仕事で何度も台湾に行ったことがあるが、日本に比べて道路を走るスクーターの台数は半端じゃない。そんな台湾において圧倒的なシェアを誇るのがキムコだ。
キムコはホンダと技術契約を結びスクーターを始めとした二輪製品を製造販売してきた。現在の販売チャネルは107国。ヨーロッパでは大変な人気を誇っている。
そんなキムコが最近日本で発売したのがKRV180 TCSだ。
日本でもPCX160やNMAX155など、125cc以上250cc以下の車両が人気を博しているが、180ccスクーターの実力やいかに。
KRV180 TCSの個性的すぎる装備
プチTMAX560と言っても過言ではないスイングアーム
日本で一番スポーティーで豪華装備を採用しているスクーター、TMAX560が装備しているのが独立したスイングアームだ。
一般的なスクーターは駆動系をスイングアームに見立てるユニットスイングを採用するが、TMAX560はスイングアーム方式を採用している。
※厳密にいえばDCTを採用しているX-ADVもスイングアームを採用している。
250ccはもちろんだが、400ccクラスのスクーターもユニットスイングを採用しているが、なんとKRV180 TCSはスイングアーム方式を採用している。走りに対する本気度が伺えるポイントだ。
流れるウインカー、シーケンシャルウインカー
日本のバイクに装備されているのを見たことがないシーケンシャルウインカー(流れるウインカー)が装備されているのも特徴。車では純正採用されている車種もあり、バイク用品メーカーからアフターパーツとして供給されている。
USBソケットも二連は珍しい
スマートフォンをナビ代わりに使うようになってから、バイクにUSB電源を追加するカスタムが流行ったが、現在では純正採用される車種も増えてきた。だが二連のUSB電源を備えた車両はあまり見かけない。
またUSBソケットのすぐ下には収納スペースがあるため、バイクの走行による振動対策は必要だが充電しながら走行できるのもありがたい。
シートダンパースプリング
シートのヒンジ部分にはシートダンパースプリングが採用されている。筆者はアフターパーツメーカー勤務時に販売したことがあり好評だったのを覚えている。
シートオープンするとバネの力で自動で跳ね上がり、力を加えなければシートが下がることがない仕掛けだ。
KRV180 TCSの足つき
筆者の身長は164cmの62kg。履いていたライディングブーツのソール厚は約1.8cmだ。
KRV180 TCSのシート高は795mmと数値としては高くはないが、シート幅が広いので股が開いてしまう。そのため昭和体系の筆者が座ると両足はつま先ツンツン、片足は踵がつかない状態だった。
だが先端に行くほど絞り込まれるシート形状なので前の方に座れば片足はべったりと着くようになる。車両重量は143kgなので不安はないだろう。
KRV180 TCSのシート下収納力
スクーターはシート下の容量も大事な魅力の一つだ。
シート下スペースは筆者愛用のフルフェイスヘルメット(Mサイズ)を横にしてギリギリ入る程度だ。
シート下収納スペースは広いとは言えないが、ステップがフラットでコンビニフックも装備されていることから日常的な買い物で使う分には困ることはないだろう。
更に容量が欲しい場合にはオプションのリアキャリアとリアボックスをお勧めしたい。
KRV180の燃費
最近の国産車には燃費計が装備されていることが多いが、台湾では需要がないのかKRV180 TCSには装備が見送られている。
そのため今回は満タン法で測定してみた。走行シチュエーションは神奈川県川崎市の自宅から三浦半島まで有料道路をメインに片道63.5km。往復127kmほどの道のりとなる。
アクセルオンで回転数が勢いよく跳ね上がるエンジンの特性から、燃費はあまり期待していなかったが結果は44.0km/Lとなった。
燃料タンク容量は7.2Lなので、計算上は316.8kmが連続航行距離となる。
今回は高速道路をメインに走行したので燃費が伸びたのかもしれないが、250km前後で給油タイミングになると思っておけば安心だろう。
KRV180 TCSの肝心な走行性能とは?
実際に街中での移動、高速道路、往復120キロ程度のツーリングでも使ってみたが走りは軽快の一言、アクセルを開けた瞬間からエンジンの回転が跳ね上がり力強く加速していく。
また原付二種ベースの150ccスクーターの場合、総じてサスペンションは柔らかめでダンパーが弱い傾向があるが、KRV180の足回りはクラスを超えた乗り心地を体験することができる。
前後タイヤサイズは日本では初期型の250ccビッグスクーター相当のサイズを採用しており、スイングアーム方式を採用していることもあり直進、旋回どちらも安定感は抜群だ。
高速道路の100キロ巡行も快適
150ccクラスのスクーターだと80km/hの巡行は快適にこなせても、100km/h巡行となると少々厳しいこともある。
KRV180は100km/hの巡行でも余裕があり公道での試乗のみのため最高速はわからないが、120km/hぐらいは出そうな勢いだ。
またサスペンションの動きが良いので、高速の継ぎ目部分など段差が大きい部分でもライダーに突き上げが伝わってくることがなく、不快な振動もないので長距離走行も快適だ。
ただ100km/hの巡行を維持しようとするとスロットルは多めに開けることになるので、スロットルアシストなどを使うと疲れを軽減できるだろう。
180ccスクーターの魅力
燃費計測のために訪れた三浦半島の秘境と呼ばれる場所に行ってみたが、入り口はちょっとしたダートになっている。
未舗装路で凹凸が激しく狭い道がしばらく続くが、KRV180はトラクションコントロール装備で車両も軽快なため臆せずに突っ込むことができた。
これが250ccスクーターとなると車格が一気に大きくなるので、どうしようか・・・と少し悩むところだ。
パワフルでありながらコンパクトで軽量なのもKRV180 TCSの魅力といえるだろう。
また現在国内メーカーの150ccクラス車両は軒並み納期が遅くなっていると聞いている。キムコの車両は比較的納期が早いという情報も入ってきているのでコミューター兼、週末の冒険に出かける車両を探しているという方はKRV180 TCSを検討してみてもいいのではないだろうか。
文/画像:相京雅行