【brand pickup】
好調エンジンに欠かせないキャブレターのコンディション
エンジンの好調を保つには「良い圧縮」「良い火花」「良い混合気」の3要素がすべて揃う必要がある。
良い圧縮はエンジンが担う役割で、燃焼室の密閉性がちゃんと確保されていること。
良い火花は電気系の役割となる。
最後の「良い混合気」はキャブレターやインジェクションの役割で、キャブレター車であれば自らセッティングやオーバーホールを行うことで、好調を得ることができる。
インジェクションはプライベーターが分解や洗浄を行ったり、噴射量を調整することは基本的にできないが、キャブレターならばそのようなことも可能となるのだ。
作業工程を動画でチェック!
ヤマハのロングセラーTW200のキャブレターオーバーホール
今回は、始動性が悪く、アイドリングも安定しないというヤマハTW200のキャブレターのオーバーホールを行った。
キャブレターが不調に陥る原因は様々あるが、最も多いのが長期間乗らなかったことにより、ガソリンが腐ってジェットを詰まらせてしまうというものだ。
しかし、毎日乗っているバイクでも燃料タンク内の汚れなどがキャブレターに入り込んで、調子を崩すこともある。
また、過走行車の場合、ジェットニードルをはじめとするジェット類が摩耗しているケースもある。その場合、徐々に調子が悪くなってしまうので症状に気づきにくい。
TW200の場合、中古車なのでオーナーの手元に来た時点で完全な好調というわけではなかったようだが、そこからさらに調子が徐々に悪くなっているようだ。
オーバーホール時はジェット類も新品交換が理想的
通常、キャブレターオーバーホール時は、ジェット類もキャブレタークリーナーで洗浄後に再び組付けることになる。しかし、それでも調子が戻らなければ、なんらかの原因でジェットの穴が拡大してしまっていることも考えられる。
だからこそ、キャブレターオーバーホール時は新品のジェット類を組み付けるのが望ましいのである。
キャブレターオーバーホールに必要なパーツ類がセットになったキースターの燃調キット
キースターの燃調キットは、キャブレターのオーバーホールやセッティングに必要なガスケットやジェット類がワンパッケージになった商品だ。
キャブレターのジェットやガスケットなどをすべて純正部品で頼むと、かなり金額的に大きくなってくるし、旧車などでは純正廃盤となって手に入らないことも珍しくない。
燃調キットは旧車のラインナップも豊富だし、自社の国内工場にて製造されていることもあり、高い品質も魅力だ。
キャブレターのパーツにとって精度は命であり、その信頼性から熟練のサンデーメカニックやプロショップにも広く愛用されている。
今回のTW200のキャブレターオーバーホールに関しても、迷うこと無く燃調キットを使用することにした。
ここでは、燃調キットを使用したキャブレターオーバーホールの模様をご紹介したい。
TW200キャブレターのオーバーホール手順
キャブレターは細かな部品も多いので、机の上で落ち着いて作業を進める。
まずは、車体からキャブレターを取り外す。事前にフロートのドレンを緩めてフロートチャンバー内のガソリンを抜いておくと良い。
フロートチャンバーを開いて、フロートとフロートバルブを取り外す。フロートバルブを曲げてしまうとキャブレター油面が変わって、燃調が狂うので慎重に取り外す。
キャブレターのジェットは真鍮製で柔らかいので、キャブレター専用のドライバーを使って作業を進める。
左上メインジェット、右上ニードルジェットホルダー、左下スロージェット。右下パイロットジェットを取り外す。このようにキャブレターには様々なジェットが存在し、それぞれ異なった役割を果たしている。
つまり全てが健全な状態にないとキャブレターの調子は良くならないのだ。
エアカットバルブは、スロットルオフになった時の急激に燃調が薄くなる状態を緩和することで「パンパン」といったアフターファイヤを抑制する機構。
動きが悪くなると、アフターファイヤが酷くなるので、オーバーホール時はダイヤフラムの状態を確認しておく。今回は新品に交換できる。
キャブレターを分解できたらキャブクリーナーで洗浄を行う。
キャブレターのすべての通路にキャブレタークリーナーを吹き付ける。
その後、パーツクリーナーで洗って、最後にエアーを吹いて、すべての通路がしっかりきれいになっているか確認する。
単気筒エンジンのピストンバルブ式キャブレターは、ベーシックな構造だが、これだけのパーツで構成されている。慎重で繊細な作業が必要だ。
燃調キットを使ったキャブレターの組み立て
キャブレターを分解し、洗浄が終わったら組み立てを行う。
新品のジェットならば、摩耗や消耗が無いので、キャブレターボディ自体に消耗などがなければ新車当時に限りなく近いキャブレター性能を取り戻すことができるのだ。
メインジェット、ニードルジェットホルダー、スロージェット、パイロットジェットを組み付ける。ニードルジェットホルダーにはOリング、パイロットジェットはスプリングとOリングをセットで組付ける。
エアカットバルブのダイヤフラムも新品になるので、ゴムの弾力も申し分ない。しっかり機能してアフターファイヤを抑制してくれる。
フロートバルブ周りの部品もすべて新品に
フロートバルブとバルブシートの密着が悪いとオーバーフローしてガソリンが漏れるおそれがあるが、共に新品なので安心できる。
フロートは高さを計測し、規定範囲内にあるかどうかを確認する。専用のフロートレベルゲージを使用した。
ジェットニードルはストレート径の異なる4本が同梱されるが、純正と同じものを取り付けた。ストレート径を計測したが、純正と同じで寸分の狂いも無い。
これだけの部品が新品に置き換わった!
キースターの燃調キットを使用することで、キャブレター部品の大部分は新品になった。
オーバーホールしたキャブレターを車体に復元後、エンジンを始動してみると、キック一発始動でアイドリングも非常に安定。好結果を得ることができた。
このように、アナログ制御のキャブレターは、特別な設備がなくともオーバーホールが可能で、キースターの燃調キットを使用することで、新車時に極めて近いコンディションまで性能を回復させることができるのである。
まずは、自分の愛車用の燃調キットがラインナップされているかどうかキースターのホームページで確認してみよう。
Text/丸山淳大