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チャレンジを支えるホンダの人材育成 HRSから次世代ドライバーを輩出

※記事内容は全て執筆時点の情報です。

本田技研工業株式会社は、これまで佐藤琢磨選手、角田裕毅選手らF1ドライバーをはじめ、数々のトップ選手を輩出してきたホンダレーシングスクール鈴鹿の育成手法に迫り、2023年のモータースポーツ体制を発表した。同スクールは、二輪部門の「Motoクラス」、四輪部門はレーシングカートを用いた「Kartクラス」、プロへの登竜門となる「Formulaクラス」で構成され、「Formulaクラス」では、4段階の選考を経てプロへ挑戦するドライバーが選抜される。
講師を務める中野氏、佐藤氏は、「世界で通用するには“貪欲さ”が必要」とし、世界で戦えるドライバー育成を一番の目標にしているという。夢を持つ生徒が憧れの舞台に近づけるよう、Hondaは厳しくも温かいサポートを続けていく。

目次

Honda Racing School Suzukaから次世代ドライバーを輩出
チャレンジを支えるHondaの人材育成

2022年12月12日、Hondaは2023年のモータースポーツ体制を発表。国内外のトップを争うレーサーが続々と登壇しました。この檜舞台を目指すべく、プロへの足掛かりとなるのが、Honda Racing School Suzuka(HRS、ホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿)です。1992年に開校したHRS(当時SRS)は、これまで佐藤琢磨選手、角田裕毅選手らF1ドライバーをはじめ、数々のトップ選手を輩出。世界に通用するライダー・ドライバーの、育成手法に迫りました。

Hondaのスカラシップ、その最終選考会へ潜入!

HRSは、二輪部門の「Motoクラス」、四輪部門はレーシングカートを用いた「Kartクラス」と、その上にプロへの登竜門となる「Formulaクラス」で構成されており、二輪部門は世界選手権や鈴鹿8耐での優勝経験を持つ岡田忠之さんがプリンシパル(校長)、四輪部門はF1からインディカーへキャリアを進め、2度のインディ500制覇という偉業を成し遂げた佐藤琢磨選手がプリンシパル、同じくF1やインディ、そしてル・マン24時間レースへの参戦経験を持つ中野信治さんがバイスプリンシパル(副校長)を務めています。

「Formulaクラス」では、4段階の選考を経て、プロへ挑戦するドライバーが選抜されます。このクラスに入校した生徒は、まず「アドバンスコース選考会STEP1」(30名前後)で学び、そこから選考を通過した20名前後が「アドバンスコース選考会STEP2」へ、さらに8名が「アドバンスコース」へとステップアップ。最終的に4名前後が「スカラシップ選考会」へと1年をかけて進みます。

STEP1にはカートやフォーミュラカーの経験者だけでなく、未経験の入校者も多数。さまざまな環境にいる生徒たちに対して広く門戸が開かれているのも特徴で、そこから、成績上位者が上のクラスに進むことになります。そうして勝ち残った精鋭がスカラシップの獲得を争い、手にしたのが森山冬星選手でした。

2022年度のスカラシップを獲得した森山冬星選手。Super FJ 鈴鹿シリーズのチャンピオンで芦屋大学2年。
「将来的にはF1に乗りたい。バトルには自信があるので、注目と期待をしてほしい」

スカラシップ選考会は「Formulaクラス」のアドバンスコースから選ばれた精鋭4人が参加。最終選考は2日間のプログラムで、プロとして活躍する講師陣や、HRSの卒業生ら先輩ドライバーと練習走行を重ねながら、2日目に2レースを実施し、その内容を総合的に評価してスカラシップ獲得者が決定します。

ここに流れる空気は、“スクール”というよりはレースの現場そのもの。佐藤、中野両氏の意向もあり、走行内容は、講師陣に相談できるものの、基本的には各ドライバーに一任。繰り返される走行プログラムを通じて、どれだけ自分の走りを高められるかが重要です。

