時代の流れである脱炭素化に向け、世界中で今後さらに増加が見込まれる電動車(EV、PHEV、HV)。日本国内では純粋な電気自動車(BEV)の増加はまだこれからといった状況ではあるが、商用車ではホンダや三菱自動車などが新型車の発表を行っている。
そんな中で今回、日本自動車輸入組合(JAIA)主催の輸入車試乗会に参加することができた。欧米や中国、韓国のメーカーが出展したEVをピックアップして試乗チェックを実施。最新EVの実力がどのようなものなのかを紹介していこう。
日本の道に最適なピュアEV
ヒョンデ(HYUNDAI)KONA
2022年に日本に再上陸を果たしたヒョンデ(Hyundai)。現在はゼロエミッションのブランドとして日本市場で展開しており、BEVのIONIQ5(アイオニック5)がすでに発売されている。今回試乗したKONAは2023年に新たに導入されたニューモデルだ。
独創的でスタイリッシュなデザインが目を引く
エクステリアデザインは、シームレスホライゾンランプとダイナミックなサイドプロポーションを採用し、未来的で個性豊かなデザインを実現。空力性能を徹底的に追求し、Cd値は0.27を達成している。
開放的なインテリアは先進性と使いやすさを融合
インテリアでは開放的な水平基調のダッシュボードに加え、12.3インチクラスターとナビゲーションディスプレイが統合した12.3インチパノラマディスプレイを採用。先進性と使いやすさが融合したコクピットとなっている。ナビゲーションにはAR機能を搭載しており、ディスプレイに映るフロントカメラ映像に車線や矢印などのAR効果を表示し、行き先を分かりやすく案内させることが可能だ。
本革シートを採用。前席は電動調整式で、ヒーター&ベンチレーションも備える。
ノーマルモードでも胸のすく加速を体験できる
今回試乗したグレードは、「KONA Lounge」というグレード。一充電走行距離が541km~625kmの64.8kWh仕様72.6kWhのバッテリーを搭載。最高出力150kW(204PS) 、最大トルク255Nmを発揮する。ドライバーの好みや走行シーンに応じて、「ECO」「NORMAL」「SPORT」「SNOW」の4パターンのドライブモードセレクト(DMS)を採用しているが、試乗はNORMALモードとSPORTモードを試してみた。やはりSPORTモードの加速はかなりのもの。パワフルな車に乗り慣れてない人であればその加速力に驚くはずだ。ただNORMALモードでも十分な加速であった。
ハンドリングは比較的軽めのステアリングで軽快な走りを実現している。静粛性の高さは言うまでもなくであるが、モーター音や風切り音の対策などもしっかりされていた。
充電システムは、日本の急速充電システムの「CHAdeMO」に対応しており、90kW級の急速充電器なら、45分でバッテリー残量は10%から80%まで回復する。
<HYUNDAI KONA Lounge >
全長×全幅×全高:4,355mm×1,825mm×1,590mm
ホイールベース:2,660mm
車両重量:1,790kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rマルチリンク式
EM16型交流同期モーター
最高出力:150kW(204ps)/ 5800~9000rpm
最大トルク:255Nm/0-5,600rpm
リチウムイオン電池
総電圧:358V
総電力量:64.8kWh
WLTC交流電力量消費率:137Wh/km
一充電走行距離541km
車両価格:4,895,000円
独創的なスタイリングに、先進の電動パワートレインを組み合わせた
CITROEN E-C4 MAX
シトロエンの新しいCセグメントモデルとして導入された「C4」。「E-C4」はこのC4に電動パワートレインを搭載したモデルで、日本で販売されるシトロエン車としては初のBEVとなる。車体を上から見たときにバッテリーをH型に効率的に配置し、バランスの良い重量配分を実現するとともに、内燃エンジンモデルと変わらない室内空間を確保しているのが特徴だ。
クーペのような美しいボディラインを持つBEV
