスマホ・カーナビの操作などを思い浮かべる人も少なくないかもしれません。しかし、前述のようなついやってしまう何気ない行為が思わぬ事故につながる危険性も、ゼロではありません。
運転中つい危ない運転をしていないか、いまいちど自身の行動を見直すのも大切です。
なお、自転車においては2024年5月に道路交通法が改正され、青切符の導入のほか、スマホしながら運転の罰則が強化されることになりました。時代とともに、安全運転義務に対する意識は高まっているようです。