あいにくの雨模様でコース上には水たまりができるほどの悪コンディションとなった初日でも、走行するかしないかは生徒の判断に委ねられていました。選考会の最後に行われた講評で、佐藤プリンシパルからは「雨の中、最後まで走っていたのは卒業生の小出峻選手だけでした。なぜ、みんなは走らなかったのか。マシンを壊したくない、タイヤを使いたくないという考えはわかるが、そこで走れる以上、走るべきだし、すべてのチャンスをつかみにいこうとする姿勢が大事だ」という熱い指導がありました。

世界三大レースの一つ「インディ500」を制したトップドライバーの佐藤琢磨選手から、
直接アドバイスを受けられる

さらに、走行データの活用についても「S字コーナーや他のコーナーでも走りをチェックしてはいるが、一周すべてをカバーできているわけではない。定点観察からのアドバイスはするが、データロガーを活用して講師やトップタイムの生徒との比較を積極的にチェックするように話したものの、『一緒にデータを見てください。ここはどうしたらいいですか?』とアドバイスを求められることは今回なかった。今後、プロのドライバーとしてやっていく気があるなら、もったいない」と、実戦で結果を出すための厳しいアドバイスが飛びました。

このように、世界の第一線で戦うトップ選手の視点で、将来プロとしてやっていくための考え方が身につく場所が、HRSなのです。

世界で通用するには“貪欲さ”が必要

選考会の合間を縫って、佐藤琢磨プリンシパル、中野信治バイスプリンシパルに、HRSの意義や目指す場所、若手ドライバーに求めることを聞きました。

中野信治さん。1971年4月1日生まれ、大阪府出身。1997年F1デビュー。
現在もスーパー耐久シリーズなどに参戦しつつ、HRSのバイスプリンシパルを務める

中野 スクールでは、プリンシパルの琢磨を含め、我々講師陣がディスカッションをしながら指導の方向性を決めています。琢磨は現役で米国にいる時期が長いので、その間、我々は日々起きるいろいろな変化に対して、最前線で対応しています。その出来事、生徒たちの日々の成長や成績を私が預かってレポートを出し、琢磨と相談しながらベストな方向性を見出せるように役割を決めて進めています。

佐藤琢磨さん。1977年1月28日生まれ、東京都出身。1997年に鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラ(当時)でスカラシップを獲得。2001年イギリスF3チャンピオンに輝き、翌2002年F1デビュー。2017年に日本人初となるインディ500優勝、2020年に2度目の優勝。2019年よりHRS(当時SRS)プリンシパルに就任

佐藤 細かな指導内容に関しては現場の講師に任せています。私は、日々のレポートを受けて、大事な決定事項や方向性についてなど、必要に応じて決断する立場です。生徒の成長ぶりをレポートで把握して、自分のシーズンが終わる秋、冬になると、こうして鈴鹿で生徒の走りを見て、スカラシップに向けた話し合いに参加しています。

プリンシパルとして、さまざまな役割を持つ佐藤さんですが、生徒たちの成長を見守り、スカラシップの選考をするだけではなく、卒業後の進路についても大きく関与しています。

佐藤 優秀な生徒の進路や今後を考えて、Hondaに対してプレゼンテーションするのも自分の役目。そのきっかけになったのが、2019年にスカラシップを獲得した岩佐歩夢選手です。彼は卒業後すぐにフランスのF4に参戦しましたが、それまではスカラシップを獲得後、HFDP(Honda Formula Dream Project)のサポートを受けて国内F4へ参戦するのが既定路線でした。あの年は岩佐選手が技量、パフォーマンス、センスとどの面でも光っていて、本人の意向も聞きつつ、早くからヨーロッパで戦わせることができないかと、スクールを代表してHondaと交渉したんです。彼のキャリアのロードマップを提示して交渉に臨み、中野さん、加藤寛規さん、そして私がスクール生だった頃からお世話になっている佐藤浩二さんら、信頼できる講師陣から岩佐選手の成長をヒアリングできたことでよい提案ができた。その結果、FFSA(フランス自動車競技連盟)との提携が始まったタイミングでもあり、フランス行きを承諾していただきました。スクールのチームワークで、生徒のサポートができた一例ですね。