シトロエンの新しいスタイルを象徴するV字型に広がる斬新なLEDシグネチャーライトユニットを採用。エレガントでありながらSUVの力強さを感じさせる新しいフォルム。張りのある曲面で構咸された高めの車高のボディとクーペのようなルーフラインは、美しさと優れた空力特性を生み出している。
機能美にあふれるモダンインテリアのような佇まい
洗練されたインテリアには、新世代インフォテインメントインターフェイスの「My Citroen Drive Plus」を採用。10インチHDタッチスクリーンやワイヤレスのスマートフォン充電を備え、クラウドを介してリアルタイムに更新され、スマートフォンをコードで接続しなくてもミラースクリーンが表示される。
フロント、リヤともにアドバンストコンフォートシートを採用。シートの中心部には高密度フォームを、表面にはパッド構造を持つ15mmもの厚さの特別なフォームを採用。身体を柔らかく包み込む心地良さとともにホールド性を両立。まるでソファのようなシートは身体を優しくホールドしてくれる。クラス最大級のニースペースと合わせてゆったりとくつろげるスペースに仕上げられている。
シトロエンらしい、しなやかな乗り心地を実現
かつて“魔法の絨毯”と例えられるほど快適な乗り心地を実現したシトロエンのハイドロニューマチックサスペンション。そのテクノロジーを継承した最新システム「プログレッシブ・ハイドローリッククッション」がこのE-C4 MAXには搭載されている。このシステムは、路面変化や荷重移動による入力を吸収するショックアブソーバー内にセカンダリーダンパーを組み込むことで、従来のシステムでは吸収しきれなかったショックを抑制し、フラットライドを実現するという。
実際に試乗してみると街乗りレベルでは実にソフトでしなやかな乗り心地を実感。謳い文句は大げさではなかった。
E-C4は、モードセレクターによって走行モードが切り替えられる。走行モードは、エコ、ノーマル、スポーツの3種類だ。モードに応じて、エアコンやEVパワートレインの特性が変化するのだが、スポーツに切り替えると加速がすごくなるというよりか、レスポンスが鋭くなるようなイメージであった。
<CITROEN E-C4 MAX>
全長×全幅×全高:4,375mm×1,800mm×1,530mm
ホイールベース:2,665mm
車両重量:1,630kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式
最高出力:100kW(136ps)/ 5500rpm
最大トルク:260Nm/300-3,674rpm
リチウムイオン電池
総電力量:50kWh
WLTC交流電力量消費率:140Wh/km
一充電走行距離:405km
車両価格:5,548,500円
圧倒的な加速とキレのあるハンドリングを味わえる
BMW iX1 xDrive30 M Sport
BMW Xのフルモデルチェンジと同時に、BEVの「iX1」がラインナップされた。日本で買えるBMWの最も新しいBEVがiX1だ。導入されたiX1は「xDrive30」であり、前後軸にモーターを搭載する4WDモデルとなっている。前後モーターのアウトプットは同じで、システム総合での最高出力は272PSで最大トルクは494N・mを実現している。
SUVらしい存在感あるフォルムの中に新しさを盛り込んだエクステリア
エクステリアでは四角形のキドニーグリルをはじめ、シグネチャーを2回繰り返すツインサーキュラーを進化させたアダプティブLEDヘッドライト、立体的なLEDリアコンビネーションランプなどが特徴。SUVらしい存在感のあるフォルムとしている。
最新のBMWに共通する先進的な雰囲気のインテリア空間
ダッシュボードには最新のBMWに共通の2枚の大型スクリーンを並べたカーブドディスプレイを採用。シフトレバーを廃止し、センターアームレストに操作系を集約することで先進的でモダンな印象のインテリアとしている。
スポーツシートはオプションの「ハイラインパッケージ」に含まれており、ヴァーネスカレザーを採用。カラーはオイスターとブラックが選べる。後席の足元は十分な広さが確保されている。
独自のBOOST機能を使用すると10秒間だけアクセルレスポンスとパワー感がアップ!