※岩佐歩夢(いわさ あゆむ)選手…HRS(当時SRS)のスカラシップ獲得翌年にフランスF4選手権へ参戦してチャンピオンに輝くと、そこからFIA F3選手権、F2選手権へとステップアップ。2022年はF2参戦初年度で2勝を挙げてランキング5位に入り、F1参戦に必要なスーパーライセンス獲得まであと一歩に迫っている。

中野 私も琢磨も世界で戦ったこと、その中でさまざまな人たちと仕事をした経験をもとに、世界で戦えるドライバーを育てることを一番の目標に掲げながらやっています。国内の大会ではなく、世界を向いて、そこで戦うためになにが必要かを指導するようにしていますね。

佐藤 私が生徒に求めるものの一つは貪欲さ。スクールとしても世界に通用するドライバーを育てるために、与える、教えるではなく、選手自ら気づき、講師に教えを乞う環境にしたい。一緒に走るドライバーと学んでほしいし、空き時間には講師に対してどうアプローチするのかも見ています。こちらから話しかけてきっかけを作る子もいますが、積極的に話しかけてくる生徒の熱意や行動力を評価し、我々はそれに対していかにサポート体制をつくれるか。生徒の積極的な姿勢とスクールの環境、それによって生まれる相乗成果も狙っています。

2人の眼差しは常に真剣。自分たちに続くドライバーを育てるために、情熱を尽くしている

スカラシップ獲得で人生が変わる

この日、講師として参加したプロドライバーの中に、“日本一速いドライバー”野尻智紀選手の姿がありました。HRS卒業生で、全日本スーパーフォーミュラ選手権を2021年、2022年と連覇した野尻選手は、生徒たちにインパクトを残すことも講師の大きな役割だと言います。

野尻 僕がここにいる役割は、「日本国内ですらこんなにも壁が高い」という事実をきちんと分からせることだと思っています。それを彼らがどう成長につなげていくかは、本人にかかっています。最終選考のレースはそういった走りを意識しました。選考会としてではなく、国内トップカテゴリーであるスーパーフォーミュラやSUPER GTと同等の集中力と真剣度合いで臨み、自分の力を引き出していい走りができたと思います。

その言葉通り、選考会レースの予選となる計測走行ではポールポジションを獲得し、第1ヒートでは圧倒的な速さを見せつけます。第2ヒートでは好スタートを切った小出選手にトップを譲ったものの、ラップタイムで生徒に格の違いを見せつけました。

野尻智紀(のじり ともき)選手…2008年、HRS(当時SRS)を首席で卒業してスカラシップを獲得。その後、フォーミュラチャレンジ・ジャパン、全日本F3選手権とカテゴリーを上げ、2014年よりスーパーフォーミュラ、2015年よりSUPER GT GT500クラスと、国内トップカテゴリーに参戦。2021年、2022年とスーパーフォーミュラを連覇し、SUPER GTでは通算8勝を挙げるなど、日本のトップドライバーとして活躍している。

野尻 僕も、生徒時代は数々の先輩の走りに衝撃を受けた一人。当時は誰一人手の届くところにおらず、壁の高さに打ちひしがれる瞬間もありましたが、それもいい経験。今の時点で差があるのは仕方ありません。その差をどう埋めるかにその子の人生があります。僕も生徒のとき、プロとの差を実感して「無理なのかも…」と弱気になったことはありますが、今こうやって講師としてスクールで指導し、日本では2連覇するところまで来られました。今、遅いことで悲観することはなにもないし、みんなに可能性があることを走りで伝えられたと思います。

佐藤 生徒には、どれだけの作業や準備をして、どれだけの苦悩があるのかというところを見てもらいたいし、その問題を解決していく過程や姿勢も感じてもらいたい。それは自分が現役だからこそ伝えられることで、現場の指導ではしっかりとした体制が整っているから、プリンシパルのオファーを受諾しました。現役でいることで、世界で戦うためにどうやって対応していくのか、いい部分もつらい部分も見せられます。この後に続く生徒たちも、自分のこととして気持ちが入りやすいし「自分にもできるかもしれない」と思ってもらえれば、可能性が広がりますから。

中野 僕が長年やってきて生徒に気づいてほしいと思うのは、物事にはたくさんの人が関わっているということ。一つの目標のために、メカニックやエンジニア、いろいろな役割の人たちが、同じ目標に向かってクルマを作り上げいく。それがモータースポーツの魅力です。勝利を目指す過程が本当に面白い。それを感じられる人間が世界に飛び出す選手になると思います。

鈴鹿の難所、S字コーナーで候補生の走りを見守る2人

佐藤 スカラシップは絶対的。私もそれを獲得したかったからスクールに入りました。レースはダイナミックなエネルギーと複雑なコンディションの上で成り立つスポーツで、大きな活動資金も必要です。私は、19歳まで自転車競技をやっていて、20歳からレースの世界に入り、スカラシップがあったからこそ、ここまでやってこられました。だから、スカラシップの選定は責任重大です。ただし獲得できなかった生徒に対しても、将来的にどのような可能性があるのかを話し合い、最大限のサポートをしていきたいです。

中野 特に若い選手にとって、資金的なバックアップであるスカラシップは大きな意味を持ちます。これまでも才能はあっても資金面が理由でキャリアアップできなかった選手を多く見てきました。それが、スカラシップを獲得すると、ヨーロッパで戦えるチャンスも出てきます。選手個人でヨーロッパのレースに参戦するのは大変に難しいですし、そのチャンスがあるのは個人的にはうらやましい限り。これまでHondaがずっと世界で戦ってきたからこそ、そのチャンスがあるわけです。僕が生徒だったら200%本気で取りにいきますし、そのために死ぬ気でがんばりますよ。世界で戦うにはどれくらいの努力が必要か、現役ドライバーの講師が見せてくれるし、モチベーションになります。そういったチャンスを与えられる生徒の育成に関わらせてもらい、とても感謝しています。

選考会最後のレース。プロドライバーに交じって、生徒4名も果敢にチャレンジした

佐藤 あとは生徒本人のやる気と行動力。積極的に講師を利用して、アドバイスを求める姿勢、私が生徒に求めるその貪欲さはすなわち“本人の魅力”や“チーム内での求心力”になります。海外で戦うとき、言葉と文化の壁があって、周りにアピールしないとチャンスはつかめません。クルマが持っている力を引き出すためには、メカニックやエンジニアをはじめとした多くの人たちの作業が必要になるし、その人たちとのコミュニケーションは不可欠。その人たちがいないと自分も走れないこと、速く走るためには行動を起こす必要があることをこのスクールでは気づいてもらいたい。そしていずれ世界で戦うときに、現地のチームスタッフに「HRSの卒業生はさすがだな」と言ってもらえるようにしていきたいですね。

HRSの卒業生は、佐藤琢磨選手をはじめ、現役唯一の日本人F1ドライバー角田裕毅選手、そして野尻選手のように日本国内の最前線で活躍する選手が多数。そのいずれもが、卒業後の荒波にも負けずキャリアアップを果たしたプロフェッショナルたちです。

夢を持ってスクールの扉を叩いてきた生徒が、憧れの舞台に近づけるように。Hondaは厳しくも温かいサポートを続けていきます。

リリース提供元:本田技研工業株式会社

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