今回試乗したiX1 xDrive30は、システム総合での最高出力は272PSで最大トルクは494N・mのスペックを持つ。トルクだけで言えば、自然吸気ガソリンエンジンの5000cc車に匹敵するほどのトルクを発生する。それゆえに加速が遅いはずがない。アクセルを踏み込んだ瞬間からシートに張り付くような怒涛の加速を味わえる。もちろん最新モデルだけに暴力的ではなく、あくまでもスムーズに加速していく。
ハンドリングは、車両重量が2030kgあるとは思えないほど軽快だ。BEVならではのバッテリーを室内の下に敷き詰めたことで重心が低く、さらに前後重量配分が最適化されていることで、動きが素直で正確に応答する質の高いハンドリングを実現しているのだろう。また試乗車はM Sportということで、アダプティブMサスペンションを標準装備としており、エンジン車の標準サスペンションよりも車高が20mm下がっている。これもシャープなハンドリングに貢献しているのだろう。
そしてBEVならではの装備として、「BOOST機能」が搭載されている。ステアリングホイール横に「BOOST」と書かれたパドルがあり、これを引くと10秒間だけ一時的にアクセルレスポンスとパワー感が高まるのだ。
なお、iX1 xDrive30は、66.5kWhのリチウムイオンバッテリを搭載し、WLTCモードでの最大の走行可能距離は同じセグメントでは最長の465kmを実現している。
<BMW iX1 xDrive30 M Sport>
全長×全幅×全高:4,500mm×1,835mm×1,620mm
ホイールベース:2,690mm
車両重量:2,030kg
サスペンション:Fストラット式/Rマルチリンク式
システム最高出力:272PS(200kW)/8000rpm
システム最大トルク:494N・m(50.4kgf・m)/0-4900rpm
リチウムイオン電池
総電圧:286.3V
総電力量:66.5kWh
WLTC交流電力量消費率:155Wh/km
一充電走行距離:465km
車両価格:7,180,000円
大容量バッテリー搭載で安全と使いやすさを追及した商用軽バン
ASFは、既存の海外車を日本仕様にカスタマイズしているのではなく、日本規格の車をゼロから作っている EVベンチャーだ。車をただ販売する会社ではなく、パートナー企業との提携により充実したトータルサポートの提供を行っている。そんなASFが佐川急便と共同で開発したEVは、ピュアな電気自動車であるBEVであり、商用に特化した軽商用バンとなっているのが特徴だ。
ASF2.0
ASF2.0はボディーサイズは全長×全幅×全高=3395×1475×1950mmと軽自動車枠に収まっている。最高出力41PS、最大トルク120N・mのモーターで後輪を駆動する。フロア下に積まれた駆動用リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの総電力量は30kWh。車重は1130kgで、WLTCモードの一充電走行距離は243kmとしている。デリバリー型の軽バンとして開発されたため、乗車定員は2名の設定のみ。荷室床面地上高は660mmとなっている。
商用に特化しているため、リヤシートは省かれたインテリア
軽商用バンとしては必要十分なパフォーマンスを発揮
実際に試乗してみると、軽の商用バンだと考えれば必要十分と思えるパフォーマンスだ。軽自動車サイズながら車両重量が1130kgもあるが、EVならではの低速トルクがあるので、荷物を積んでの走りも問題ないと思われる。走らせればそれなりにモーター音やタイヤノイズも聞こえてくるが、660ccの軽バンで同じくらいのスピードを出せばもっと賑やかだろう。
走行モードはDモードとEモードの2つのモードを設定。Dモードが通常モードで、Eモードはエコモード。このモードの違いを感じるのが回生ブレーキの強さだ。アクセルペダルを戻したときの減速感がEモードのほうが強いという印象であった。
なお、AFS2.0は基本的には企業向けにリースされるモデルで、一般販売は行われていない。だが個人がリースできないわけではなく、コスモマイカーリースを利用すれば乗ることが可能だ。
充実した安全装備
ASF2.0は予防安全装備が充実しているのも特徴だ。衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報をはじめ、前後の障害物警報機能なども標準装備。またDレンジに入れたままシートベルトを外してドアを開けると自動的にパーキングに入るという独自の機能も備えている。
<ASF2.0>
全長×全幅×全高:3.395mm×1,475mm×1,950mm
ホイールベース:2,430mm
車両重量:1,130kg
サスペンション:F マクファーソン式/R 3リンク式
最高出力:30kW(41ps)
最大トルク:120N・m
リチウムイオン電池
総電圧:309V
総電力量:30kWh
WLTC交流電力量消費率:140Wh/km
一充電走行距離:243km
車両価格:2,370,000円(リースのみ)